歯科医です。カリエスリスク判定は絶対必要なのですか?

相談者: トマスさん (51歳:男性)
投稿日時:2010-07-27 13:25:00
田舎の歯科医です。

来院する患者さんは成人がほとんどです。

つい最近、熊谷先生の講演を聴講して、カリエスリスク判定のサリバテストは必ず行うことになっていることを知りました。


そこで素朴な疑問なのですが、判定される8つの項目ですが、患者の努力で改善できるのは、プラークの量、フッ素の使用、飲食回数の3つだと思います。

乳酸桿菌数は象牙質ウ蝕の治療で減少しますが、これは歯科医師が治療するしかないと思います。

虫歯の経験(DMFT歯数)、唾液の緩衝能、唾液の量は患者自身の努力でも歯科医師の治療でもほとんど変化しないと思います。

ウ蝕菌比率は3DS等を行うと一時的に減少するそうですが、これも3カ月で元の比率に戻ることが多いと聞いています。



それでは、カリエスリスク判定でハイリスクの患者とローリスクの患者に対して異なる対応をするかと言うと、どちらの患者にもセルフケアで正しいブラッシングとフッ素の使用を指導し、間食を減らすように勧めるのが普通の対応だと思います。

歯周メインテナンスの患者が大多数の歯科医院ではカリエスリスクが高かろうが低かろうが3カ月毎のメインテナンスで歯磨きチェック、歯肉縁上縁下のデプラーキング・デブライドメント、フッ素塗布を行うのでは無いでしょうか?


歯周治療が相対的に多い私の歯科医院では、サリバテストが絶対に必要だと言う(現実的な)理由が良く分からないのです。

どなたか納得できるご教示をお願いします。


もう一点気になるのは、虫歯予防で世界的に有名なアクセルソン先生はサリバテストを必ず行っているのでしょうか?

さきほどアクセルソン先生著「本当のPMTC」を注文したのですが、アクセルソン先生がサリバテストを推奨している文献をご存じの先生がいらっしゃいましたら、お教え下さい。


回答 回答1
  • 回答者
回答日時:2010-07-27 13:52:07
以前は、お子さん、お母さんの虫歯予防のモチベーションを高めるために唾液テストをやってましたが、あんまり決定的な意味を持つ検査でもないと思い始めいつしかやらなくなりました。

いまは、お子さんの予防メニューは
 1、脱灰再石灰化の話。
 2、間食指導
 3、歯磨き指導
 4、歯医者での定期チェック
の4項目で、その中には唾液テストは入っていません。

回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2010-07-27 17:28:56
もしよろしかったら、歯界展望2009年10月号ー12月号に連載されている「北欧予防歯科物語ーマーロウ先生の教え」のシリーズで、10月号ー12月号にある「マーロウ先生のリスク論」1−3を読んでみて下さい。
疑問が解決されるかもしれません。


ちなみにアクセルソン先生は別に推奨はしていないと思います。

カリオロジーのゴッドファーザー、Bo Krasse先生も「スクリーニングとして行え」とは一言も教えてませんでした。
「適応症があったら使え」でした。

回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2010-07-27 19:27:59
まずは用語の確認をさせていただきます。

サリバテスト=カリエスリスク評価 ではありません。
サリバテストはカリエスリスク評価の一部の項目です。


私の私見として、カリエスリスク評価はカリエスの治療や予防を必要とする患者には全員に行う(但し必要な項目だけ)。

これは比較的多くの先生方が無意識に行っている行為だと思います。

その上で、必要があればサリバテストを行う。
但し、サリバテストを行わなくても、それに変わる項目でも判定はできる。


以上が普通の開業医が診療の合間に勉強して得た結論です。
大野先生のようにカリオロジーを専門に勉強したわけでは有りませんので参考までにしてください。



それよりも、有名な先生の言われることがすべて正しいのか、人に聞くのではなく、ご自身で調べて判断されるほうが良いと思います。


参考図書

Dental Caries: The Disease and Its Clinical Management Ole Fejerskov Edwina Kidd

http://www.amazon.co.jp/Dental-Caries-Disease-Clinical-Management/dp/1405138890/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=english-books&qid=1280225145&sr=1-1



Essentials Of Dental Caries Edwina A. M. Kidd

http://www.amazon.co.jp/Essentials-Dental-Caries-Edwina-Kidd/dp/0198529783/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=english-books&qid=1280225145&sr=1-2




>歯周メインテナンスの患者が大多数の歯科医院ではカリエスリスクが高かろうが低かろうが3カ月毎のメインテナンスで歯磨きチェック、歯肉縁上縁下のデプラーキング・デブライドメント、フッ素塗布を行うのでは無いでしょうか?


