移植した歯肉の安定は、エムドゲインを使用したとしても難しいのでしょうか?
相談者:
あきさん (30歳: )
投稿日時:2007-08-29 15:49:00
私も先ほど相談されていた方と同じ様に下前歯2本の表裏の歯肉が極端に下がっていて,以前から何とかならない物かと思っていました。
⇒下がった歯茎の見た目回復
それで歯科大学病院の歯周科から始まりペリオ治療の得意な先生の歯科医院を数件,相談に回りましたが,移植しても戻る可能性大と言う事で,治療を断られました。
内2件は,やってみても良いと言う先生がおられたので,予約が取りやすく,自費の安い方で,手術してもらいました。
左上顎の裏側からエムドゲインを下地に移植しました。
現在3ケ月経ちますが,満足行くくらい良好です。
いつまで,歯肉が,この状態に有るのかが疑問ですが,取り合えずは,痛い思いをして行った手術はして良かったと思います。
手術をしてくれた先生は下地にエムドゲインを使う事によって付着しやすい様になると言っておられました。
それでもやはり安定は難しいのでしょうか?
⇒下がった歯茎の見た目回復
それで歯科大学病院の歯周科から始まりペリオ治療の得意な先生の歯科医院を数件,相談に回りましたが,移植しても戻る可能性大と言う事で,治療を断られました。
内2件は,やってみても良いと言う先生がおられたので,予約が取りやすく,自費の安い方で,手術してもらいました。
左上顎の裏側からエムドゲインを下地に移植しました。
現在3ケ月経ちますが,満足行くくらい良好です。
いつまで,歯肉が,この状態に有るのかが疑問ですが,取り合えずは,痛い思いをして行った手術はして良かったと思います。
手術をしてくれた先生は下地にエムドゲインを使う事によって付着しやすい様になると言っておられました。
それでもやはり安定は難しいのでしょうか?
回答1
回答日時:2007-08-30 00:56:00
そういう経緯であきさんは詳しい訳ですね、納得しました。
別に手術そのものを否定するつもりはありませんし、あきさんは経過も良さそうですから、されて良かったと思いますよ。
ただもしも私のところにも同様の患者さんが来られた場合には、あきさんが先に相談された数件の先生方と同様に、「お勧めしない派」・・ということです。
テクニック的にも自信もないですしね。
さてエムドゲインについては、その様な使用の仕方は結構される様です。
説明も受けられているかとは思いますが、エムドゲインというのはブタから採取した(と言っても加熱処理など複雑な工程は経ているのですが・・)タンパク質です。
そのタンパク質の中に、何やら色々と細胞の成長因子が含まれていて、「何だか歯周組織の再生(誘導)に効果があるぞ!」という画期的(?)な歯周組織再生療法用に認可されているお薬です。
このタンパク質中の、どの因子とどの因子が歯周組織の再生に役立っているのかは実はよく分かっていないのですが、何だか良い訳ですね。
で、基本的な使用法としましては、「局所的に進行している歯周病」のところに、「1個人に1回まで限定」で使用できる薬です。
「局所的に進行している歯周病」
というのは、歯肉剥離掻爬術(以下FOP)の際に歯ぐきをめくって、骨の形を実際に目で見てようやく確認が出来ます。
歯に隣接する骨の欠損が、横幅2mm以上、縦幅4mm以上(歯周ポケットは6mm以上)の細くて深い形態をしている場合が適応症とされ、この条件を満たさない場合には薬を使わない場合(普通のFOP)と差が出ないとされています。
(Enamel matrix derivative (EMDOGAIN) in the treatment of intrabony periodontal defects. Journal of Clinical Periodontology 1997 Heijl L et al)
論文はこちら
ですから本来の適切な適応症というのは意外に少ないんです。
(あきさんの様に、歯肉移植手術で使用するのはダメではないのですが、その効果については高く評価されている訳ではないと思います)
でこの夢の薬の効果が実際にどれほどあるのかと言えば、過去にも何度か話題に上っている、世界一信頼できるコクラン(Cochrane)という機関によるレビュー(世界中のほぼ全てのデータをまとめたもの)によれば、
普通のFOPと比較して・・
PAL(上皮性付着起きている一番歯冠部よりの位置)の改善:
1.2mm(95%CI: 0.7-1.7)
PPD(歯周ポケットの深さ)の改善:
0.8mm(95%CI: 0.5-1.0)
(※95%CIというのは、統計学用語で真の数値が95%の可能性で以下の幅の中に含まれていますよ、という意味。この幅が広いとデータの信頼性も怪しく?なります)
Enamel matrix derivative (Emdogain) for periodontal tissue regeneration in intrabony defects. Cochrane Database Syst Rev. 2005 Oct Esposito M, Grusovin MG, Coulthard P, Worthington HV.
