虫歯予防に対するフッ素の効果的な使用法とは?
相談者:
M.Sさん (29歳: )
投稿日時:2007-01-09 15:49:14
田尾先生、渡辺先生、はじめまして。
いつも歯科相談室を拝見させて頂いています。
今回の質問で少し気になったことがあるので投稿しましたが、虫歯予防に対するフッ素の効果的な使用法はどういったものがよいとお考えでしょうか?
(田尾先生はフッ化物洗口、渡辺先生はイェテボリ法がお勧めのようですが)。
私は恥ずかしながらフッ素についてあまり勉強してきておらず、いまいちフッ素を応用した虫歯予防のイメージが湧きません。
ぜひお二人のご意見をお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。
それにしても、お二人ともとても良く勉強されているようで本当に尊敬します。
田尾先生は私より年下ですが、これまでも多くのことを参考にさせて頂いています。
渡辺先生は最近歯科相談を始められたようですが、非常に詳しく説明をされているのでとても参考になります。
私ももっと頑張らなければいけないと思っているのですが、時間もない、お金も無いでなかなか思うようには勉強できずにいます。
お忙しい中、質問に答えていくのは大変だと思いますが、私のような者のためにもこれからもぜひ歯科相談を続けていってくださいね。
いつも歯科相談室を拝見させて頂いています。
今回の質問で少し気になったことがあるので投稿しましたが、虫歯予防に対するフッ素の効果的な使用法はどういったものがよいとお考えでしょうか?
(田尾先生はフッ化物洗口、渡辺先生はイェテボリ法がお勧めのようですが)。
私は恥ずかしながらフッ素についてあまり勉強してきておらず、いまいちフッ素を応用した虫歯予防のイメージが湧きません。
ぜひお二人のご意見をお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。
それにしても、お二人ともとても良く勉強されているようで本当に尊敬します。
田尾先生は私より年下ですが、これまでも多くのことを参考にさせて頂いています。
渡辺先生は最近歯科相談を始められたようですが、非常に詳しく説明をされているのでとても参考になります。
私ももっと頑張らなければいけないと思っているのですが、時間もない、お金も無いでなかなか思うようには勉強できずにいます。
お忙しい中、質問に答えていくのは大変だと思いますが、私のような者のためにもこれからもぜひ歯科相談を続けていってくださいね。
回答1
回答日時:2007-01-09 15:49:55
いつも長文駄文になってしまって自己嫌悪している中、励ましのメッセージを有難うございます。先生が勉強をしていないというのは勿論謙遜だと思いますが。。
ここは一般の方もご覧になるので、ちょっとだけ専門的に、今回は遠慮なく長文でご説明して行きます。
まず、臨床で遭遇する事実として「フッ化物の応用をしてきた方」というのは、ひと目で分かるぐらい丈夫な歯になっています。
歯が丈夫になりすぎて、プラークコントロールがおざなりになり、将来歯周病で苦労してしまうんじゃないかと心配になるぐらいです。
私が遭遇するそういった患者さんたちは、幼少期に親の薦めでミラノール(フッ化物洗口)と、歯科医院でのフッ素塗布(高濃度フッ化物ジェルの塗布)をしてきた方の様です。
私たちは社会から歯科医療について任されているわけですから、きちんと過去の研究事実に基づいて、害が少なく、良さそうなことを患者さん個々に合わせて薦めていくことになります。
研究事実からいけば、虫歯予防にプラークコントロールはおそらく有益、フッ化物の応用は(エナメル質に起きる虫歯については)間違いなく有益、ということになるかと思います。フッ化物以外の、CHXやCPCでは副作用、効果、データの蓄積のどれをとっても比較になりませんし。
それともう少し詳しく言いますと、フッ化物は若年者にとっては現在のところ最高に有益、成人期以降については曖昧。といったところでしょうか。
ですが成人についてのデータが乏しいのは、もともとの虫歯の発生率が非常に低いこと(データを作るのに実験期間が非常に長くかかってしまうので)と、データを作るのに影響する要素が多すぎる(全身疾患、喫煙、飲酒、不良充填・補綴、幼少期のフッ化物への暴露などなど)のが影響しているのだと思います。
ですから、成人についても、フッ化物は悪くはないけど(副作用は成人についてはまず心配ないですからね)期待は出来ると考えるのが妥当だと思います。
