根管治療の成否に関わる、根尖部の細胞について

相談者: 主婦Aさん (36歳: )
投稿日時:2007-04-05 14:04:00
いつも興味深く拝見させていただいております。
今日は、根管治療(歯の神経・根の治療)に関係することで質問させてください。

についてネットをあちこち彷徨って調べていた際に、根管治療が治癒に向かうか否かについて、「根尖を封鎖させる再生細胞があるかどうか」が関係するとの記述を読みました。

歯チャンネルのコンテンツの中にも「有細胞セメント質」というのがありましたが、「根尖を封鎖させる再生細胞」とは、それのことでしょうか?

この再生細胞の有無というのは、治療のなかで医師が確認することの出来るものなのですか?

この細胞が失われることのないように、あらかじめ何か出来ることはあるのでしょうか。

もしこの細胞が失われかけていても、残った細胞を取り出して培養し、その細胞を再殖なんて出来ないのだろうか!?などと、素人考えで想像してしまいました。

もう一つ、根管治療に関係することですが、私の友人が過日、根管治療のなかで歯が破折してしまい、抜歯に至りました。

以前かかっていた医院で、「ドライバ」と呼ばれる金属のネジ状のものを入れられていたらしく、それを取り出そうとして歯が割れてしまったようです。そもそも、その金属を入れる治療をした医院に問い合わせたら、そういうものを入れるのはむしろ親切な治療だと言われたとのことです。

この話がとても気になり、ネットで調べていたのですが何のことだか分かりませんでした。

歯チャンネルの相談室でも、リーマーファイルの破折、シルバーポイント、といったもののことも読ませていただきましたが、それとは違うのかどうなのか。

よろしければ、この件も教えていただけますと幸いです。

いつもお忙しいところ恐縮ですが、どうぞよろしくお願い致します。


回答 回答1
  • 回答者
回答日時:2007-04-05 16:15:00
かなりマニアックな質問ですね‥。
僕の個人的な見解を書きますね。

結論から言うと細胞の培養、再殖は必要ないと考えます。

根っこの病巣の治り方には2つの形態があります。

一つはセメント質から再生する治癒形態でアペキソゲネーシスと言います。

これが理想的な治癒なので、神経取りをした直後の治癒はこれを目標として治療を進めます。

もう一つは骨から再生する治癒形態でアペキシフィケーションと言います。

一度治療したはずの根っこで再治療を必要とする場合にはこちらの形態で治癒していく事になると思います。

セメント質も骨も生きていますから、どちらの形態で治癒しようとも細胞はなんらかの形で関与しているわけです。ですから再殖までは必要ないと言えると思います。

もちろん、全ての根の治癒をアペキソゲネーシスで‥と考えるのであればセメント質由来の細胞が必要となるのですが、根管の形態から考えると、通常の歯内療法的アプローチではおそらくセメント質細胞の移植は不可能だと思います(もちろん、外科的に切開して治すのであれば可能ですが‥)。

歯科用実体顕微鏡のことをマイクロスコープと言いますが、実際には見えているのはマイクロレベルでも、治療に使う器具はミリ単位です。と、言う事はマイクロレベルの細胞を扱うにはマイクロ単位の器具とナノレベルが見える顕微鏡が必要となると思います。

実は、ナノレベルで見ようとすると光学顕微鏡では見ることが不可能ですから、電子顕微鏡を使う事になります。

現在、歯科治療用電子顕微鏡と言うものは実在しませんから、結局は不可能ですよね‥

‥なんだか未来世界の話になってしまいましたが‥

もう一つの話題

ドライバーを入れている、と言うよりも「スクリュー」を入れているのではないでしょうか?

ま、いずれにせよ「金属製の何か」を根管内から除去するのは非常に難しく、僕もマイクロスコープを使いながらヒヤヒヤしながら取っています。

簡単に言えば「鉛筆の芯だけを周りの木を傷つけずに取り出す苦労」を考えていただければ良いと思います。

まして、周りの木の部分の厚みが薄ければそれだけリスクは高まります。

「そういうものを入れるのはむしろ親切な治療」と言う意味が僕には解りません。

まあ、そうならないように今後は金属製の土台を入れるのではなく、ファイバーにしておいたほうが、再治療時にも歯根破折のリスクが減るのではないかと思います。

回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2007-04-05 21:19:00
根尖を封鎖させる再生細胞」ですか?