これも、大多数の医院で行われているからといって正しいわけではないと思います。

むしろ、大多数の医院ではメインテナンスの本当の意義がわかっていないのではないでしょうか。

回答 回答4
  • 回答者
回答日時:2010-07-27 20:14:09
熊谷先生の話は何年か前に私も聞きました。

あのお話しの中で患者さん一人一人口の中の環境、生活環境が違うので、患者さん各々似合わせた、予防プログラムを作らなければならないと話されていました。

その予防プログラムを作成するに当たって資料がないと立てることができませんよね。
その一助としてサリバテストをすると話しています。


根本的に熊谷先生は「歯の喪失の原因はむし歯にある。」と話されています。

やることはブラッシング指導、プラークコントロール、大差ないとは思います。

ただ、MI治療を前面に打ち出している診療所なのでう蝕の管理をする上で、必要なデータをそろえたいのではと、私は受け取りました。
積極的にう蝕を切削しないとしている熊谷先生ならではの考えではと思います。


先生の求めている物とは離れていると思いますが、僕自身がお話しを聞いた感想を書きました。

回答 回答5
  • 回答者
回答日時:2010-07-27 23:21:57
>その予防プログラムを作成するに当たって資料がないと立てることができませんよね。
>その一助としてサリバテストをすると話しています。


ほとんどの患者さんはサリバテストがなくてもカリエスリスク評価を行って、予防プログラムを作成することは可能だと思いますが。

ルーティーンに行わなければいけない理由にはならないと思います。

回答 回答6
  • 回答者
回答日時:2010-07-28 02:36:11
こんばんは。

カリオロジーを学んだ先生方が回答された後なのでもう何も書くことありませんが^^;



カリエスリスク判定にしても、ペリオリスク判定にしても、絶対必要ですし、多くの先生や勉強している衛生士なら自然に毎日していることですよね。
先生もそうだからこその率直な疑問なのだと思います。

治療痕が多い、30代なのに歯がぐらぐらしている・・みたいな。



でサリバテストや他諸々については、した方が何かの役に立つと思ったときにすればいい、というのが学術的な解答かと思います。

こういったことが日本の歯学部では系統立てて教育されてきてない様に感じますので、小牧先生が推薦された、欧米の歯学部で使用されている様なカリオロジーの教科書を読むというのはとても大切なことだと思いますよ。



それと日本の場合、というかどこの国でもですが、学術的なこととは別に、社会経済的な背景も運用には絡んでくると、個人的には感じています。

日本では目で見て問診してリスク判定しても自費にはなりませんが、サリバテストをしたり、何か薬を使えば・・と言う見方も出来ますよね。
(良いか悪いかは別として)


あるいは衛生士が不足していたり、育てるのが面倒だったら、いっそ一律でマニュアル化・システム化してしまうとか。

時間も予算もない中の、効率的なモチベーション方法として捉えたり、その手技が広まることで誰が得をするかとか・・

そういうことも考えながら勉強すると、色々整理できる様になりましたよ、個人的には、ですが。



すみません、釈迦に説法かと思いましたが、なんとなく書いておきたかったので・・。

マーロウ先生はとってもお勧めです。

回答 回答7
  • 回答者
回答日時:2010-07-28 04:57:58
トマスさまおはようございます。

我々歯科医は患者さんのお口という切り口で、患者さんを理解する能力が必要だと考えています。

御存知のようにむし歯歯周病は生活習慣という背景と切り離すことは出来ません。

患者さんのお口の中をじっくり観察してそこから患者さんの生活背景がわかるのと判らないのとでは、患者さんへのアプローチが全く違ったものになって来るでしょう。


現在医科でも多くの臨床検査が実用化されています、それを否定するつもりはありませんが患者さんとしっかり向き合って、そこから得られる情報をしっかり受け止めることも必要だと思います。

手当てという言葉があります、患者さんの体に手を当てて読み取るという意味のように思います、このような態度も必要だと考えています、検査の数値でしか判断出来ないといいうのもどうかなと思います。



個人的には患者さんのお口に中をしっかり観察し、そこから患者さんの現在までの病歴や現在の病状を理解したうえで丁寧なインタビューをすることが大切ではないでしょうか。

患者さんが御自身の生活習慣の問題に気づかれたら行動の変容が起きてきます、そうすれば必ずお口に中に変化が現れてきます。


これをしっかり受け止めてかかわりを深めていくならむし歯の再発の可能性は低くなってきますし、歯周病はよくなってきます。

このようなアプローチではカリエスリスク判定はするまでも無いと考えています。

回答 回答8
  • 回答者
回答日時:2010-07-28 13:41:49
トマス先生


諸先生方が丁寧に解説してくださいましたね。
私も勉強になります。


歯周治療が相対的に多い私の歯科医院では、サリバテストが絶対に必要だと言う(現実的な)理由が良く分からないのです。


熊谷先生に限らず、どの先生の講演でも「あくまで参考」として考えた方が良いと思います。
講義も論文も必ずバイアスがかかっています。




トマス先生が必要性に疑問を感じるなら実施する意味は無いと思います。
**先生信者で同じじゃなきゃ嫌だと盲信するなら別ですが。


ご参考まで・・・

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: トマスさん
返信日時:2010-07-29 13:40:04
諸先生方のご教示ありがとうございます。

