楔状欠損のレジン充填が原因で歯根膜炎、根尖性歯周炎になりますか?

相談者: 青空男さん (51歳:男性)
投稿日時:2018-06-27 14:25:14
6月8日に右下4番の楔状欠損レジン充填をしてもらい、その2日ほど後に、咬合痛打診痛が出る状態になりました。

6月25日にその歯科医に相談した結果、これは右側の歯をよく使っていたため負担がかかり、歯根膜炎になったものだろう(左下5番・6番を根管治療中のため)との判断がなされ、同日左上4番の楔状欠損のレジン充填もしてもらいました。

ところが、その2日後の今日6月27日、右上4番にも咬合痛、打診痛が出ており、現在二ヵ所に異常がある状態です。
左上4番は負担はかかっていなかったはずで、咬合性外傷の歯根膜炎になるとは思えませんし、また、レジン充填2日後に同様の症状が出たことも偶然とは思えません。

ネットで検索した結果、歯科治療に伴う機械的・科学的刺激が原因で急性単純性根尖性歯周炎を発症する場合が多いとありました。

右下4番に関しては、電気診で一応失活はしていないと診断されていますが、たとえば「細菌が歯髄を侵しつつあり、早い段階で抗生物質で叩かない限り歯髄の失活は免れない」というような状態なのではないでしょうか。

大変不快で苦悩しております。
どうかアドバイスをお願いいたします。


回答 回答1
  • 回答者
回答日時:2018-06-27 19:51:17
楔状欠損レジン充填が原因で歯根膜炎根尖性歯周炎になりますか

可能性としてはかなり低い(限りなくゼロに近い)ように思います。

根尖性歯周炎は、根尖性歯周炎になる前に歯髄炎歯髄壊死などの病態を経て数か月から数年の年月が必要となりますので「レジン充填2日後」では理論上「あり得ない」と言う事になります。


そもそも、楔上欠損は「力のコントロール不良」にブラッシングなどの外力が加わって起こるものと考えます。
(どちらが先か?と言う議論はいろいろなところでされておりますが、マイクロスコープで日々、口腔内を観察していると「力のコントロール不良が先」としか思えないケースを多く経験します)

つまりレジン充填を行ったからと言って楔上欠損の根本の原因である「力のコントロール不良」が残っていれば歯根膜炎を誘発してもおかしくはないように思います。
(むしろ、レジン充填を行ったことにより力の逃げ道が無くなり、歯根膜炎の誘発は以前よりも強く起こることも考えられます)


>左上4番は負担はかかっていなかったはずで

以下、あくまでも私見ですが、「負担」とは「力の大きさ」だけでなく「持続時間」も大きく関係するように思います。
中学校で習った「仕事量」と同じ考えで、「歯にかかる負担」とは「力の大きさ×時間」が密接に関係していると考えます。

つまり、TCHのように「弱い力」であっても「長時間加わり続ける」と言う状況だったとすれば「咬合性外傷による歯根膜炎は起こりえる」と言う考えです。


今回のようなケースでは「よっぽど雑な治療」でない限り、楔上欠損を埋めるためのレジン充填で歯髄細菌感染を引き起こすようなことは無いように考えます。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: 青空男さん
返信日時:2018-06-28 13:58:57
ご丁寧な説明、大変ありがとうございました。
根尖性歯周炎歯髄炎等の病態を経るとのご指摘はよくわかりました。

しかしここでさらに疑問が生じました。

ネット検索の結果、(釈迦に説法で恐縮ですが)歯髄炎は「歯髄と近接した歯科治療を行なった場合、薬剤や材料の刺激によって起こることがあります」
http://mimatsu-wd.jp/faq/faq-mushiba/mushiba007/

虫歯になっていない歯でも、歯の神経が通る根の先端部にある小さな孔(根尖孔)からバイ菌や毒素が歯の神経に侵入すると、同じように歯髄炎をおこします。」
http://www.iyama-dental.com/library4hatokuchinobyouki.htm

とあります。

右下4番、左上4番の両者が細菌由来ではない咬合性外傷による歯根膜炎だとすると、たった二日、10回に満たない食事回数で発症したことになります。
TCHがあったとしても、レジン充填48時間後にこれほど顕著な症状が出ることについて腑に落ちない感は否めません。

私の2ヵ所の楔状欠損は、プロービングの際に出血が認められ、特に右下4番では深度が1.5mmほどとかなり深く、細菌感染に対し防御力は弱かったように思われます。

右下4番に関しては、電気診で一応失活はしていないと診断されています(左上4番についてはまだ診察を受けていない)が、症状を照らし合わせた結果、私としては両者とも現状「可逆性歯髄炎」の段階にあるような気がして仕方がありません。

先生のおっしゃる通り、当該2本の歯についてレジン充填で歯髄に細菌感染を引き起こすことは無い、即ち細菌由来ではない咬合性外傷による歯根膜炎であるとすると対症療法で対処する形。

つまり具体的には堅い物を食べないようにしながら様子を見る、という形になるかと思いますが、その間に不可逆性歯髄炎に推移、ひいては抜髄もしくは抜歯という事態に至ることを私は強く恐れております。

この点に関し、ご所見を伺えれば幸甚に存じます。
よろしくお願いいたします。
回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2018-06-28 18:07:12
いろいろと調べられていらしゃるようで…

歯髄炎は「歯髄と近接した歯科治療を行なった場合、薬剤や材料の刺激によって起こることがあります」

確かにこれは起こりえますが、青空男 さんのような楔上欠損の治療では歯髄に近接するような削り方はしないように思います。(あくまでも一般論ですが)
こうなるには大きな虫歯を放置して、治療前までに極度の冷水痛や自発痛があった場合に限ると思います。


