[写真あり] 前歯を破折。フェルールが得られない状態での今後について

相談者: まえヴぁさん (23歳:男性)
投稿日時:2015-01-09 16:57:11
先日、健康な前歯(右上1)に転んでひびを入れてしまい、ひびが神経のとこまで達しているとのことで、差し歯になることが決定しました(泥酔後気が付いたら、という点で宇多田ヒカルさんと同じ理由で折れた、と笑いのネタにできることくらいしか、転んで良かったことはありません。)。

破折部の治療をする為、添付画像の線に沿って歯を削り、折りました。フェルール効果を得られないのは一目瞭然だと思います。

今更出来る事と言えばただ破折の恐怖に怯え日々を過ごすことくらいしかないのですが、フェルール効果を得られない差し歯のトラブルが発生したものの平均寿命、全体としての生存率を知りたいので、統計なり体感上なりでもいいので、教えてください。

一応歯根破折にならずに平均寿命を迎える努力、例えば食事中に右上1を使わない、ランニングなど歯への負担が大きそうなものは避けるなど、はするつもりではいるのですが・・・。

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回答 回答1
  • 回答者
歯科医師の松山です。
回答日時:2015-01-09 17:54:29
結論から言うとフェルール効果は十分得られます。

心配なのは、フェルール効果を考慮せずに根元(歯頚部)からバッサリ削ってしまう歯科医が少なからずあるので、気を付けてください。

経験上歯根部の破折ヒビは、この様な破折の場合にはほとんどないことではありますが、一応配慮することは必要です。

回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2015-01-09 18:06:40
ご相談ありがとうございます。


確かにフェルールがあれば理想的です。
またそれを確保するために、矯正治療で引っ張り出したり、手術をして周りの歯肉を下げて差し歯にすることも良く行われています。

ただ、引っ張り出すと歯根が短くなり、差し歯の見た目の長さは一定ですから、力がかかる支点の位置が悪くなり弱くなることもあり得ます。

また、前歯の場合は見た目の自然感が歯だけでは無く、歯肉のラインにも健康的であると理想的ですから、手術のデメリットもあり得ます。


そして現実の多くの治療例では、フェルールなど確保できない歯が圧倒的に大多数です。
その場合、上記の治療のデメリットを呑んで治療するか、諦めるか、の二つなのでしょうか。

実際にはフェルールの効果が充分得られないとしても、それに準じた治療をすることは可能です。


ちなみに、私が大昔治療した症例の一つが、同じように転倒による破折した前歯でした。
その参考例のお話をしましょう。

しかも折れただけでは無く、その上、一度別の歯科医院で差し歯にしてあり、残った歯の部分も見えない程削られて、まるで木の切り株のように歯肉から上は全く残っていませんでした。

つまりどこにもフェルールなどかけらも残っていませんでした。
その差し歯をやり直しましたが、昔は私もヘタですし、今ほど型どりもセラミックの良い材料もありませんでした。

しかし当時大学の補綴学教室に在籍させて頂いていましたので、習ったとおり忠実に治療をした結果、結局39年以上経った現在も、一度も外れることは無く、歯肉が下がることも無く、無事に使えています。

たぶん他の人が見ても差し歯とは分らないでしょう。
ただ、最近差し歯以外の周りの歯がくすんできたのは年齢のせいですが、色の違いが少し出てきています。

その人はランニングも運動もなんでもしています。
ただもちろん差し歯はかばって貰っていますから、前歯でビールの栓を抜いたりしないようには話しています。

それ以降も差し歯は無数に作りましたが、もしうまくいけば20年30年は当たり前に長持ちすると実感しています。
私はフェルールが無いからというだけで抜歯したことなど一度もありません。