成人にはデータがないんだからフッ化物は意味がないという意見もあるでしょうが、他に代わるものもない訳ですから、子供から大人まで、予防の大切さに気づいた時から一生適用して良いと考えます。
各種のフッ化物応用法の効果の比較については、Cochraneのレビューだけ知っておけば十分だと思います。(http://www.cochrane.org)
ただ、英語が相当堪能でないと結論にたどり着けませんので、英語の苦手な私が2003年のアップデート版(Topical fluoride (toothpastes, mouthrinses, gels orvarnishes) forpreventing dental caries in children and adolescents(Review)Marinho VCC, Higgins JPT, Logan S, Sheiham A Date of most recent substantive amendment: 20 August 2003)をもとにまとめたものを以下に記載します。
正確な内容はできればご自分で確認して下さい。
若年期の3年間でのウ蝕予防度(133の研究論文より)
【各種フッ化物応用 vs 偽薬・プラセボ(Placebo)について】
フッ素添加歯磨剤 vs Placebo
26%(95%CI 0.25-0.27%)
フッ素ジェル vs Placebo
23%(0.18-0.28)
フッ素バニッシュ vs Placebo
35%(0.24-0.46)
フッ素洗口 vs Placebo
27%(0.24-0.29)
【各種フッ化物応用 vs 何もしない場合(NT)について】
フッ素ジェル vs NT
47%(0.42-0.52)
フッ素バニッシュ vs NT
52%(42-63)
フッ素洗口 vs NT
33%(27-40)
Total 26%(23-29)
これらの結果について、先ほど説明しました年齢のこと以外にも解釈は色々できると思います。
ですが私が考えるに重要なことは、どの方法も有益である(もちろん重大な副作用については報告はありません)という点です。
ですから、誰でも出来ることは誰にでも薦めて、リスクの高い人にはちょっとめんどくさい方法も組み合わせて行くという姿勢で良いと思います。
具体的なブラッシング方法の指導や、食事指導などもここに含みます。
で、誰にでも出来ることと言えば、フッ素添加歯磨剤の使用が一番楽で、既に知らずに実践しているかと思います。
現在は歯磨剤のシェアの90%程度でしょうか。
それでも虫歯の出来てしまう方に対して、プラスアルファするとすれば田尾先生の言われる通り、洗口法だと思います。
ただ、いくらいいものと分かっても、ミラノールを探して買い続けて使い続けることが現実的かという問題があります。ですから、代案としてイエテボリテクニックを私は勧めます。
⇒参考:イエテボリ法(イェテボリテクニック)
歯に良いということは誰でも知ってるフッ素(歯磨剤などに配合されているフッ化物が、口の中で唾液や水に溶けた状態)ですが、これがコップの水や唾液で洗い流されると、効果が激減してしまうということが意外と知られていない気がします。
実はイエテボリテクニックもペーストの量などに少し現実的でないところがあるので、「多目にペーストを使用し、出来るだけ水で洗い流さないこと」と「歯磨き後、30分〜できれば2時間、飲食を避ける」という点を強調して説明するようにしています。
フッ素洗口は一般的に500ppm前後のフッ素濃度を使用することが多いと思いますが、追跡研究では100ppmでも十分な結果が得られたとのことです。
実際の濃度を計算してみたことはないですが、日本のフッ素添加歯磨剤のフッ素濃度はご存知の通り1000ppm弱ですから、これを何グラムか、唾液や多少の水で薄めて洗口してあとのうがいを避けるという方法は理屈に合っていると思います。何よりも新しく何かを購入する必要がありませんし。
歯磨き後、コップを使うとそれ以外の人より約20%ウ蝕が多かった(Chesters et al 1984,Shogren & Birkhed 1993, O’Mullane et al 1997)歯磨き後、泡をはき出さず、少量の水を加えて、マウスリンスの様に用いる方法を指導した結果、隣接面のカリエスが26%予防された(Shogren et al 1995)などの研究結果もイエテボリテクニックの有益性を裏付けています。
回数としては、これも様々根拠はあるのですが、歯磨きを寝る前に1回と、他に1回以上する様にカリオロジーの教科書には(推奨)として書かれています。でその時にはついでにイエテボリテクニック的なことをするようにと。
