折れた歯の根を伸ばして差し歯にする治療 (エクストルージョン)

相談者: ナヌさん (33歳:女性)
投稿日時:2014-04-01 02:32:57
上の左前歯1番が折れました。
歯が折れた直後の断面は、茶色でした。


今は茶色の部分を歯科医に削ってもらっており、その歯を削ってもらった後の歯の根の長さは、X線で見ると13mmです。
口を開けた状態で、正面から口の中を見ても、歯は見えません。

この歯は、10年以上前に神経を抜かれています。
この歯の隣の右1は神経があります。
左2の神経はありません。



私は33歳ですので、インプラントブリッジはもっと後に選択肢として残しておきたいと思っています。
そこで歯科医に提案して頂いた方法は、13mmある歯の根を3mm伸ばして、そこに10mmの差し歯をするというものです。
(歯の根:出ている部分=1:1が良いそうです。)

デメリットとしては、3mm伸ばすという矯正治療に15万円必要になることと、差し歯と一緒に歯の根元も取れる可能性があることです。

メリットとしては、3mmのばさずに差し歯をつける方法よりも、折れにくいという点です。


この方法の他には、3mm伸ばすという矯正治療をせずに、そのまま差し歯をつけるという方法です。
この治療は、矯正をしない分、15万円安い治療となります。

ただ、土台が少ない所に差し歯をつけるので、また折れてしまう可能性が、前者よりも高くなるそうです。



そこで質問です。

@
前者の治療は、私の場合の治療法として、スタンダードであるかどうか。

A
前者と後者、どちらを選択する方が多いのか。

B
それぞれのメリットとデメリットとして、上記以外にも考えられるかどうか。

C
矯正15万円は妥当な値段なのかどうか。

D
セカンドオピニオンに行きたいと思っているのですが、またX線撮影をされるのが嫌なのでその旨を歯科医に言おうと思うのですがそのようなワガママは可能かどうか。


よろしくお願いします。
特に@とAは、インターネットで調べても、答えが見つかりませんでした。
@に関しては10年以上も前からエビデンスとしてあるらしいのですが、そのエビデンスはどこにも載っておらず、とても不安になり、今回質問をさせて頂きました。


盛りだくさんで申し訳ありませんが、何卒よろしくお願い致します。


回答 回答1
  • 回答者
回答日時:2014-04-01 05:51:25
エクストルージョン」という言葉で検索をかけるとわかると思いますよ。

結論としては、是非行うべきだと思います。
主観ですが、セカンドオピニオンを求める場合は、現在の主治医の先生よりも優秀な(という表現が良いかは分かりませんが・・??)先生でないと無意味ですし、割合的には少し難しい様に思います。


一応ご質問の内容について回答もしておきますが、正直このご質問もあまり意味がない気がします。

悩むとしたら、ナヌさんが15万というコストと多少のリスクをかけてでも、出来る限り良い状態で今の歯を延命しようという意志があるのかないのか? の一点に尽きるのではないかと、個人的には思います。



>@について

国内においては保険適用外であり、行える歯科医師も非常に限られるため、スタンダードとは言えないと思います。



>Aについて

上述の理由で、多いのは後者と思います。
もしくは抜歯を選択するのも、教科書的には正しいかも知れません。



>Bについて

十分な説明を受けられていると思います。



>Cについて

自由診療なので相場の様な概念は難しいのですが、当院の金額と較べてもほぼ同じですし、個人的には妥当だと思います。



>Dについて

レントゲン写真上での判断が必須ですから、今の主治医の先生がお持ちの写真をお借りする必要があります。




>特に@とAは、インターネットで調べても、答えが見つかりませんでした。
>@に関しては10年以上も前からエビデンスとしてあるらしいのですが、そのエビデンスはどこにも載っておらず、とても不安になり、今回質問をさせて頂きました。

エビデンス(科学的根拠)というのは一般の方や、専門の人間でも簡単には見つからないですよね。
相当な知識が必要です。

簡易的に理解するためには、「フェルール」とか「帯環効果」というキーワードを使って検索されると良いかと思いますが、日本語に限ればほとんどこのサイト内のページがヒットしてくると思います。。