>土台は恐らくメタルコアです。


別に悪くないと思います。
その参考例も同じです。

しかし、土台は基礎として重要です。
例えば大きなビルの基礎は見えませんが、基礎が正しくて初めて長持ちします。

今まで、差し歯が外れて駆け込んできた方を無数に診てきましたが、大学で教わったとおりに治療できている、正しい土台を見たことがありません。

まぁ、だから外れたり、歯が割れたり、再発したりするのでしょうが。
正しくない土台は歯を守れないことはフェルールの有り無し以上に重要なことです。


長くなりましたが、フェルールが無くても諦めずにきちんと治療をして、メインテナンスを続ければ何十年と長持ちさせることは可能です。
一生歯を残すために予防医療は受けておきましょう。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: まえヴぁさん
返信日時:2015-01-09 18:51:50
松山先生、回答ありがとうございます。

すみません。
先ほどは急いでいたもので、絵が少々雑になってしまいました。
歯肉縁上に歯が残っていないのは同じなのですが、より現在の状態に近いものをupさせてもらいます。
此方の場合はどうでしょうか・・・。

歯肉縁下に欠損が及んでいてもフェルール効果を得られるのでしょうか。
歯肉を切り、全体を歯肉縁上に露出することにより、フェルール効果を得られるということでしょうか(最初の絵だと目に見える部分、歯冠部?が結構残っているように思われてしまいますので)。
それとも、歯冠部は、歯茎の下、歯肉縁下のほうにもあるのでしょうか。

質問ばかりですみません。

と、返信をしようしている間にさがら先生からも回答を得られ、また拝見しました(ので続けて返信させてもらいます)。

さがら先生、回答ありがとうございます。

やはりフェルールがない状態ということですかね。
フェルールを得るための手術等の知識も手に入れましたが、保険外であり、仮にフェルールを得たとしても、さがら先生がおっしゃるようなデメリットもあるとのことで、なかなかそういう手術を受けようとは思えずにいました。
特に、長期的な視点でみた場合、予後が良いとは限らないとの点が怖くて、怖くて。


>そして現実の多くの治療例では、フェルールなど確保できない歯が圧倒的に大多数です。

意外です。


>ちなみに、私が大昔治療した症例の一つが、同じように転倒による破折した前歯でした。
>その参考例のお話をしましょう。
>それ以降も差し歯は無数に作りましたが、もしうまくいけば20年30年は当たり前に長持ちすると実感しています。

生きる希望が湧いてきました。
前歯を折ってからこの数日、卒論にも手がつかないで、ずっと差し歯のことを調べたり、考えたりしては絶望していたので・・・。
差し歯になることが決まった上に、フェルールがないので。
中には、フェルールが2,3mm確保できければ差し歯にはせずに抜歯という先生もいるようですし。

ちなみに、うまくいく確率は、どの位かわからないでしょうか。
勿論、歯科医技工士の腕などによって異なるでしょう。
さがら先生の場合、で構いません。

実は私の周りにも、差し歯になることが決まってから知ったのですが、20年30年と差し歯生活を何の問題もなくしている人が何人かいました。
彼らが私を元気づけようとしてくれたのです。
ただ、話を聞く限り、彼らは十分な歯質が残っている状態で差し歯になった人で・・・^^;

あ、あと、質問の趣旨とはずれますが、39年以上無事に生活している人の差し歯は何を素材にしているのでしょうか。
セラミックのような良い材料がなかったということは、保険硬質レジン前装冠ですかね。

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回答 回答3
  • 回答者
歯科医師の松山です。
回答日時:2015-01-10 13:32:26
ちょっと厳しくなりましたね。
舌側にどのくらい残っているかも大きなポイントです。

歯肉縁下に欠損が及んでいてもフェルール効果を得られるのでしょうか

あくまでも歯肉縁上に残った歯質でのことだと思います。

歯冠部は、歯茎の下、歯肉縁下のほうにもあるのでしょうか

普通はありません。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: まえヴぁさん
返信日時:2015-01-10 18:52:41
松山先生

厳しいというのは、フェルール効果が望めないため、差し歯として長持ちさせるのが厳しいという事ですかね・・・?