私の質問の仕方が悪かったと思います。

あまりにもXX先生のシステムが絶対だという雰囲気を感じて少し感情的になっていました。

カリエスリスク判定の方法の一つとしてサリバテストが有るのですね。

良く考えれば当たり前のことですね。


私も年齢の割にDMFT歯数が高いとか、根面カリエスが多いとか、薬が原因と思われるドライマウスとか、当然のことセルフプラークコントロールが芳しくないとか、問診で過去の治療経過を聴いた上で

アナログですが、

『Aさんは虫歯になりやすいようですね。
歯の磨き方を衛生士がもう一度ご説明致します。』

『歯の根っこが出てくるとそこは虫歯ができやすくなりますから、お家ではフッ素入りのジェルを根っこに染み込ませるように一日2回は使って下さい』

『ちょっ心配なので3カ月毎でしたが、次は1カ月でいらして下さい。』

などのアドバイスをしたり、メインテナンスの間隔を短くするとか日々行なっていることです。



そう考えるとメインテナンスをしている歯科医師でカリエスリスク判定を全くしていない歯科医師はいないと思います。

ただアナログ判定より、数値とチャートになると、患者さんの理解が得られ易く、動機づけがより行いやすくなると思いました。


自分の不勉強を恥じ入るばかりです。

自分なりに検索して歯周病リスク判定方の一つであるOHISの文献を見つけて読んで見ました。

確かに患者に分かりやすい絵やグラフでリスクを明示化することの大切さを感じました。


それと大野先生が歯界展望に寄稿なされた「マーロウ先生の教え」は直ぐに取り寄せて読んでみます。

皆様ありがとうございました。
回答 回答9
  • 回答者
回答日時:2010-07-29 14:40:11
トマス先生

>ただアナログ判定より、数値とチャートになると、患者さんの理解が得られ易く、動機づけがより行いやすくなると思いました。

>確かに患者に分かりやすい絵やグラフでリスクを明示化することの大切さを感じました。

医院側から情報を分かりやすく提供することは重要です。
それ以上に、患者さんがその情報を得たいと思っているかどうかが重要だと思います。

「自分のカリエスリスク・歯周病リスクを知りたい」という欲求がある患者さんに「分かりやすい情報」を提供してこそ意味が生まれます。



2009年クインテッセンスvol.28〜に山田晃久先生が連載した「明日から使えるDental Interview講座」が参考になるかと思います。


ご参考まで・・・

回答 回答10
  • 回答者
回答日時:2010-07-29 14:52:18
医学は「学問」なのですが、それを臨床に適用する際には「哲学」になるんだなぁ…と、最近強く感じます。

診断一つとっても本当に奥が深いですよね。

勉強しても勉強しても、どんどん新しい発見がある楽しい仕事です^^;

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: トマスさん
返信日時:2010-07-29 18:26:58
杉原先生のおっしゃること、まことにごもっとも。

リスクを知ることが患者さん自身にとって価値ある情報であることを気付かせることが難しい。


田尾先生、私は患者と共に価値を生み出すことが予防を重視する歯科医師の仕事のような気がします。

漠然とした感想ですみません。


先生方のお考えを読ませて頂くと、歯科医師として初心に帰った気がします。

ありがとうございました。


あとは自分で考えます。
とりあえず問題解決です。
回答 回答11
  • 回答者
回答日時:2010-07-29 18:44:42
トマス先生

解決済みということですがもうひとつ付け加えて。

予防において過去のデーターを客観的に残しておくことは重要です、その点からも数値化しておけば比較し変化を把握しやすくなります。


もうひとつ、自己宣伝のようですが、クインテッセンス出版の月刊歯科衛生士の2006年8月号ー2007年3月号の”はじめよう予防正しく学ぼうカリオロジー”も読んでみてください。

少し古いかもしれませんが、それなりにまとまっていると思います。





田尾先生

>医学は「学問」なのですが、それを臨床に適用する際には「哲学」になるんだなぁ…と、最近強く感じます。

>診断一つとっても本当に奥が深いですよね。


日本の歯科医学教育には哲学・倫理・診断学が欠けていると、いつも大野先生と話題になります。




タイトル 歯科医です。カリエスリスク判定は絶対必要なのですか?
質問者 トマスさん
地域 非公開
年齢 51歳
性別 男性
職業 非公開
カテゴリ 虫歯予防
予防関連
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
  • 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。

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