あと本家イエテボリ大学の先生が曰く、「ハイリスクの患者さんには一日5回以上のフッ化物応用を」と言っていますので、そういう方には毎日、イエテボリテクニック3回、ミラノール2回という組み合わせもいいかも知れませんね。
あとフッ素ジェル(歯科医院専用高濃度フッ化物ジェル)の使用は、日本ではメーカーの指定で、年に数回のみとなっていますが、70年代には、11〜14歳の子供500人に対して、5000ppmFのAPFまたはNaFを1〜2mgトレイで6分間を、なんと年間平均140回も行い、1.8年後には何もしなかったグループと比較して77%{95%CI:0.67〜0.87}の予防効果を叩き出したというちょっとスゴイ論文もあります。(Englander(1976))
たださすがに副作用として、enamel etching(歯の白濁)ぽいのが多少はあったようです。ですから個人的には、リスクが多少でもある方なら、検診で歯科医院に来たときぐらい、ついでにフッ素ジェルの使用も勧めていいと思っています。
こんな感じですが、最後までお疲れ様でした。お互いに、時間とお金は搾り出して勉強し、患者さんが安心できる、良い医療を目指していきましょう。
ここは一般の方もご覧になるので、ちょっとだけ専門的に、今回は遠慮なく長文でご説明して行きます。
まず、臨床で遭遇する事実として「フッ化物の応用をしてきた方」というのは、ひと目で分かるぐらい丈夫な歯になっています。
歯が丈夫になりすぎて、プラークコントロールがおざなりになり、将来歯周病で苦労してしまうんじゃないかと心配になるぐらいです。
私が遭遇するそういった患者さんたちは、幼少期に親の薦めでミラノール(フッ化物洗口)と、歯科医院でのフッ素塗布(高濃度フッ化物ジェルの塗布)をしてきた方の様です。
私たちは社会から歯科医療について任されているわけですから、きちんと過去の研究事実に基づいて、害が少なく、良さそうなことを患者さん個々に合わせて薦めていくことになります。
研究事実からいけば、虫歯予防にプラークコントロールはおそらく有益、フッ化物の応用は(エナメル質に起きる虫歯については)間違いなく有益、ということになるかと思います。フッ化物以外の、CHXやCPCでは副作用、効果、データの蓄積のどれをとっても比較になりませんし。
それともう少し詳しく言いますと、フッ化物は若年者にとっては現在のところ最高に有益、成人期以降については曖昧。といったところでしょうか。
ですが成人についてのデータが乏しいのは、もともとの虫歯の発生率が非常に低いこと(データを作るのに実験期間が非常に長くかかってしまうので)と、データを作るのに影響する要素が多すぎる(全身疾患、喫煙、飲酒、不良充填・補綴、幼少期のフッ化物への暴露などなど)のが影響しているのだと思います。
ですから、成人についても、フッ化物は悪くはないけど(副作用は成人についてはまず心配ないですからね)期待は出来ると考えるのが妥当だと思います。
成人にはデータがないんだからフッ化物は意味がないという意見もあるでしょうが、他に代わるものもない訳ですから、子供から大人まで、予防の大切さに気づいた時から一生適用して良いと考えます。
各種のフッ化物応用法の効果の比較については、Cochraneのレビューだけ知っておけば十分だと思います。(http://www.cochrane.org)
ただ、英語が相当堪能でないと結論にたどり着けませんので、英語の苦手な私が2003年のアップデート版(Topical fluoride (toothpastes, mouthrinses, gels orvarnishes) forpreventing dental caries in children and adolescents(Review)Marinho VCC, Higgins JPT, Logan S, Sheiham A Date of most recent substantive amendment: 20 August 2003)をもとにまとめたものを以下に記載します。
正確な内容はできればご自分で確認して下さい。
若年期の3年間でのウ蝕予防度(133の研究論文より)
【各種フッ化物応用 vs 偽薬・プラセボ(Placebo)について】
フッ素添加歯磨剤 vs Placebo
26%(95%CI 0.25-0.27%)
フッ素ジェル vs Placebo
23%(0.18-0.28)
フッ素バニッシュ vs Placebo
35%(0.24-0.46)
フッ素洗口 vs Placebo
27%(0.24-0.29)