もの凄くざっくりと科学的っぽいご説明をするならば、今回の"フェルール"が確保出来ない状況から、今説明を受けておられる"エクストルージョン"(と、おそらく"クラウンレングスニング"も)を行う場合と行わない場合で、歯の割れる確率は文献的には(エビデンスとしては)おそらく10%も歯根破折のリスクは変わらないと思います。
もしくは正確な臨床的数値は出てこないと思います。

ところが非常に臨床的、経験的なことを言うと、

綺麗に削りにくい+型が綺麗にとれにくい=精密な被せものが作られにくい→プラークが溜まり易くなる→歯肉炎症は高確率で見られる様になる→悪くすると2次カリエス、もしくは根尖病変を引き起こす(≒抜歯)or運が悪ければ歯根破折もあり得る

という図式が成り立つと、注意深く診療をしている歯科医にならおそらく共感して貰えると思います。
エビデンスと臨床の、難しい一面でもあり職業としては楽しい一面でもあります。



診断、治療方針、説明内容、患者さん(ナヌさん)の理解度からは、おそらく良い先生に診て頂けているのではないかな・・と、感じます。



「もう抜歯しかないです」
インプラントがお勧めです」

もこの場合間違いとは言えません。
そしてそう宣告してしまう方が技術的にも責任としても遥かに楽で、お金にもなるというのがこの仕事の怖いところとも思います。。



お大事にどうぞ。

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回答 回答2
  • 回答者
藤森歯科クリニック(兵庫県西宮市)の藤森です。
回答日時:2014-04-01 15:52:25
@日本国内では比較的多く行なわれているように思いますが、海外では、ほとんど行なっていない国もあるようです。
スタンダードであるか否かを一言で語るのは難しいと思います。


A医療機関によって差があると思います。
私や周囲の先生なら、エクストルージョンを含む何らかの処置を選択される方が圧倒的に多いと思います。


B折れた断面の形によっては、’意図的再植’が有効な場合はあります。
抜歯した後、回転させて(通常180度)元に戻すものです。時折、行ないます。


Cその当たりの費用設定が多いようには思います。
妥当と言えるかもしれません。


Dレントゲン写真の貸し出しが必要ですね。セカンドオピニオンを求めることは患者さんの当然の権利なはずです。




歯根の長さが10mmになるとの事で、歯冠長(歯茎から出た部分)と前歯噛み合わせ・重なり具合等は、予後のための重要な要因になろうかと思われます。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ナヌさん
返信日時:2014-04-04 16:21:40
ノアデンタルクリニック・ホワイトエッセンス
渡辺 徹也 先生

お世話になります。
直ぐにお返事を頂けた事、本当に感謝しています。


エクストルージョンクラウンレングスニングを調べた結果、私がこれから行う治療そのものでした。
先生のおかげで、事前に治療の内容を調べてから、担当の先生とのICに臨む事が出来ました。
本当に有難う御座いました。


しかしながら、重ね重ね申し訳ありませんが、渡辺先生にもう一点教えて頂きたい事が御座います。

渡辺先生は、エクストルージョンをした場合とそうでない場合では、歯根歯折は10%しか変わらないと仰いました。
それが何かの文献であれば、ぜひその文献がどれなのかを教えて頂けると嬉しいです。

pubmedで様々な英ワードで検索しましたが、見つける事が出来ませんでした。
何年で折れたのかor折れた理由は何だったのか、折れ方等々、自分でも読んでみたいと思っています。


個体差があるのは重々承知しています。
15万円の治療費は、いまの私にはとても苦しいでのすが、一生付き合う歯を、最善の方法で治療したいと思っており、もし論文上で有意差があるのでしたら、15万円の差を、そこに見出したいと考えています。

実はまだふんぎりがついていません・・・。


お忙しい中申し訳ありませんが、もし可能でしたら、何卒宜しくお願い致します。
相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ナヌさん
返信日時:2014-04-04 16:37:16
藤森歯科クリニック
藤森 隆史 先生

藤森先生、お忙しい中、ご回答有難う御座います。
藤森先生にも質問をさせて頂いても大丈夫でしょうか?


