歯周病治療におけるSPTについて教えて下さい(歯科大学生より)

相談者: ナカさん (22歳:男性)
投稿日時:2010-10-02 23:25:09
歯科大学に通っている学生です。

歯周病治療を行って、4ミリ以上のポケットが残存していても、症状が安定している場合にはSPTに移行すると思うのですが、なぜポケットが残存しているにも関わらずポケットを積極的に閉鎖しようとしないのでしょうか?

やむなくポケットが残ってしまうというのは、どのような場合なのでしょうか?

また、症状の安定とはどのように判断するのでしょうか?

最後に、治癒後のメインテナンスとSRPとは、具体的にどのように違うのでしょうか?

教科書等で調べても分からなかったため、質問させて頂きました。

ご返答よろしくお願い致します。


回答 回答1
  • 回答者
回答日時:2010-10-04 01:36:07
こんばんは。

国家試験と保険のルールと医学的な話と、似ている様で少しずつ違いますから、少し説明に悩めますが・・。

アドバイスとしては、歯周病の症状についてはポケット値で見るよりもBOPを中心に見た方が良いですよ。

ポケット5mmでもBOP−(≒炎症がない)と言う状態はあります。

それとエナメル質は組織学的に周囲の歯肉と結合しませんので、歯牙顎骨の傾斜によっては病的ではない深いポケットが形成されます。

良い例が、半埋伏歯ですね。

それとポケットの閉鎖(?)は、そんなに思い通りには実現出来ません。
というか物凄く難しいです。

同じSRPでも、一般医と専門医では深いポケットほど結果が大きく異なります。



>治癒後のメインテナンスとSRPとは具体的にどのように違うのでしょうか?

SPTのことだと思いますが、主にはメインテナンスとサポーティブセラピーと言う言葉の違いですね。

ここの説明は非常にややこしくなるのですが・・主には今の保険のルールに関わる話の様な気がします。

メインテナンス、と言えば健康な人が対象になるので保険給付外ですし、セラピーと言う言葉を使えば治療ですから、疾病を相手していることになって保険給付の対象になる、という理屈なのかも知れません。(よく分からないのでいい加減な話です)

真面目な臨床の話としては、同じ行為に対して呼び方と思想が変化してきただけです。

「メインテナンス」よりも「サポーティブセラピー」 の方が、なんだかかっこいい様です。
ただ個人的には、SPTでは患者さんにかえって意味が伝わりにくいと思うんですが。



でも良いところに目をつけていると思いますよ。

私は卒後歯周病科に残りましたが、TBI(OHI)やSRPなどは通常衛生士業務で、他ではなかなか経験できませんから、とても良かったと思っています。

歯周治療はあらゆる治療の大切な基礎の部分になりますので、今は今出来る勉強を頑張って、臨床に出てからは臨床に出てからの勉強を頑張って、良いドクターになって下さい。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ナカさん
返信日時:2010-10-05 17:07:09
ご返答ありがとうございます。
ご指摘の通り、SRPはSPTの誤りです。

加えて質問させて頂きます。

症状が安定していると判断する際の、条件の様なものはあるのでしょうか?(ポケットの深さが一定期間変わらない、BOPがマイナスである等)

また、SPTの対象患者の中に、本人が外科的手術を希望しない、もしくは全身状態が理由で外科的手術を行えない患者が含まれると思うのですが、実際このような患者はよくいるのでしょうか?

それとも少数派なのでしょうか?

ご教授よろしくお願い致します。
回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2010-10-06 01:29:20
>症状が安定していると判断する際の条件の様なものはあるのでしょうか

国試用の解答については過去問を参考にして、それで分からない場合は学校の先生に相談して下さい。



保険のルールとしては、【SPTの対象】として、

?中等度以上の歯周病患者:骨吸収が根の長さの1/3以上、歯周ポケットが4m以上、根分岐部病変前歯部は除外)を有するもの
?一時的な病状安定:歯周組織検査4の検査結果で、歯周組織の一部に病変が進行停止して病状が安定している深いポケット、根分岐部の残存、歯の動揺が認められる状態

だそうです。
・・意味は知りません。



臨床的には、

>(ポケットの深さが一定期間変わらない、BOPがマイナスである等)

と言う理解でおおよそ良いと思いますよ。

ですが、

・一定期間ってどれだけ?
・リスクの高い人と低い人は同じでいいの?
・BOPマイナスだとどれだけの意味があるの?
・喫煙者や糖尿病は関係ない?
・検査者の差や、プロービング圧の違いは?