【各種フッ化物応用 vs 何もしない場合(NT)について】
フッ素ジェル vs NT
47%(0.42-0.52)
フッ素バニッシュ vs NT
52%(42-63)
フッ素洗口 vs NT
33%(27-40)
Total 26%(23-29)
これらの結果について、先ほど説明しました年齢のこと以外にも解釈は色々できると思います。
ですが私が考えるに重要なことは、どの方法も有益である(もちろん重大な副作用については報告はありません)という点です。
ですから、誰でも出来ることは誰にでも薦めて、リスクの高い人にはちょっとめんどくさい方法も組み合わせて行くという姿勢で良いと思います。
具体的なブラッシング方法の指導や、食事指導などもここに含みます。
で、誰にでも出来ることと言えば、フッ素添加歯磨剤の使用が一番楽で、既に知らずに実践しているかと思います。
現在は歯磨剤のシェアの90%程度でしょうか。
それでも虫歯の出来てしまう方に対して、プラスアルファするとすれば田尾先生の言われる通り、洗口法だと思います。
ただ、いくらいいものと分かっても、ミラノールを探して買い続けて使い続けることが現実的かという問題があります。ですから、代案としてイエテボリテクニックを私は勧めます。
⇒参考:イエテボリ法(イェテボリテクニック)
歯に良いということは誰でも知ってるフッ素(歯磨剤などに配合されているフッ化物が、口の中で唾液や水に溶けた状態)ですが、これがコップの水や唾液で洗い流されると、効果が激減してしまうということが意外と知られていない気がします。
実はイエテボリテクニックもペーストの量などに少し現実的でないところがあるので、「多目にペーストを使用し、出来るだけ水で洗い流さないこと」と「歯磨き後、30分〜できれば2時間、飲食を避ける」という点を強調して説明するようにしています。
フッ素洗口は一般的に500ppm前後のフッ素濃度を使用することが多いと思いますが、追跡研究では100ppmでも十分な結果が得られたとのことです。
実際の濃度を計算してみたことはないですが、日本のフッ素添加歯磨剤のフッ素濃度はご存知の通り1000ppm弱ですから、これを何グラムか、唾液や多少の水で薄めて洗口してあとのうがいを避けるという方法は理屈に合っていると思います。何よりも新しく何かを購入する必要がありませんし。
歯磨き後、コップを使うとそれ以外の人より約20%ウ蝕が多かった(Chesters et al 1984,Shogren & Birkhed 1993, O’Mullane et al 1997)歯磨き後、泡をはき出さず、少量の水を加えて、マウスリンスの様に用いる方法を指導した結果、隣接面のカリエスが26%予防された(Shogren et al 1995)などの研究結果もイエテボリテクニックの有益性を裏付けています。
回数としては、これも様々根拠はあるのですが、歯磨きを寝る前に1回と、他に1回以上する様にカリオロジーの教科書には(推奨)として書かれています。でその時にはついでにイエテボリテクニック的なことをするようにと。
あと本家イエテボリ大学の先生が曰く、「ハイリスクの患者さんには一日5回以上のフッ化物応用を」と言っていますので、そういう方には毎日、イエテボリテクニック3回、ミラノール2回という組み合わせもいいかも知れませんね。
あとフッ素ジェル(歯科医院専用高濃度フッ化物ジェル)の使用は、日本ではメーカーの指定で、年に数回のみとなっていますが、70年代には、11〜14歳の子供500人に対して、5000ppmFのAPFまたはNaFを1〜2mgトレイで6分間を、なんと年間平均140回も行い、1.8年後には何もしなかったグループと比較して77%{95%CI:0.67〜0.87}の予防効果を叩き出したというちょっとスゴイ論文もあります。(Englander(1976))
たださすがに副作用として、enamel etching(歯の白濁)ぽいのが多少はあったようです。ですから個人的には、リスクが多少でもある方なら、検診で歯科医院に来たときぐらい、ついでにフッ素ジェルの使用も勧めていいと思っています。
こんな感じですが、最後までお疲れ様でした。お互いに、時間とお金は搾り出して勉強し、患者さんが安心できる、良い医療を目指していきましょう。
回答2
歯医者/歯科情報の歯チャンネル運営者の田尾です。
回答日時:2007-01-09 15:50:31
いつも見て頂いているということで、ありがとうございます。
私はまだまだ毎日が勉強ですが、このような励ましのお便りを頂き、さらにモチベーションが上がりました!