担当の先生が仰るには、私の噛み合わせは、下の前歯が上の前歯の根元に何度も噛む刺激を与えるので差し歯にとっては良いかみ合わせではないそうです。

そこで、差し歯をつけた後にはナイトガードを付ける事になっています。
(全ての歯の矯正には、お金と時間がかかるそうです。)


そのような状況であるところ、藤森先生が

歯根の長さが10mmになるとの事で、歯冠長(歯茎から出た部分)と前歯の噛み合わせ・重なり具合等は、予後のための重要な要因になろうかと思われます。

上記のように仰いました。
調べてみると、前歯1の歯根は平均12mmときいていますが、歯根10mmになることは、とても短い部類になりますか?


申し訳ありません。
もしお手空きの時がありましたら、よろしくお願いいたします。
回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2014-04-04 18:16:31
クラウンレングスニングをした、しないの差ではなくて、目的がフェルールの付与ですから、ferrule effect とか root fracture のキーワードで検索されると良いかも知れません。

ただ土台(post and core)の材質やそれを固定するセメントの種類、歯質の高さだけでなくて厚み、歯種、咬合様式等の交絡因子が多すぎますし、根破折しそう・・という実験系を作ること自体に倫理的な問題が出てきますので、あまりこれと言った論文はないのではないかと思います。



珍しいin vivoで、319本のコア、5年の論文です。
多分全文読めると思いますが

5-year follow-up of a prospective clinical study on various types of core restorations
Nico H. J. Creugers et al. Int. J. Prostho. 2005; 1(18): 34-39
http://www.quintpub.com/userhome/ijp/ijp_18_1_Creugers_6.pdf

・・で、5年ぐらいでそうそう何本もトラブルになる訳ではないので、全体のたった4%程度(10数本)の歯での比較ですからこれが信頼に足るのか微妙ですが、フェルールありの生存率(98±2%)に対してフェルールなしが(93±3%)という内容だと思います。


in vitroで

An in vitro study evaluating the effect of ferrule length on fracture resistance of endodontically treated teeth restored with fiber-reinforced and zilconia dowel systems
Begum Accayan J Prosthet Dent 2004; 92: 155-62

http://rtd-dental.eu/ES/pdf/Akkayan_%20An%20in%20vitro%20study%20evaluating%20the%20effect%20of%20ferrule.pdf


などもありますが、回答1にも書いた様に数値的にどうというよりも臨床的には明らかに付与しておいた方が安心、という実感はありますね。

あまりいい論文を知らないので、何かもっと分かりやすいのが見つかれば是非教えて下さいね。

1人の専門家がこの回答を支持しています  
回答 回答4
  • 回答者
回答日時:2014-04-04 18:29:16
と、藤森先生へのご質問への回答になりますが、歯根の長さの話は教科書的には確かにあるのですが、それこそエビデンスがありません。
生まれつき歯根がかなり短い方も時折見えますがそれで問題が起こることもありません。


目安としては分かりやすいので長さも見ることは見ますし、そういった説明は仕方としてはあるかと思いますが、実際のところフェルールほどは気にする必要はないと個人的には思いますよ。

それと少しややこしい話ですが、エクストルージョンをせずに作る場合よりはエクストルージョンをした場合の方が歯冠−歯根の差は小さくなって、歯冠歯根"比"としてはむしろ有利になりますので、そういった意味でもエクストルージョンはベターだと思います。

1人の専門家がこの回答を支持しています  
回答 回答5
  • 回答者
藤森歯科クリニック(兵庫県西宮市)の藤森です。
回答日時:2014-04-04 18:58:21
やはり、噛み合わせの深い(噛み合わせると、上の前歯が下の前歯を覆い隠す)ケースでしたか。

確かに10mm以下となると若干の不安は感じます。
私はあまり賛成しませんが、隣の歯との連結を考える先生もおられます。


しかしながら、仮に形態は似ていたとしても、前歯の使い方にはかなり個人差があるように思います。

今後のため、その破折断面を診られらた先生に、「どのような力がかかった可能性があるか?」を尋ねられ、生活習慣で改善すべきところは直されたら宜しいかもしれませんね。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ナヌさん
返信日時:2014-04-05 02:47:14
ノアデンタルクリニック・ホワイトエッセンス
渡辺 徹也 先生

お世話になります。
貴重な情報を有難う御座いました。


私は歯科治療に無知なので、知らない専門用語を調べながらでした。
しかし、知りたい事を幾つかですが、知る事が出来ました。

また、他の論文の解説もdiscussionで説明があり、助かりました。
とても感謝しています。
有難う御座います!