論文はこちら
なんだそうです。
(専門雑誌などでは3mmも4mmも骨が回復している様に見えるものもよく見られますが、正確に統計するとこれぐらいの様です)
因みに、ですが、エムドゲインで実際に再生した、様に見える人(!)の歯周組織を、せっかく再生したのに切り出して病理組織を観察してみると、10症例中たった3症例だけが「真の再生」をしており、残りはちょっと違う形をしていたという報告もあります。
(※臨床的にはそれ自体は大した問題ではありません)
Histologic evaluation of periodontal healing in humans following regenerative therapy with enamel matrix derivative. A 10-case series. J Periodontol. 2000 May
Yukna RA, Mellonig JT.
論文はこちら
「1個人に1回まで限定」
というのについては、意外と知られていないのですが、エムドゲインは動物由来の成分のために、1回目の使用は問題ないものの、2回目にはアレルギー性のショックが起きる可能性が完全には否定は出来ないため(※前例がある訳ではないです)、一応メーカーの指示としてはそうなっています。
という訳でかなりややこしい説明になってしまいましたが、エムドゲインという薬自体は、夢の歯周組織再生療法専用のお薬として90年代ぐらいに華々しく(?)現れたものの、その効果としてはいまいちエキセントリックでない・・という薬だったということです。
ただこの薬の素晴らしい点は、どんなに歯周外科の苦手な先生が使用したとしても、使用しない場合よりもかえって結果が悪くなる、ということがありません。
私も何度も使用していますが、臨床的な感じとしては何となく治りの良い感じはやっぱりありますね。
「1個人に1回まで」という縛りもあるのでその説明は必要ですが、お金に余裕がもしもあれば、「ワラをもつかみたい様な歯周外科」の場合にはダメもとで使ってみたい・・かな?というお薬です。
(このあたりは先生ごとの考え方にもよるかとは思います・・)
ですからあきさんの場合歯肉移植術という難しい手術でしたから、効果があるかどうかはよくわかりませんが、使えるなら使ってみたい・・かな?というお薬にはなりますので、一応適切。ということになるかと思います。
(※過去の臨床研究論文でも、信頼度は低いながらも歯肉移植にはエムドゲインを使った方が成果が上がりそう・・みたいな論文はいくつかあったと思います)
我ながら回りくどい説明になってしまいましたが、こんな説明で大体理解して頂けましたでしょうか?
別に手術そのものを否定するつもりはありませんし、あきさんは経過も良さそうですから、されて良かったと思いますよ。
ただもしも私のところにも同様の患者さんが来られた場合には、あきさんが先に相談された数件の先生方と同様に、「お勧めしない派」・・ということです。
テクニック的にも自信もないですしね。
さてエムドゲインについては、その様な使用の仕方は結構される様です。
説明も受けられているかとは思いますが、エムドゲインというのはブタから採取した(と言っても加熱処理など複雑な工程は経ているのですが・・)タンパク質です。
そのタンパク質の中に、何やら色々と細胞の成長因子が含まれていて、「何だか歯周組織の再生(誘導)に効果があるぞ!」という画期的(?)な歯周組織再生療法用に認可されているお薬です。
このタンパク質中の、どの因子とどの因子が歯周組織の再生に役立っているのかは実はよく分かっていないのですが、何だか良い訳ですね。
で、基本的な使用法としましては、「局所的に進行している歯周病」のところに、「1個人に1回まで限定」で使用できる薬です。
「局所的に進行している歯周病」
というのは、歯肉剥離掻爬術(以下FOP)の際に歯ぐきをめくって、骨の形を実際に目で見てようやく確認が出来ます。
歯に隣接する骨の欠損が、横幅2mm以上、縦幅4mm以上(歯周ポケットは6mm以上)の細くて深い形態をしている場合が適応症とされ、この条件を満たさない場合には薬を使わない場合(普通のFOP)と差が出ないとされています。
(Enamel matrix derivative (EMDOGAIN) in the treatment of intrabony periodontal defects. Journal of Clinical Periodontology 1997 Heijl L et al)
論文はこちら
ですから本来の適切な適応症というのは意外に少ないんです。
(あきさんの様に、歯肉移植手術で使用するのはダメではないのですが、その効果については高く評価されている訳ではないと思います)
でこの夢の薬の効果が実際にどれほどあるのかと言えば、過去にも何度か話題に上っている、世界一信頼できるコクラン(Cochrane)という機関によるレビュー(世界中のほぼ全てのデータをまとめたもの)によれば、
普通のFOPと比較して・・
PAL(上皮性付着起きている一番歯冠部よりの位置)の改善:
1.2mm(95%CI: 0.7-1.7)
PPD(歯周ポケットの深さ)の改善:
0.8mm(95%CI: 0.5-1.0)
(※95%CIというのは、統計学用語で真の数値が95%の可能性で以下の幅の中に含まれていますよ、という意味。この幅が広いとデータの信頼性も怪しく?なります)
Enamel matrix derivative (Emdogain) for periodontal tissue regeneration in intrabony defects. Cochrane Database Syst Rev. 2005 Oct Esposito M, Grusovin MG, Coulthard P, Worthington HV.