少しでも参考になれるように、これからも頑張っていきます!
さて、ご質問にあったフッ素の虫歯予防効果については、渡辺先生が非常に素晴らしい回答をされていますので、私はフッ素の使用法についての意見を述べたいと思います。
私のおすすめのフッ素(正確には「フッ化物」ですが・・・)応用法はフッ素洗口ですが、一応これには私なりの考えがありますので、そのポイントだけ挙げておきます。
【POINT1】 フッ素濃度の問題
フッ素で虫歯を効果的に予防するためには濃度よりも回数が重要だと言われていますが、実はある程度の濃度も必要だと考えられています。
⇒参考:Strong evidence that daily use of fluoride toothpaste prevents caries.
渡辺先生の回答にもあるように、イエテボリ法では「歯磨き粉をたっぷりと(約1.5g)使用すること」がポイントなのですが、これは上記の「ある程度の濃度」を確保するためです。
しかし実際には、日本の歯磨き粉のフッ素濃度はほとんどの製品が950ppmと海外の歯磨き粉よりも低く(スウェーデンでは1500ppm)、しかも中にはフッ素配合の歯磨き粉でも100ppm、300ppm程度のものもあります。
「歯磨き粉たっぷりと(約1.5g)使用する」というのは一応日本の950ppmの歯磨き粉を使用した場合の目安量ですが、使用する量がこれよりも少ないと虫歯予防の効果が低下する可能性がありますし、間違えて低濃度のフッ素配合歯磨き粉を購入してしまうという可能性もあります。
また、イエテボリ法では「10ccの水で口をゆすぎ、その後うがいはしない」というものポイントですが、水の量が多すぎたり、うがいをしたりしてもフッ素濃度が低下してしまいます。
イエテボリ法には上記のように様々な守らなければならないポイントがあるので、特にフッ素の効果が最大限期待できる子供が正確にイエテボリ法を行なうのは、難しいのではないかと思います。
その点、フッ素洗口は始めにフッ素洗口液をちゃんと作っておけば確実に一定濃度以上のフッ素濃度が確保されますので、テクニカルエラーが起こる確率が非常に低いというのが、私がフッ素洗口をお勧めする理由の1つです。
【POINT2】 回数の問題
フッ素で効果的に虫歯を予防するためには回数が最も重要なのですが、イエテボリ法は「歯磨き粉を吐き出した後、最低2時間は飲食を控える」というポイントがあるため、1日何回も行なうのが難しいのではないかと思います。
フッ素洗口の場合は一応、30分後には飲食OKということになっています。
(ただ、本当はもっと時間をおいたほうが良いのかも知れませんが・・・)
【POINT3】 費用対効果(POI)
フッ素配合歯磨き粉の値段はピンキリですが、大体100g500円程度のものが主流です。
イエテボリ法では1回1.5g程度の歯磨き粉を使う必要があるため、1日2回行なったとして、約1ヶ月で500円程度の費用がかかることになります。
これを1年で計算すると、約5000〜6000円程度です。
一方、フッ素洗口にかかる1年間の費用は約1000円です。
虫歯予防効果はイエテボリ法でもフッ素洗口でも十分な効果があることが証明されていますので、それなら安いほうが良いのではないかというのが私の考えです。
【POINT4】 お手軽さ
POINT1とちょっとかぶりますが、イエテボリ法は結構手間がかかるのに対し、フッ素洗口は洗口液を口に含んで1分間ゆすぐだけなので、お手軽です。(その前に歯磨きをする必要はありますが・・・)
