う蝕象牙質・軟化象牙質・感染象牙質の違いと、AIPCの効果について

相談者: はくしゃくさん (26歳:男性)
投稿日時:2008-06-24 12:28:16
初めまして。

勉強無しには患者も満足感・納得感を得られるものでないと考え、最近このサイトには高頻度でお世話になっております。

現在深在性のC2でAIPCの治療を受けています。
そこで調べたのですが、良く分からないことが以下のものです。


う蝕象牙質軟化象牙質感染象牙質
1.これらの違いはなんですか?
2.理念として存在しても、実際判別可能なのでしょうか?


AIPCにおいて
3.再石灰化が期待できるのはどれでしょう?
4.実際、どの程度再石灰化するものでしょうか?


二次カリエス防止には軟化(う蝕?)象牙質全てを取り除くのが一番なのは理解しております。

ですが患者としてはなるべく抜髄は避けたいですし、自己再生機能(象牙芽細胞の象牙質形成能?)は最大限利用したいのです。

MIの概念など含めて、今後の歯科医療を考える上で明確に理解しとくべきかなと思い質問させて頂きます。


回答 回答1
  • 回答者
回答日時:2008-06-24 19:54:53
はくしゃくさん
こんばんは

う蝕象牙質軟化象牙質感染象牙質
全部基本的には同じです。

全て取り除くのが基本です。
例外もありますが、
安心できるのは全て除去です。

どのような場合も
再石灰化します。

体が勝手に反応しますので、患者さんが気にすることは
ありません。

ですが、
う蝕象牙質・軟化象牙質・感染象牙質を
取り除いていないと、
その部分は細菌がどんどん侵入しやすいというだけです。

ですから、抜髄になりやすくなります。



AIPCの治療ですか?
どういう治療でしょう?
何かメリットがあるのですか?


indirect pulp capping はアメリカでは禁忌ですよ。
治療は、臨床症状でほぼ決まります。
テクニックでは決まりません。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: はくしゃくさん
返信日時:2008-06-24 23:05:28
宮下先生、こんばんは。
返信ありがとうございます。


う蝕象牙質軟化象牙質感染象牙質
全部基本的には同じです。

基本的には、ですか…。ということはやはり正確には違うという事ですか?



>AIPCの治療ですか?
どういう治療でしょう?

素人の私なんかより宮下先生のほうが断然詳しいかと思いますが、受けた説明は、

う蝕が深く全ての、う蝕象牙質・軟化象牙質・感染象牙質(どれだったかは覚えておりません)を取り除くと露髄する可能性が高いので、仮の蓋をして象牙質の再石灰化を待つ。
私はまだ若く、再生の可能性があるということで3ヵ月後にまた様子を見ましょう、

ということでした。



>何かメリットがあるのですか?

再石灰化が確認されれば、抜髄せずに済みます。
また、この説明は受けていませんが調べたところ、たとえ経過が思わしくなく結果として抜髄に至る場合でも、AIPCの診療点数が抜髄の時に引かれますので、患者としてはメリットは享受できても、それに対する金銭リスクはゼロです。
逆に言えば歯科医側から見たメリットはありません。



>indirect pulp capping はアメリカでは禁忌ですよ。

HPを拝見したところ先生は米国にお詳しいようですね。
日本においてAIPCは今年四月から保険適用となっており、今後より一般的な方法となるのではないのでしょうか?
(素人意見なので当てにはならないですが)



>治療は、臨床症状でほぼ決まります。
テクニックでは決まりません。

これを、もう少し噛み砕いて説明をしてもらえますか?
(否定的な意見だということは何となく分かるのですが…)


以上、数点の再質問になりますがよろしくお願いします。

ちなみに私は先にも述べたとおり、抜髄したくは無いですし、歯科医側から見たメリットが見当たらない手法を選択してくれたことに対し、好意的に受け取っています。
回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2008-06-25 20:40:17
はくしゃく さん