もう完全に、歯科大学生レベルのご質問ですね。
有細胞セメント質なんて、普通の人は絶対に知らないですよ(^^;)

一応、根管治療後の根尖の治癒形式としては、

セメント芽細胞が作る、セメント質による閉鎖(一番理想)
・繊維芽細胞が作る、繊維性結合組織による閉鎖

の2つだと思うのですが、これらの治癒が起こるためには、細菌が徹底的に除去される必要があります。

なぜなら、細菌が存在している間は炎症が治まりませんから、これらの治癒機転も起こってきません。

なので、まずは炎症を起こしている原因である細菌を、どれだけ徹底的に除去出来るかどうかが、根管治療の成否を決める最も重要な要素だと思います。

その後、根尖がどのような治癒経過(セメント質による閉鎖or繊維性結合組織による閉鎖)を辿るのかは、はっきり言って分かりません。

もしそれを知ろうと思ったら、を抜いて検査をしなければなりませんので・・・。

ただ、どちらの治癒経過を辿ったとしても、細菌の除去がしっかりと行なわれていて、詰め物もしっかりと詰められていれば、根管治療は成功すると言われています。


あと、「ドライバ」というのは、タイヨウ先生もおっしゃられている「スクリューピン」というものだと思います。(金属のネジ状のものだということなので、たぶん間違いないと思います)

これはレジンコアの強度を補う目的で使用されることがあるのですが、今はさらに良いファイバーコアがありますので、徐々に使われる頻度は少なくなっていくだろうなぁ・・・と思っています。

⇒参考:レジンコア
⇒参考:ファイバーコア

回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2007-04-05 22:15:00
問題は根尖部の細胞が生きていけるかどうかです。

例えば細胞を移植したとしてもその細胞がそこで生きて 世代交代を繰り返していくことが出来るかどうか そのあたりが再生治療の問題点でもあります。

治癒が上手くいくかどうかはそのあたりの細胞のことを考えての治療ができるかどうかにもよります。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: 主婦Aさん
返信日時:2007-04-06 00:26:00
先生方、いつも素早いお返事をいただき、本当にありがとうございます。

根管治療といったらひたすら消毒!というものかと思っていたところ、「細胞が」という文字を見つけたため、にわかに気になってしまったのです。

根管治療で一生懸命に殺菌するのは、この細胞によって封鎖されるためということだったのですね。

根管治療で、骨が吸収しているとダメ、というようなものも読んだのですが、それは、タイヨウ先生が書いておられる「骨からの再生」が出来なくなってしまうから予後が悪くなるということでしょうか。

自分の場合、この再生細胞の元気度(?)はどうなのか、気になるところです…

抜髄したがあるのですが、その医院の対応に疑問を抱いて、すぐ別な医療機関に行って再度調べたら、丸ごと1本、まったく充填されていない根管があることがすぐに判明しまして、そのうち再治療になりそうです……爆弾抱えている気分です。

半年経ちますが、今は何も症状がないですが、いつか何かが起こるだろうと覚悟はしています。それまで親不知の管理も頑張らなくては…。

友人の、金属のネジっぽいものの件もありがとうございます。

「親切な治療」というのは、過去に治療した患者から電話が掛かってきて、苦し紛れに言われたのかもしれないですね。

とにかく金属を詰めるのは良くない、ということは、私も頭に叩き込みました!
回答 回答4
  • 回答者
回答日時:2007-04-06 01:51:00
こんにちは。

いつもながら凄いご質問ですね、お子さんの治療は大丈夫でしたか?
主婦Aさんなら国家試験の問題とかもかなり解けそうな気がしてきますね。。

根管の形態が、元々根尖の孔(=神経の出入り口のこと。これも根っこの先端にはないことが多く、時には2mmぐらい歯冠側にずれてます)から測って、0mm〜ひどいと3mmぐらいまでのどこかに、すごーく狭い・細い場所があるんですね。再狭さく部と言いますが。


これを”天然のバリヤー”と呼び、出来るだけこれを壊さない様に治療を進めます。(敢えて壊す先生もおられます)

何のバリヤーかと言うと汚れた場所(根管)と正常な身体(の外)の境界のバリヤーです。いかにも重要ですよね?