【POINT5】 爽快感
イエテボリ法でもフッ素洗口でも、「吐き出したあとに水で口をゆすがない」という点は共通していますが、イエテボリ法では歯磨き粉が口の中に残ることになります。
これは、人によってはかなり不快に感じることがあると思います。
フッ素洗口でも洗口液が口の中に残りますが、フッ素洗口液の味や臭いはほとんど水と変わらないので、吐き出した後の不快感が少ないと思います。
【POINT6】 歯医者さんへの影響
フッ素は虫歯予防に大きな効果があるというエビデンスがあるにも関わらず、日本の歯医者さんでフッ素の利用を積極的に勧める人は多くありません。
この最大の理由は「お金にならないから」だと思います。(フッ素塗布はまだお金になるほうなので勧める歯医者さんも多いですが、フッ素洗口はぶっちゃけ全くお金にならないので、勧める歯医者さんはごく少数です・・・)
フッ素洗口液を手に入れるためには薬事法上の問題で、「歯科医院でフッ素洗口についての説明を受ける」ことが必要なのですが、患者さんがフッ素洗口を求めるようになれば、歯医者さん側も対応せざるを得なくなってくると思います。
患者さんにフッ素洗口について知ってもらい、歯医者さんに要求するようになってもらうことで、日本の歯医者さんのフッ素に対する認識を変えてしまおうというのが、当サイトの真の狙いでもあります。
【結論】
私自身イエテボリ法もフッ素洗口も実際にやっていますが、上記のような理由で今は専らフッ素洗口を勧めています。
ただ、フッ素洗口には渡辺先生も書かれている通り、洗口剤の入手がやや困難だという問題もあります。(本当は歯医者さんであれば誰でもフッ素洗口剤であるミラノールを購入することができるのですが、「うちでは取り扱っていません」という歯科医院も多いです)
⇒参考:ミラノール(フッ素洗口剤)が手に入らない
それでも、フッ素洗口剤は粉末の状態であれば保存が利くため、例えば5000円分一度に購入してしまえば、4人家族で毎日使用したとしても余裕で1年間は持ちます。
イエテボリ法には「今すぐ始められる」というメリットがありますし、フッ素洗口には私が書いたようなメリットがあります。
どちらにしても虫歯予防に大きな効果がありますので、その人に合った方法を見つけていくということが一番大切なのではないかと思います。
モチベーションが上がって私も長文になってしまいましたが、予防はこれからの歯科医療の大きなポイントになってくるのではないかと思いますので、お互いに頑張っていきましょう!
私はまだまだ毎日が勉強ですが、このような励ましのお便りを頂き、さらにモチベーションが上がりました!
少しでも参考になれるように、これからも頑張っていきます!
さて、ご質問にあったフッ素の虫歯予防効果については、渡辺先生が非常に素晴らしい回答をされていますので、私はフッ素の使用法についての意見を述べたいと思います。
私のおすすめのフッ素(正確には「フッ化物」ですが・・・)応用法はフッ素洗口ですが、一応これには私なりの考えがありますので、そのポイントだけ挙げておきます。
【POINT1】 フッ素濃度の問題
フッ素で虫歯を効果的に予防するためには濃度よりも回数が重要だと言われていますが、実はある程度の濃度も必要だと考えられています。
⇒参考:Strong evidence that daily use of fluoride toothpaste prevents caries.