歯髄という組織は刺激を受ければ、反応しますから、
気にしなくても石灰化します。1960年代からわかっています。

ですが、
それは、条件の悪いものができるだけです。
決して元から存在する象牙質ができるのではないことが
1983年ごろからわかってきました。

この組織は
修復象牙質と呼ばれていますが、
それができたからといって、
抜髄をしないで済むわけではないのですよ。

何が決定するかというと細菌の存在です。
細菌は、修復象牙質を通り抜けて、歯髄に達します。
したがって、


再石灰化が確認されれば、抜髄せずに済みます。」


ということはないのです。

なので、

う蝕象牙質を取り除くと露髄する可能性が高いので、仮の蓋をして象牙質の再石灰化を待つ。
私はまだ若く、再生の可能性があるということで3ヵ月後にまた様子を見ましょう、ということ」

は、誤りではありませんが、
(私もまれですが、年齢の若い方にはやることがあります)
必ず成功するわけではありません。

何が成功を決定するかというと、
そのからどのような症状があるかです。
その情報は、書かれていませんから、
何もアドバイスできませんが、

------------------

もしも、治療前に「何も痛みがない」状態であったならば、
わざわざう蝕を残して3ヶ月待つリスクを増やさないで、
全て取り除いても大丈夫な事が多いです。
もちろんどのように治療するかが、大切ですけど。

------------------

もしも、治療前に「ほんのわずかな痛みがたまに」
あったのならば、
はくしゃくさんの言うAIPCを行ったとしても
将来、歯髄は感染してしまう可能性が高いでしょう。
そうなると抜髄ではなく、感染根管治療という治療に
なってしまいます。

------------------

はくしゃくさんはデメリットがないと感じられているようですが、どちらの場合もデメリットがあるんですよ、本当は。

デメリットを説明されていないだけです。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: はくしゃくさん
返信日時:2008-06-26 01:29:12
宮下先生、こんばんは。
返信ありがとうございます。

なんと、AIPCが失敗に終わると、多くは抜髄だけではなく感染根管治療を必要とするのですね。

確かにその説明を受けておりません。


>情報
として、レントゲン写真(をさらに携帯で撮った写真)を添付します。


また、私の場合
>「何も痛みがない」状態であった

ため、軟化象牙質は全て取った結果、直接覆罩なり間接覆罩なり抜髄なりの処置をする方が懸命であるという判断ですね。


もう無理ですが…


金銭的リスクは無くとも、少なくとも根管感染リスクは負ったということ、理解しました。


色々と勉強してきましたが何にせよ、治療の成功の鍵は、治療部位の滅菌・滅菌の維持な気がしてきました。
(勿論それに至るには技術力が不可欠です)

私の通う歯科ラバーダム未使用だし大丈夫かな、と何だか心配になってきました。

画像1画像1
回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2008-06-26 09:47:37
はくしゃく さん
画像ありがとうございました。

心配にさせているならすみません。
ですが、勘違いして安心しているのも
どうかなと思います。
正しく理解していただけたと思います。

この1本が気になっていらっしゃるようですが、
はくしゃくさんは虫歯になりやすい人だったんですね。

治療を正しくやってもらうことも重要ですが、
それよりも、自己管理をしっかりやるように
してくださいね。

すごく心配です。
レントゲンに映っている3本のすべて虫歯になった経験が
あるんですからね。


--------------

ところで、
このう蝕はスカンジナビアのう蝕分類では
D4(歯髄に達するう蝕)です。

ほとんどの部分のう蝕象牙質は取り除いて、
ほんの一部の歯髄に接する部分のみのう蝕を
わざわざ残すという処置をされたのですね。
(多く残し過ぎてなければいいのですが)

治療してもらった歯は、
3−6ヶ月後にもう一度
すべてのう蝕象牙質を取ってもらってください。
その時に、やはり露髄するかもしれません。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: はくしゃくさん
返信日時:2008-06-27 09:21:30
宮下先生、おはようございます。
返信ありがとうござます。