論文はこちら
なんだそうです。
(専門雑誌などでは3mmも4mmも骨が回復している様に見えるものもよく見られますが、正確に統計するとこれぐらいの様です)
因みに、ですが、エムドゲインで実際に再生した、様に見える人(!)の歯周組織を、せっかく再生したのに切り出して病理組織を観察してみると、10症例中たった3症例だけが「真の再生」をしており、残りはちょっと違う形をしていたという報告もあります。
(※臨床的にはそれ自体は大した問題ではありません)
Histologic evaluation of periodontal healing in humans following regenerative therapy with enamel matrix derivative. A 10-case series. J Periodontol. 2000 May
Yukna RA, Mellonig JT.
論文はこちら
「1個人に1回まで限定」
というのについては、意外と知られていないのですが、エムドゲインは動物由来の成分のために、1回目の使用は問題ないものの、2回目にはアレルギー性のショックが起きる可能性が完全には否定は出来ないため(※前例がある訳ではないです)、一応メーカーの指示としてはそうなっています。
という訳でかなりややこしい説明になってしまいましたが、エムドゲインという薬自体は、夢の歯周組織再生療法専用のお薬として90年代ぐらいに華々しく(?)現れたものの、その効果としてはいまいちエキセントリックでない・・という薬だったということです。
ただこの薬の素晴らしい点は、どんなに歯周外科の苦手な先生が使用したとしても、使用しない場合よりもかえって結果が悪くなる、ということがありません。
私も何度も使用していますが、臨床的な感じとしては何となく治りの良い感じはやっぱりありますね。
「1個人に1回まで」という縛りもあるのでその説明は必要ですが、お金に余裕がもしもあれば、「ワラをもつかみたい様な歯周外科」の場合にはダメもとで使ってみたい・・かな?というお薬です。
(このあたりは先生ごとの考え方にもよるかとは思います・・)
ですからあきさんの場合歯肉移植術という難しい手術でしたから、効果があるかどうかはよくわかりませんが、使えるなら使ってみたい・・かな?というお薬にはなりますので、一応適切。ということになるかと思います。
(※過去の臨床研究論文でも、信頼度は低いながらも歯肉移植にはエムドゲインを使った方が成果が上がりそう・・みたいな論文はいくつかあったと思います)
我ながら回りくどい説明になってしまいましたが、こんな説明で大体理解して頂けましたでしょうか?
相談者からの返信
相談者:
あきさん
返信日時:2007-08-31 23:09:00
回答2
回答日時:2007-08-31 23:48:00
あ、一応リンク先(引用している研究論文の概要だけが書いてあります)は読まなくてもいい様に書いているつもりです。
専門知識のある方が読まれる時や、興味を持って詳しく確認したい様な方の為に一応貼っているだけですので、あまり気にしないで下さいね。
文章を書く時に、出来るだけいい加減なことを書きたくないので、うろ覚えの内容を持っている論文やリンクした様なサイトで出来るだけ確認してから書いてはいるつもりなのですが、なにぶん私も英語が苦手で・・
回答している数も多いので全然追いつきませんし^^;
引用する場合には本当は元の研究論文をきちんと読んで、妥当性をしっかりと確認しないといけないんですよ。
それはきちんと出来てないと思いますし、詳しく書き出すときりがなかったり、ある種責任逃れ的な面もあるかも知れません。。
・・ということでリンク先は読まれなくていいのですが、もしも読んで間違いを発見した時には是非ご一報下さいね。
専門知識のある方が読まれる時や、興味を持って詳しく確認したい様な方の為に一応貼っているだけですので、あまり気にしないで下さいね。
文章を書く時に、出来るだけいい加減なことを書きたくないので、うろ覚えの内容を持っている論文やリンクした様なサイトで出来るだけ確認してから書いてはいるつもりなのですが、なにぶん私も英語が苦手で・・
回答している数も多いので全然追いつきませんし^^;
引用する場合には本当は元の研究論文をきちんと読んで、妥当性をしっかりと確認しないといけないんですよ。
それはきちんと出来てないと思いますし、詳しく書き出すときりがなかったり、ある種責任逃れ的な面もあるかも知れません。。
・・ということでリンク先は読まれなくていいのですが、もしも読んで間違いを発見した時には是非ご一報下さいね。
タイトル | 移植した歯肉の安定は、エムドゲインを使用したとしても難しいのでしょうか? |
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質問者 | あきさん |
地域 | |
年齢 | 30歳 |
性別 | |
職業 | |
カテゴリ |
歯周病(歯槽膿漏)治療 審美歯科治療(歯茎) 歯周病関連 専門的な質問その他 歯科治療用の薬 歯茎が下がった(歯肉退縮) エムドゲイン |
回答者 |
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- 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
- 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
- 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。