>「虫歯になっていない歯でも、歯の神経が通る根の先端部にある小さな孔(根尖孔)からバイ菌や毒素が歯の神経に侵入すると、同じように歯髄炎をおこします。」

これは重度の歯周病からの「逆行性歯髄炎」を指しているので青空男 さんのような楔上欠損の治療には当てはまらないと思います。


>特に右下4番では深度が1.5mmほどとかなり深く

歯周ポケット測定値が1.5mmだとすれば「正常値」ですね。
(むしろ年齢から考えると、いたって健康です)

かなり深いというのは一般的にはポケット測定値が6mm以上を指すと思いますよ。


>つまり具体的には堅い物を食べないようにしながら様子を見る、という形になるかと思いますが

いえいえ。

心してTCH是正に取り組まれなければ症状の緩和は認められないように思います。


>その間に不可逆性歯髄炎に推移、ひいては抜髄もしくは抜歯という事態に至ることを私は強く恐れております。

であればなおさらでしょう。

プラークコントロール」「力のコントロール」「栄養のコントロール」ができていなければ歯は守り切れないと思います。


正しいTCH是正指導を受けられた方がよろしいような気がします。



ちなみに、先日「右上の歯が激痛でロキソニンも効かない。明日すぐに診て欲しい」とメールをいただいた患者さんですが、「右上の歯の痛みはかなり引いたが、今度は左の歯が痛くなってきた気がする」とのこと。

実際にレントゲン撮影をしてお口の中を拝見しても、虫歯は一切なし、プラークもついておらず、それでも歯肉が帯状に発赤していて、打診痛アリ。
TCH是正指導を行って2日ほど経過観察をしたところ「嘘のように痛みがなくなった」とおっしゃられておりました。

「絶対に虫歯だ!歯髄炎だ!」と思われるケースであっても「TCHが原因の激痛」と言う事はけっこうありますからね。
(残念なことに受け入れられない方も多いですが)
(それ以上に、それに気付ける歯科医は少ないのかもしれませんが…)

また、TCH是正指導を行って症状が改善された方から話を伺うと「仕事が手につかないくらいTCHを意識した」とおっしゃられる方も結構いらっしゃいます。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: 青空男さん
返信日時:2018-06-29 18:16:44
櫻井先生、大変申し訳ございません。

私の悪文のため、先生の私の歯に対する認識に誤解を生じさせてしまったようです。


一点だけ確認させて頂けないでしょうか。

>私の2ヵ所の楔状欠損は、プロービングの際に出血が認められ、特に右下4番では深度が1.5mmほどとかなり深く、

ここでの1.5mmは、いわゆる歯周ポケットの深さではなく、「エナメル質表面から歯髄に向かっての水平距離でのくびれの深さ」を表現したつもりでした。(ちなみに当該右下4番の歯周ポケットの深さは3mm) 。

この歯の楔状欠損はすでにエナメル質の層を超えて黄色い象牙質の層に至っており、私の感覚では歯髄まで薄皮一枚、というイメージで、「年齢から考えると、いたって健康」というものに当てはまらないものでした。

この場合でも、先生のご所見は同じ(楔上欠損を埋めるためのレジン充填で歯髄に細菌感染を引き起こすようなことは無い)でいらっしゃいますでしょうか。

たびたびの質問でお忙しい先生のお手を煩わせるのは実に気の引けることで本当に恐縮なのですが、口内2ヵ所(左上4番・右下4番)に咬合痛を抱え苦悩しております。

どうかよろしくお願いいたします。
回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2018-06-30 11:55:03
>ここでの1.5mmは、いわゆる歯周ポケットの深さではなく、「エナメル質表面から歯髄に向かっての水平距離でのくびれの深さ」を表現したつもりでした。(ちなみに当該右下4番の歯周ポケットの深さは3mm) 。

なるほど。


>この歯の楔状欠損はすでにエナメル質の層を超えて黄色い象牙質の層に至っており、私の感覚では歯髄まで薄皮一枚、というイメージで、「年齢から考えると、いたって健康」というものに当てはまらないものでした。

たしかにそれは健康ではありませんね。

僕の見解では楔状欠損が1.5mmも進行してしまうという事は「かなり力のコントロールに問題がある」と考えます。


>この場合でも先生のご所見は同じ(楔上欠損を埋めるためのレジン充填で歯髄に細菌感染を引き起こすようなことは無い)でいらっしゃいますでしょうか。

個人的には「無い」と思いますよ。
(よほど雑な治療じゃない限り…)


>口内2ヵ所(左上4番・右下4番)に咬合痛を抱え苦悩しております。

一度、本気でTCH是正に取り組まれてみてはいかがでしょうか?

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: 青空男さん
返信日時:2018-06-30 13:08:19
櫻井先生、お忙しい中貴重なお時間をとっていただき、本当にありがとうございました。
感謝の言葉もありません。

先生のご説明で疑念が一掃され、暗雲が一気に晴れたような気がします。
楔状欠損の治療にあたり、TCHという言葉も、TCH是正指導についても聞くことはありませんでした(通院しているのは貴院と同じ町内にある大学病院ですが)。

>TCH是正指導を行って2日ほど経過観察をしたところ「嘘のように痛みがなくなった」

というのは夢のようなお話です。
お勧めに従い、是が非でも、本気でTCH是正に取り組みたいと思います。


丁寧にご対応くださいましたこと重ねてお礼申し上げます。



タイトル 楔状欠損のレジン充填が原因で歯根膜炎、根尖性歯周炎になりますか?
質問者 青空男さん
地域 非公開
年齢 51歳
性別 男性
職業 非公開
カテゴリ 歯科治療後の歯の痛み
原因不明の歯の痛み
詰め物、インレー治療後の痛み
楔状欠損(くさび状欠損)
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
  • 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。

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