ちなみに、歯肉縁というのは、添付画像のA、B、或いはA及びBのどれを指すのでしょうか(この点は、ネットで調べてもよくわかりませんでした。また、その上で「歯肉縁」というワードを使っていました。すみません。)?
仮にBだとした場合、私は歯根を結構損傷しているということになるのですか?

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回答 回答4
  • 回答者
歯科医師の松山です。
回答日時:2015-01-11 11:18:42
・厳しいというのは、フェルール効果

 少なくなるということです。

私のしたものではないですが、合釘のタイプの本当の意味の継続歯差し歯)で、30年以上持っているのがあります。
ただし歯ぎしりかみ締めの癖がない、咬みあわせ的にも上下のぶつかりが少ない、
ブラッシングは完璧、差し歯も非常に精密に作られているという好条件がそろっています。

歯肉

AもBもC?も、全周です。

回答 回答5
  • 回答者
回答日時:2015-01-11 14:28:16
ご返信ありがとうございます。


>生きる希望が湧いてきました。


良いですね。
歯と身体と命はつながっています。
そういう意味では大事にしましょう。


>うまくいく確率は、どの位かわからないでしょうか。


統計を出すことは不可能です。
お一人ずつがまるで違うためです。


たとえば、

>中には、フェルールが2,3mm確保できければ差し歯にはせずに抜歯という先生もいるようですし。


そうなんです。

確実な歯しか治療しなければ、自分の成績は良いに決まっています。
でも統計には出てこない切り捨てられた人たちは少なくないはずです。


>20年30年と差し歯生活を何の問題もなくしている人が何人かいました。
ただ、話を聞く限り、彼らは十分な歯質が残っている状態で差し歯になった人で・・・^^;


そうなんです。

私もたくさん目撃しています。
何でこんなに大量に削って差し歯にしたのか?!
詰め物で一生使えたのにとか、
予防医療で全く削らなくてもすんだのにとか、

健康な歯が充分残っている歯を治療すれば、ふつうは当たり前に長持ちしますよね。
それでもダメになっている歯もたくさん見ましたが・・・

逆に無理をすればとうぜん成績は悪くなるのに決まっています。
これでは統計を取る意味がありません。


ダメな歯はダメです。
ちなみに、歯肉縁下の歯がが無くなっている場合も場所により大きく違います。

まず、唇に面した外側がむし歯やさらに割れたりして、深くなくなっている場合は最悪です。


まぁふつうは抜歯ですが、それでも差し歯にしたことはあります。

予防医療をして、根の治療をし、歯の根の長さの限界から矯正治療で歯を少しだけ引き出し、歯肉を切り、骨を削り、歯周病の治療をし、仮歯で何度もリハビリをし、土台を付け、またリハビリをくり返し、何年もかけて貯金をし、何年も300kmを通院し、とても歯肉縁下が深いために特別な型取りをして作りました。

お互いにとても大変です。
抜歯したほうがとても簡単です。

でもお互いの気持ちのためにどんどん嬉しくなれました。


次に困るのは、舌に面した内側の歯肉縁下の歯が深い場合、
それから隣。
他に比べれば隣の歯の部分が深い場合はまだ何とかなります。



>さがら先生の場合、で構いません。


私個人的な結果は、学問的には根拠が一番低い単なる個人的なたまたまの結果という、単なる参考例というお話になります。
お一人ずつで違いがあり、必ずしも同じ結果になるとは限りません。

今まで無数に差し歯を作りましたから当然失敗もしています。

治療を受ける以上は、治ることがふつうだと思われたら間違いです。
歯科医療には、絶対に成功など保証できません。
精一杯やってみましょう、結果は分りません、という約束しかできません。