10年継続試験もあるようですが、Nも少なく残念でした。
今後、長期の試験結果が出るのでしょうか。
長期予後が、私が気になっているポイントです。

藤森先生も仰っていましたが、前歯の使い方でも長期予後は違うようなので、自分なりに気をつけたいと思います。




あと、in vitroのURLの掲載も、有難う御座いました。
読んで少しホッとしました。
私の歯根は、3mmよりも少し短いらしいのですが、それでも2mmはあるそうです。


また、渡辺先生の、

エクストルージョンをせずに作る場合よりはエクストルージョンをした場合の方が歯冠−歯根の差は小さくなって、歯冠歯根"比"としてはむしろ有利になりますので、そういった意味でもエクストルージョンはベターだと思います。

という臨床の意見もとても有難かったです。
ここについてはもう少し詳しく伺いたかったのですが、これ以上はご迷惑もおかけ出来ないので、一旦『解決ボタン』を押させて頂こうと思います。


素人の私に対して、これほど丁寧に質問にお答え頂け本当に嬉しかったです。

お世話になり、有難う御座いました。
心から御礼申し上げます。
相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ナヌさん
返信日時:2014-04-05 03:08:24
藤森歯科クリニック
藤森 隆史 先生

藤森先生、再度ご回答頂き、有難う御座います。
ご指摘の通り、私は噛み合わせが深いです。


歯のコンクールにも出てはいるので、歯並びは悪い方ではないようですが、ただ今後つくる差し歯にとっては負担をかけてしまう噛み合わせのようです。
それでナイトガードを提案されました。

私のまとまらない文章から、そこまで読み取って頂きさらにアドバイスも下さり、とても嬉しく感謝の気持ちでいっぱいです。

「どのような力がかかった破折の可能性があるか?」を必ず次回に担当の先生に聞いてみようと思います。




また、藤森先生は、

>10mm以下となると若干の不安は感じます。
>私はあまり賛成しませんが、隣の歯との連結を考える先生もおられます。

と仰いました。
もし可能でしたら、最後に

@どのような不安か
(歯が抜け易くなる事でしょうか)

A歯の連結とはブリッジを指すのか


につきまして、ご回答頂けますと幸いです。
三度、本当に申し訳ありません…。
よろしくお願い申し上げます。
回答 回答6
  • 回答者
藤森歯科クリニック(兵庫県西宮市)の藤森です。
回答日時:2014-04-05 10:29:09
@隣の歯などに比べて、若干、動揺が大きくなる可能性があります。
それ自体は生活の上でさほど問題とはならない場合も多いと思います。

しかし、人によっては癖で「フォーク(箸)を噛んでしまったら、動くようになった」と言って、しばしば来院される方もおられます。

天然歯でしたら暫間的に固定(1ヶ月以内に除去)し易い面はありますが、修復歯の場合は工夫が必要となります。
前述の生活習慣の改善は、このような事も含みます。



Aブリッジは欠損した歯を補うものですが、おそらく、考えておられるイメージ通りだと思います。
連結には賛否ありますから、担当の先生とは、よく相談なさってください。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: ナヌさん
返信日時:2014-04-05 13:04:37
藤森歯科クリニック
藤森 隆史 先生

ご返信、有難う御座いました。


@に関して、伺う事が出来て良かったです。
実は2ケ月矯正した後、1ケ月固定をするという説明を担当の先生から受けています。
固定する意義について、噛み砕いた説明分かり易かったです。


Aに関しては、ブリッジという解釈で良いと分かりました。
私は健康な歯をまだ削りたくないので、いま予定されている治療でお願いしようと思います。


最後の最後まで質問にお付き合い頂き、本当に有難う御座いました。
御礼申し上げます。



タイトル 折れた歯の根を伸ばして差し歯にする治療 (エクストルージョン)
質問者 ナヌさん
地域 非公開
年齢 33歳
性別 女性
職業 非公開
カテゴリ エクストルージョン(歯根廷出)
回答者




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