縁上マージン・縁下マージンと虫歯

相談者: ミルミルさん (31歳:男性)
投稿日時:2012-08-21 03:36:16
縁下マージン、縁上マージンについてこのサイトの質問をいくつか読ませて頂きました。
どの先生の意見でも共通していたのは、


クラウンと歯の境目が露出しているのですが・・・

↑この記事で先生が仰っているように、「縁上マージンになっているからといって、虫歯になり易くなる事はなく、むしろ清掃しやすいので良い。」との事でしたが、一つ疑問に思った事があります。


このサイトではないのですが、どのサイトを見ても「40代になると、歯茎が下がり歯の根面が露出してきて、そこが虫歯になる」と書かれています。

歯の根にはエナメル質がなく、虫歯になり易い象牙質が露出しているからだそうですが、「縁上マージンは虫歯になりにくい」という意見と少し矛盾を感じます。


縁上マージンでもエナメル質の上にクラウンの境目があった場合は、虫歯になりにくいかもしれませんが、象牙質の上にある場合もあるんですよね?
その場合は、象牙質が出ているという事だから虫歯になり易いのではないですか?

「歯茎の中に入っている状態と歯茎の上にある場合と比べても虫歯のなり易さは変わらない。
むしろ清掃し易いので良い」という意見と矛盾を感じてしまいます。




そしてもう一つ質問があります。
虫歯とは別に酸蝕症というのがありますよね?
砂糖が全く入っていない飲み物でも(ダイエットコーラとか)、酸で歯が溶けるという症状。

それも縁上と縁下では差はないのでしょうか?
(酸蝕症はプラークを取る取らない関係なく起こるという事なので、疑問に思いました。)


この二つが疑問に感じるのです。
ご回答をお願いします。


回答 回答1
  • 回答者
回答日時:2012-08-21 05:50:22
おはようございます。
鋭いご意見ですね〜。

まず、現実的な理想としては、書かれている通り、

「縁上マージン」かつ「エナメル質上マージン」

と言うことになるかと思います。
インレーの場合がこれに近く、エナメル質の範囲内に限っては問題が発生することが精度の割に非常に少ない)


ただ実際には、特に近遠心面ではエナメル質上にマージン設定するのが歯根間距離の問題から難しかったり、チッピングの問題からエナメル質上マージンと根面マージンの混在を不安視する見方もあったりで、そうシンプルな話でもありません。

あと基本的な考えとして、「縁下マージンで設定しても近い将来縁上に出てしまうケースが多いので、最初だけ縁下か最初から縁上かの違い」で比較するのが分かりやすいかも知れません。
歯肉の厚みのある部位だと歯肉は下がりにくいのですが、その変わりにプラークが縁下に停滞して腫れた状態が続くので、それも良くないとして・・)


(最初)縁下マージンの問題点は、
・正確な型採りが難しい
・根面の形態が型になかなか含まれないため、被せものの立ち上がりの形態を完全に自然な形態に作ることが極めて難しい(殆どの場合で膨らみすぎる)
・出来上がった被せものが、実際の歯質とマージンでフィットしているのかチェックすることが極めて困難
・セメンティングする際に、乾燥状態を維持することが困難
セメントが硬化した後に、それを綺麗に除去することが困難

などが挙げられるため、どうせそのうち縁上に出るのだとしたら、最初から縁上の方が「ベター」と見ることは出来るのかなと思います。



あと列挙した内容をよく見て頂ければ、実は縁下でも、
・マージンフィットを最高に仕上げ、
・被せものの縁下の部分の形態を最高に(天然歯と同じか、マージンはフィットさせた上でその後一瞬むしろ細く)仕上げ、
・セメンティング、セメント除去を最高に仕上げ、
・(出来れば)被せものの素材を歯質よりもプラークの停滞しやすいメタルやレジン系ではなくセラミックオールセラミック)で作る

・・ことがもしも可能だったら、おそらくプラークが停滞したり歯肉が下がってくる様なリスクは相当少ないですし、縁下の環境では通常カリエスを作ること自体がまずないですから、「本当の理想」というのはこういうことになるのかと思います。

ただこれは言うのは簡単でかなり難度が高く細かい話しなのですが、マイクロスコープを注意深く日常的に使っているドクターだとたぶん同意して頂けるのではないかと思いますよ。
実際非常に割合は少ないですが、こういうレベルで診療されている先生もおられますが、「例外的」と言っていいと思います。





あと酸蝕症に関してはご指摘の通りで縁下にしておいた方が安全なのですが、普通の人では問題にならない現象ですし、「そこそこの被せもの+縁下マージン+そこそこのプラークコントロール」だと高確率で歯肉炎にはなりますから、これを天秤にかけて、例えば酸蝕症のリスクの高い患者さんには歯肉炎は許して敢えて縁下マージンに、なんて選択はありますよね。



もちろん無条件で縁下マージンの方がいいでしょうという意見も少なくない(というか教科書的にはたぶんこちら)と思いますし、十分な数で信頼出来る比較試験というものがなかったと思いますから、正解は分かりません。

あくまでも「個人的見解」という様にご理解下さい。

それと実際にはどちらも好きに選択出来るというケースもそう多くはありませんしね。


とりわけ全周エナメル質上マージンが可能だったら、(ブリッジの場合を除いて)レジン充填でもいいはずですし。。

回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2012-08-21 08:52:32
渡辺先生の回答への追加として

縁上マージンの利点としては「形成しやすい」「印象しやすい」があると思います。

欠点というか患者さんにとってはメリットだとは思いますが、フィットしているかどうかが患者さんにわかりやすいと思います。
また歯牙の高径によっては維持力が不足するケースがあると思います。


個人的には審美性の要求の少ない部位でわざわざ歯肉縁下マージンにして苦労はしたくないです。

回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2012-08-21 15:56:43
ミルミルさん

こんにちは

僕も30代の患者様で、見た目が問題にならない、6番のクラウンであっれば、歯肉縁上マージンもしくは、歯肉縁ぎりぎりマージンを推奨します。

決して歯肉縁下にマージン設定をしません。


例外として、患者様のカリエスリスク(虫歯になりやすさ)がめちゃめちゃ高い場合には歯肉縁下マージンを検討します。

また、高齢の患者様で、歯磨きができにくくなった患者様にも検討します。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ミルミルさん
返信日時:2012-08-23 05:21:20
分かりやすい御説明ありがとうございました。



タイトル 縁上マージン・縁下マージンと虫歯
質問者 ミルミルさん
地域 非公開
年齢 31歳
性別 男性
職業 非公開
カテゴリ クラウン(被せ物)の隙間・適合
回答者




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  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
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