で、これをうまく壊さずに治療が済めば、レントゲンには根っこの長さよりも少し短く根充剤が白く写ります。

その場合、他の先生方がご説明された様に(硬組織の有無に関係なく)治療が成功する率が高くなります。

勿論、徹底的な消毒が大前提ですが。

じゃあもしもバリヤーを突き抜けた時はどうなるか分かりますか?

レントゲンでは、根充剤が根っこの長さと同じ長さ(実質突き抜け状態)か、根っこより飛び出て写ります。

その場合、根充剤は歯の外、つまりセメント質よりも飛び出ているのですが、清潔であれば周りには軟らかい瘢痕組織が出来てきて包まれ、これまた治療は成功していきます。

ただ突き出すと、もしもまた問題が起きてきた場合には根充剤の除去が非常に困難になるため、出来れば避けた方がいいですし、何よりも統計的に成功率が落ちるので、あまり嬉しくはない状態ですね。

骨が吸収しているのは、ばい菌が骨を溶かしている訳ではなくて、近所(と言っても根管の中)にばい菌がいることで、骨が自発的に避難している状態です。歯周病も実は同じなのですが。

ですから、原因のばい菌さえいなくなれば、溶けた骨の中を満たしていた膿はまた自然に吸収され、骨が必ず再生します。

歯周病の場合には再生できないのですが、これは構造の違いに由来します。
歯根膜セメント質がなくなってしまうからです)

ですので基本的には、再生細胞の元気度?とは関係なくて、どちらかと言えばどうしても多少残ってしまうばい菌を、やっつけられる、あるいは抑え込めるだけの免疫力があるかどうかの方が治療の成否には影響しそうですよね。

と、そんなことも考えながら、今度また根管治療を受けられてみると、楽しい(?)かも知れませんね。


スクリューはほんとは逆向きに回しながら入れるものらしいので、ほんとは外しやすいはずなんですけど、正回転でねじ込む先生が結構いらっしゃいますから、そりゃ取れないし、最悪割れますよね・・

あと因みに、主婦Aさんがおっしゃる通り、動物から培養してセメント質を作ると言われる薬剤がすでにあって、歯周治療の再生療法では用いられることがあります。

エムドゲイン”と言うお薬です。
興味があればまた調べてみて下さい。

⇒参考:エムドゲイン(エナメルマトリックスデリバティブ)

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: 主婦Aさん
返信日時:2007-04-06 11:44:00
渡辺先生も、コメントありがとうございました。m(_ _)m

先日ご相談した子どものですが、「サホライドではダメなんでしょうか‥」と衛生士さんに尋ねてみましたら、最初は「う〜ん」という反応でした(ディアグノデントの数値が高かったためかと)。

しかしその後、「先生がサホライドで様子を見てもよいとおっしゃったので」、とのことで(直接私は医師とは話が出来ていませんが)、とりあえずサホライドを塗ったところです。ダメなら削ることになるのでしょうけれど、ドキドキです‥‥。

話は根管治療に戻りまして、さらに検索していたところ、まさに根治のプロの先生がプロ向けに書いているサイト(根尖部の治癒に関しての)を発見したのですが、こちらはさすがに難しくて読んでいたら頭痛がしてきてしまいました(汗)。

渡辺先生のわかりやすい解説を読んだら、やっと理解できてきた気がします!

骨の吸収というのも、根っこの治療の場合と歯周病とでは再生するかどうかが違うんですね。

エムドゲインは名前だけ見たことがありました。

歯周科で診て頂いた先生が、エムドゲインとかGTR等がご専門だったようなので(ちなみに私はそこまでひどい歯周病ではありませんが(^_^;A)。どういうものかは知りませんでしたので、また調べてみます!!

いつかは私も避けられない根管の再治療、恐怖感からあれこれ調べていたのがはじまりだったのですが、歯チャンネルの先生方の詳しいご説明でしっかり知識も身に付き、知的好奇心で楽しみながら(!?)乗り越えることができそうな気がします。

ついこのあいだまで歯科恐怖症だった私が、こちらの先生方のおかげでずいぶん成長しました。ありがとうございました。



タイトル 根管治療の成否に関わる、根尖部の細胞について
質問者 主婦Aさん
地域  
年齢 36歳
性別  
職業  
カテゴリ 根管治療その他
根管治療関連
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
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