の様に、様々な疑問が沸いてくると思います。

これらをひとつひとつ紐解いていって、自分の臨床に当てはめていくというのが臨床家の楽しみですね。
(因みに、どんな患者さんに対しても簡単に当てはめられる様な、はっきりとした条件は定義することが出来ません。多くの場合は患者さん個人のリスク評価が重要になるかも知れません)



では問題。

SPT(※呼び方はリコールでもメインテナンスでもいいです)中のBOPと歯周炎の進行の関連性を調べた前向き研究の話。

コチラ→Absence of bleeding on probing. An indicator of periodontal stability.
Lang NP, Adler R, Joss A, Nyman S.
J Clin Periodontol. 1990 Nov;17(10):714-21.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2262585
中等度〜重度の歯周病で治療を受けた41人に対して、2〜6ヵ月ごとのSPTを2年半行った結果

部位ごとに、【BOP+/-】と、【2年半後、2mm以上のアタッチメントロス発生の有無】を見たところ 

感度 29%
特異度 88%
陽性的中率 6%
陰性的中率 98%

だったそうです。



さて、この結果から、何が言えるでしょうか?
(オリジナルの文献が見つけられずに書いているので、自分的には不十分なんですが・・)

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ナカさん
返信日時:2010-10-06 22:35:34
陽性的中率が6%であることから、いくらBOPが+であっても、アタッチメントロスが起こる可能性が高いとは言えない。一方、陰性的中率が98%であることから、BOPが−であればアタッチメントロスが起こる可能性は非常に低いと言える。

つまりBOPが+という検査結果は必ずしも歯周病の進行予測に有用であるとは言えないが、BOPが−という検査結果は歯周病の進行予測に非常に有用であると言える。

ただし感度が29%ということから、陽性を見逃している可能性が高いので、実際の陽性的中率は6%よりも上である。

自分なりの答えは以上ですが、いかがでしょうか?
回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2010-10-07 00:47:56
ナカさん、今晩は。


>ただし感度が29%ということから、陽性を見逃している可能性が高いので、実際の陽性的中率は6%よりも上である。

前半の部分はいいのですが、この”実際”とはなにをさしているのでしょうか。


実際とは、自分自身の臨床に当てはめた場合ということでしょうか。

もしそうだとすれば、中等度以上の歯周病患者しか見ない歯周病専門医ならそう、この結果と同じになるかもしれませんが、一般の歯科医でしたら、初期の患者の割合が増えてくるため、有病率が低くなり、陽性的中率はもっと低くなると思いますが。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ナカさん
返信日時:2010-10-07 19:00:53
自分はまだ学生で、歯科医師ではありませんので、自分自身の臨床に当てはめたということではないです。

感度が29%ということは、例えば100人歯周病の患者がいた場合、検査では29人しか歯周病であると判定されないという風に自分は解釈して、感度が29%の場合に陽性的中率が6%ならば、感度が100%であれば陽性的中率は約20%になるかなと考えました。

それが、実際の陽性的中率は6%よりも上であると書いた理由です。

ただ元々後半部分の考えに関してはあまり自信がなかったです。
回答 回答4
  • 回答者
回答日時:2010-10-07 19:49:41
おっと。

ややこしくなりましたが、おおよそ大丈夫ですよ^^;



小牧先生が指摘して下さっているのは、

>中等度〜重度の歯周病で治療を受けた41人に対して、2〜6ヵ月ごとのSPTを2年半行った結果

↑ここの部分にもきちんと注目した方がいいですよ、というアドバイスです。・・だと思います。



回答2の、

>(どんな患者さんに対しても簡単に当てはめられる様な、はっきりとした条件は定義することが出来ません。多くの場合は患者さん個人のリスク評価が重要になるかも知れません)

にも共通しています。



感度や特異度などは、検査を行う対象によって、あるいはカットオフポイントを変更する(例;アタッチメントロスを2mmではなく1mmに設定、2年半後ではなく5年後にする)などで、結果が全く変わってしまいます。

例えば、保険では混合歯列歯周組織検査と言う検査もあるのですが、この場合のBOPの感度はどうなるでしょうか?