レントゲンに映っている3本のすべて虫歯になった経験が
ある

さすがプロの方は違います。
全てを見なくても、すぐ見抜かれてしまうのですね。
ご指摘のとおり、私は今回の治療で上下左右全ての4〜7で治療経験ありになってしまいました。

今までさして何も考えることなく、ここまで来てしまったのでこういう結果になったのだと反省し、今回はweb上で情報収集ならびに(歯周病を含め)予防実践を行っております。
その際、ここのサイトは特にお世話になりました。



>ところで、
このう蝕はスカンジナビアのう蝕分類では
D4(歯髄に達するう蝕)です。

アメリカやスカンジナビアといった国は、歯科医療の先端を行っているのですか?
他に進んでいる国はあるのですか?
後学のために教えてください。



>治療してもらった歯は、
3−6ヶ月後にもう一度
すべてのう蝕象牙質を取ってもらってください。

分かりました。
ところで私の通う歯科検知液としてニシカ社のカリエスチェックを用いていますが、これは業界での評判・位置付けとしてはどうなのですか?
回答 回答4
  • 回答者
回答日時:2008-06-27 18:24:13
はくしゃくさん
こんばんは

予防はスカンジナビアの国々が最も進んでいますよ。
研究もほとんど、その国が中心です。
最近では、虫歯の多い国で研究が進められていますが、
代表となる研究者は、スカンジナビア出身です。

カリオロジーも同様です。

検知液は「偽陽性」になりやすい試験薬です。
カリエスではないのに色がつきやすいという意味です。
ですから、
削りすぎという現象が起き易いものです。

予防を考えている人は使わないと思いますよ。
(診断学を学んでいればわかることですが。)

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: はくしゃくさん
返信日時:2008-06-27 21:31:50
宮下先生、こんばんは。
返信ありがとうござます。

>スカンジナビア

ってつまりは北欧の国々のことなんですね。。
予防だったり、確かに進んでいるイメージはありました。
純粋に研究・学問としても最も進んでいるのですね。


>削りすぎという現象が起き易いものです。

一般的には、また先生は、う蝕象牙質というものは硬さで判断されるのですか?



>予防を考えている人は使わないと思いますよ。
(診断学を学んでいればわかることですが。)

これをまた噛み砕いて説明してもらえますか?
予防との関連性について、私は診断学を学んでないので分かりませんでした。
回答 回答5
  • 回答者
回答日時:2008-06-27 22:01:07
はくしゃくさん
こんばんは

診断学は面白い学問なんです。
絶対に正しいことっていうのはありえません。

どのような検査も必ず間違いが起こります。
例えば、血液検査でも、レントゲンでも、
金属アレルギーの検査も。

世界中の検査を調べたとしても、どんなに正確なものと
言われているものでも
80%程度しか正しくは検査できません。
必ず、エラーがあります。


もしも、今、日本が戦時中で、AさんかBさんが
高い所に立って、敵の飛行機を監視しているとします。
それが、敵からの爆撃機だとわかるとボタンを押して
見方に知らさなければなりません。
Aさんは目が良いので、遠くまで見えます。自信もあるので
かなり遠い小さな物体でも、すばやく見方に知らせます。

BさんはAさんよりも、目が悪いことを知っていて
非常に慎重な人だったとします。確実に敵機が飛来したら
確実に見方に知らせます。

はくしゃくさんはどちらの人に監視してもらいますか?

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: はくしゃくさん
返信日時:2008-06-28 01:32:33
宮下先生、こんばんは。
返信ありがとうござます。


>どちらの人に監視してもらいますか?