渡辺先生の回答にもあるように、イエテボリ法では「歯磨き粉をたっぷりと(約1.5g)使用すること」がポイントなのですが、これは上記の「ある程度の濃度」を確保するためです。
しかし実際には、日本の歯磨き粉のフッ素濃度はほとんどの製品が950ppmと海外の歯磨き粉よりも低く(スウェーデンでは1500ppm)、しかも中にはフッ素配合の歯磨き粉でも100ppm、300ppm程度のものもあります。
「歯磨き粉たっぷりと(約1.5g)使用する」というのは一応日本の950ppmの歯磨き粉を使用した場合の目安量ですが、使用する量がこれよりも少ないと虫歯予防の効果が低下する可能性がありますし、間違えて低濃度のフッ素配合歯磨き粉を購入してしまうという可能性もあります。
また、イエテボリ法では「10ccの水で口をゆすぎ、その後うがいはしない」というものポイントですが、水の量が多すぎたり、うがいをしたりしてもフッ素濃度が低下してしまいます。
イエテボリ法には上記のように様々な守らなければならないポイントがあるので、特にフッ素の効果が最大限期待できる子供が正確にイエテボリ法を行なうのは、難しいのではないかと思います。
その点、フッ素洗口は始めにフッ素洗口液をちゃんと作っておけば確実に一定濃度以上のフッ素濃度が確保されますので、テクニカルエラーが起こる確率が非常に低いというのが、私がフッ素洗口をお勧めする理由の1つです。
【POINT2】 回数の問題
フッ素で効果的に虫歯を予防するためには回数が最も重要なのですが、イエテボリ法は「歯磨き粉を吐き出した後、最低2時間は飲食を控える」というポイントがあるため、1日何回も行なうのが難しいのではないかと思います。
フッ素洗口の場合は一応、30分後には飲食OKということになっています。
(ただ、本当はもっと時間をおいたほうが良いのかも知れませんが・・・)
【POINT3】 費用対効果(POI)
フッ素配合歯磨き粉の値段はピンキリですが、大体100g500円程度のものが主流です。
イエテボリ法では1回1.5g程度の歯磨き粉を使う必要があるため、1日2回行なったとして、約1ヶ月で500円程度の費用がかかることになります。
これを1年で計算すると、約5000〜6000円程度です。
一方、フッ素洗口にかかる1年間の費用は約1000円です。
虫歯予防効果はイエテボリ法でもフッ素洗口でも十分な効果があることが証明されていますので、それなら安いほうが良いのではないかというのが私の考えです。
【POINT4】 お手軽さ
POINT1とちょっとかぶりますが、イエテボリ法は結構手間がかかるのに対し、フッ素洗口は洗口液を口に含んで1分間ゆすぐだけなので、お手軽です。(その前に歯磨きをする必要はありますが・・・)
【POINT5】 爽快感
イエテボリ法でもフッ素洗口でも、「吐き出したあとに水で口をゆすがない」という点は共通していますが、イエテボリ法では歯磨き粉が口の中に残ることになります。
これは、人によってはかなり不快に感じることがあると思います。
フッ素洗口でも洗口液が口の中に残りますが、フッ素洗口液の味や臭いはほとんど水と変わらないので、吐き出した後の不快感が少ないと思います。
【POINT6】 歯医者さんへの影響
フッ素は虫歯予防に大きな効果があるというエビデンスがあるにも関わらず、日本の歯医者さんでフッ素の利用を積極的に勧める人は多くありません。
この最大の理由は「お金にならないから」だと思います。(フッ素塗布はまだお金になるほうなので勧める歯医者さんも多いですが、フッ素洗口はぶっちゃけ全くお金にならないので、勧める歯医者さんはごく少数です・・・)
フッ素洗口液を手に入れるためには薬事法上の問題で、「歯科医院でフッ素洗口についての説明を受ける」ことが必要なのですが、患者さんがフッ素洗口を求めるようになれば、歯医者さん側も対応せざるを得なくなってくると思います。
患者さんにフッ素洗口について知ってもらい、歯医者さんに要求するようになってもらうことで、日本の歯医者さんのフッ素に対する認識を変えてしまおうというのが、当サイトの真の狙いでもあります。
【結論】
私自身イエテボリ法もフッ素洗口も実際にやっていますが、上記のような理由で今は専らフッ素洗口を勧めています。
ただ、フッ素洗口には渡辺先生も書かれている通り、洗口剤の入手がやや困難だという問題もあります。(本当は歯医者さんであれば誰でもフッ素洗口剤であるミラノールを購入することができるのですが、「うちでは取り扱っていません」という歯科医院も多いです)
⇒参考:ミラノール(フッ素洗口剤)が手に入らない
それでも、フッ素洗口剤は粉末の状態であれば保存が利くため、例えば5000円分一度に購入してしまえば、4人家族で毎日使用したとしても余裕で1年間は持ちます。
イエテボリ法には「今すぐ始められる」というメリットがありますし、フッ素洗口には私が書いたようなメリットがあります。
どちらにしても虫歯予防に大きな効果がありますので、その人に合った方法を見つけていくということが一番大切なのではないかと思います。
モチベーションが上がって私も長文になってしまいましたが、予防はこれからの歯科医療の大きなポイントになってくるのではないかと思いますので、お互いに頑張っていきましょう!