あるいは、ハイリスクな歯周病患者ばかりが集まって行列を作る様な専門医院の、初診時のBOPの感度はどうなるでしょう?

これは統計学ですが、毎日の臨床に確実につながる知識でもあります。



屁理屈に聞こえるかも知れませんが、

>例えば100人歯周病の患者がいた場合、

・・としてしまうなら、対象が【中等度〜重度の歯周病で治療を受けた41人に対して、2〜6ヵ月ごとのSPTを2年半行った結果】とは異なってしまい、有病率が100%ですので、その後いつまで何をするかにもよりますが、おそらく感度は上がるでしょうね。



>ただし感度が29%ということから、陽性を見逃している可能性が高いので、実際の陽性的中率は6%よりも上である。

【中等度〜重度の歯周病で治療を受けた41人に対して、2〜6ヵ月ごとのSPTを2年半行った結果】においての陽性的中立は、Lang先生が嘘をついていない限り、6%、ということです。

最後のこの2行が、「蛇足」でしたね。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ナカさん
返信日時:2010-10-07 21:00:41
>例えば100人歯周病の患者がいた場合、

とは自分の、感度に対する理解を説明するために、あえて分かりやすいと思う例えを言っただけです。

感度というものは有病率が100%の集団を検査した時に、何%の確率でその病気を発見できるか(陽性と判断できるか)というものではないのですか?

では感度29%、特異度88%というのは今回の問題においてはどのような意味を持つのでしょうか?
回答 回答5
  • 回答者
回答日時:2010-10-07 22:14:28
感度とは、陽性全体に対する真の陽性の割合。

2年半後、2mm以上のアタッチメントロス発生したもののうち、29%でBOP+であった。

残りの、71%はBOP−だったということです。


感度、特異度はその検査が持つ固有の値。


陽性的中率は、BOP+であったもののうち、実際に2mm以上のアタッチメントロス発生したものの割合。

これは、同じ検査基準を用いても、有病率によって変化します。



2×2表で説明するとわかりやすいけど。

教科書に載ってないかな。
名前はっきり覚えてないけど、興味があるなら、斉尾先生の、「EBMの玉手箱」あたりが薄くて、簡単にわかりやすく解説してると思うけど。


>では感度29%、特異度88%というのは今回の問題においてはどのような意味を持つのでしょうか?


これは人それぞれ、解釈が違ってくるかもしれません。

私なら

BOPがーなら、そのままSPTを続けるが、もし+が何回か続くようなら、もう一度問題点を見直し、状況に応じて、OHIやデプラーキング、デブライドメント、外科などの処置を行うでしょう。

と、なります。


これは今のところ確実な基準は無いので、それどれの先生が何がしかの基準を持っておいたほうがいいかもしれません。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ナカさん
返信日時:2010-10-07 23:05:36
>感度とは、陽性全体に対する真の陽性の割合。

???
感度とは、本当に病気である人に対する、検査陽性の人の割合ではないでしょうか?
回答 回答6
  • 回答者
回答日時:2010-10-07 23:36:39
>感度とは、本当に病気である人に対する、検査陽性の人の割合ではないでしょうか?


そのとおりです。
ややこしい書き方をしてごめんなさいね、

訂正します。

感度とは、病気の人の中で、真の陽性の割合。


”検査陽性の人の割合”
病気の人だけを対象にすれば、この表現でいいかもしれませんが、実際行う場合は、病気で無い人も含んでいると考えて、”真の陽性”のほうが適切でしょう。


病気 + −
検査 + −

それぞれ組み合わせて

真の陽性a、偽陽性b、真の陰性c、偽陰性d

感度=a/(a+d)
特異度=c/(c+b)

陽性的中率=a/(a+b)
陰性的中率=c/(c+d)




タイトル 歯周病治療におけるSPTについて教えて下さい(歯科大学生より)
質問者 ナカさん
地域 非公開
年齢 22歳
性別 男性
職業 非公開
カテゴリ 歯周病関連
その他(その他)
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
  • 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。

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