これ難しいですね。状況に依るところが大きいです。
Aさんがどこまで正確に判断できるかは、この文からは分かりませんが高確率で正しいと仮定して…


1.敵機の飛来確認後、日本が準備態勢を整えるまでに十分に時間がある場合ではBです。
出来るだけ誤認によるロスは避けたいので。


2.しかし、目視での確認という設定もあり、一刻を争ってすばやく味方に知らせる必要がある場合は勿論Aです。


3.その中間ならAさんの確実性(誤認によるロス)と、間に合わなかったときの損失を分析して決めるしかないですね。
これは確率論になるので、結果としてBさんに頼んだがAさんに頼んだほうが良かった、というケースも出てくると思います。


以上はAさんが高確率で正しい判断が出来る、との仮定の上の簡単な場合分けですが、Aさんも100%正しい判断ができるとの仮定であれば、勿論全ての場合でAを選択します。

また敵機の爆撃目標に自分が含まれているケースだと、色々と考えずにAを選択するかもしれません。
回答 回答6
  • 回答者
回答日時:2008-06-28 20:44:23
はくしゃくさん
こんばんは

そうですね。
良い答えです。
正しいのはないんですよ。
その人がどう受け止めるかなのです。


これは治療も同じです。
実は私達医療人は非常に不確実な中で
色々な判断をしているのです。


なので、ある時は、
鳥が飛んでいるのに敵機と感じて警報を鳴らすわけです。
誰が監視していても、ある時は敵機ではないのに
警報を鳴らしてしまうことがあります。


目が良いAさんは
かなり早い段階で、警報を鳴らして、結局
鳥が飛んできたことに気づくこともあります。
しかし、それが鳥だと気づいた時には
それを撃墜するために
自軍の戦闘機は飛び立ってしまった後で、
「しまった。はやまった」と思うわけです。


目の悪いBさんは
逆にかなり気づくのが遅くなり、
本当に爆撃機の場合には、
見方が全滅するかもしれないですね。


さて、
AさんBさんはある種の検査を行っているわけです。
敵機かそれ以外かを見て判断するのです。


検知液も肉眼診査も同じようにある種の検査を行っています。
う蝕か、う蝕ではないかを色をつけて判断します。


検知液は壁に塗っても色が着きます。
べつに虫歯でなくても色が着くのです。
言い換えれば、非常に虫歯と早く判断できる道具です。
ですが、虫歯でない部分にも色がつくんです。
Aさんと同じです。
肉眼はBさんと同じかな。


絶対に虫歯だとわかった部分を削るのがBさん
Bさんは小さな虫歯を取り残すかもしれません。
とにかく早く虫歯だろうと思って削るのがAさん。
虫歯でない部分も削ってしまうのがAさんです。
だから、検知液を使って虫歯を取ると
削りすぎになりやすいのです。
そのことは
Kidd et al. (1993, 1996) に報告しています。


Aさんでも、
判断する距離が異なると結果が変わってきますよね。
非常に遠くに見える位置で判断した場合と
近くに来てから判断した場合では
正確性が異なります。
どんなに目が良い人でも
遠い位置ではエラーが多くなるのです。


もしもAさんが30倍に拡大できる双眼鏡を使ったら、
もっと近くに見えますので、
正確に判断できるようになるでしょう。
臨床では、
マイクロスコープってものがその役割を果たしてくれるんですよ。


AさんとBさんの良いとこを取ったような
やり方です。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: はくしゃくさん
返信日時:2008-06-29 12:16:21
宮下先生、おはようございます。
そして長文での返信ありがとうござます。

お蔭で何となくではありますが、理解できました。


マイクロスコープ

確かに双眼鏡があるならば、AさんであってもBさんであっても是非携帯させたいアイテムですね。


以上、追加質問等で長くなりましたが、これで相談を終わりにしたいと思います。


宮下先生、どうもありがとうございました。


文通が終わるようで何か淋しい気持ちもありますが、AIPCの治療が終わり結果が出れば、また追って報告いたします。



タイトル う蝕象牙質・軟化象牙質・感染象牙質の違いと、AIPCの効果について
質問者 はくしゃくさん
地域 非公開
年齢 26歳
性別 男性
職業 非公開
カテゴリ う蝕関連
その他(写真あり)
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
  • 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。

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