相談者からの返信
相談者:
M.Sさん
返信日時:2007-01-09 15:51:05
「虫歯予防に対するフッ素の効果的な使用法とは?」の質問をさせて頂いたM.Sと申します。このたびは非常に詳しく説明をして頂き、本当にありがとうございました。
私の周りでは院長を含め、フッ素は虫歯予防に効果がないと言う人が多く、私自身も何となくそうなのかな?程度に考えていましたが、今回こうしてご回答を頂いたことで、フッ素に対する認識が全く変わりました。
それと、私自身の勉強不足も痛感しました。
私たちは患者さんの健康に大きく関わる仕事をしているにも関わらず、適当な知識だけで治療法を決めてしまい、その結果患者さんの健康を害するとまではいかなくても、理想的な治療は行えていないことが多かったように思います。
これからは少しでも理想の治療に近づくことができるように、もっと勉強もしていこうと思います。
田尾先生へ
歯チャンネルはサイト開設当初から拝見させて頂いていますが、ここまでのサイトになるまでには大変な努力と苦労があったことと思います。
歯チャンネルは将来、本当に「歯科革命」を起こせると思います。
もう少し勉強をして自分の知識に自信がついたら、私もぜひ歯科相談室の回答者に参加させて頂きたいと思っていますので、その時にはよろしくお願いします。
では、これからも頑張ってください。本当にありがとうございました。
【関連性の高い歯科相談】
・フッ素の種類でお勧めなのは?(2007/3/14)
・ミラノール(フッ素洗口剤)が手に入らない(2006/12/6)
私の周りでは院長を含め、フッ素は虫歯予防に効果がないと言う人が多く、私自身も何となくそうなのかな?程度に考えていましたが、今回こうしてご回答を頂いたことで、フッ素に対する認識が全く変わりました。
それと、私自身の勉強不足も痛感しました。
私たちは患者さんの健康に大きく関わる仕事をしているにも関わらず、適当な知識だけで治療法を決めてしまい、その結果患者さんの健康を害するとまではいかなくても、理想的な治療は行えていないことが多かったように思います。
これからは少しでも理想の治療に近づくことができるように、もっと勉強もしていこうと思います。
田尾先生へ
歯チャンネルはサイト開設当初から拝見させて頂いていますが、ここまでのサイトになるまでには大変な努力と苦労があったことと思います。
歯チャンネルは将来、本当に「歯科革命」を起こせると思います。
もう少し勉強をして自分の知識に自信がついたら、私もぜひ歯科相談室の回答者に参加させて頂きたいと思っていますので、その時にはよろしくお願いします。
では、これからも頑張ってください。本当にありがとうございました。
【関連性の高い歯科相談】
・フッ素の種類でお勧めなのは?(2007/3/14)
・ミラノール(フッ素洗口剤)が手に入らない(2006/12/6)
タイトル | 虫歯予防に対するフッ素の効果的な使用法とは? |
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質問者 | M.Sさん |
地域 | |
年齢 | 29歳 |
性別 | |
職業 | |
カテゴリ |
虫歯予防 フッ素 う蝕関連 予防関連 |
回答者 |
- 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
- 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
- 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。