昔は判断が甘くて、むし歯を取り残してしまい差し歯が外れてしまったこともありました。
むし歯を取り切ることは以外にとても難しい基本的な治療です。

ギリギリで本来はダメな歯を何とか残そうと無理したことや、私が未熟でむし歯が取り切れていなかったからです。
残念ながら抜歯となってしまいました。

その反省もあり、今ではむし歯の取り残しをしない自信を持っています。

昔はセメントも今より悪く、そして今から考えるとそうとう私の腕も悪いので、差し歯がスポンと抜けてしまったことが何回かありました。

またギリギリでも残したいと相談して選んで頂いた場合、後で歯が割れてしまうことは昔も現在でもあります。
今でも100%失敗を避けることはできません。

全体の数も数えていませんから適当ですが、それでも今まで失敗した例は、極めてまれな例外みたいなことであり、ふつうは成功すると実感しています。


ふつう、うまくいけば長持ちします。



>39年以上無事に生活している人の差し歯は何を素材にしているのでしょうか。


セラミックです。
正確にはPFMクラウンと言います。

これは今でも世界中で使われ信頼されている方法です。
1963年にアメリカのジークムント・キャッツ博士と日本人で大恩師でもある当時も今も現役最先端の桑田正博先生により開発されました。

現代では昔と全く違い、材料にe-maxとか、ジルコニアとかのオールセラミックもあり、技術的にはCAD/CAMが実用的になり、さらに近々大発展を遂げようとしています。

でもPFMが当時では最先端でした。
使う金合金は最高、セラミックもドイツ製で最高、教育も最高でした。

その環境で、私が削り、型どりし、石膏模型を作り、鋳造し、電気釜でセラミックを焼き、形を作り、仕上げをして、歯にセットまで全部自分でしました。

つまり最高の環境でしたが、新米の私の腕だけが唯一最低の条件だったわけです。
でも適切で正しければ誰でも長持ちすると言うことです。


ちなみに当時私はオールセラミックの前歯も治療していました。
現代の方法とは全く違い、アルミナス・ジャケット・クラウンといいPFMの前からチャーリー・ピンガスによって開発された最先端の方法です。

現代の方法は精度も強度も高く当時と比べられない位良くなっています。

でもそんな大昔のフィットが悪く、しかも弱くて割れやすい方法でも30年以上使えました。
実は1本もむし歯にならず、はぐきも下がらず、まったく割れていません。

もちろんPFMよりも慎重に治療したからとも言えますが。

たった30年以上程度の成績しかない理由は、ほとんどそれくらいで身体のほうが寿命をお迎えになられてしまったと連絡があったからです。


材料で言えば、さらに古い開面金冠がありました。

現代の方法の欠点は大量に歯を削ることです。
ところが開面金冠は歯の寿命にとって大切な、エナメル質をほとんど削らないことが長所でとても長持ちしました。

もちろん開面金冠もやはり技術の差が大きくでました。

名医の一人が昭和天皇の御殿医で、上野の一文字号という名物ロバの入れ歯を初めて作ったことで有名な石上健次先生です。

当時先生は、東京医科歯科大学で教鞭を執っておられて、その基礎教育を受けられたことはとても幸運でした。


硬質レジン前装冠もたくさん作りましたが、自由診療ではとてもきれいで長持ちしています。
セラミックとはたしかに差がありますが、専門家が見れば分る程度でふつうの人には見分けが付かない位にすることができます。

ただ保険ではムラ、誤差、不良、美的問題などが出がちなのでそれなりです。


ちょっとばかり長くなりましたが、ネット情報に惑わされず長期的な展望を立てましょう。

全て選択です。
知識が明暗を分けます。
健康を目指し自信を持って楽しく暮らしてください。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: まえヴぁさん
返信日時:2015-01-12 00:49:27
松山先生、さがら先生

相談にのっていただき、また質問に答えていただきありがとうございました。
実は、最初に診てもらった先生が今後のことをはっきりと示すことなく抜髄をしてしまったため、不信感を抱き、その先生に診てもらうのをやめました(後日歯チャンネル等で調べて、その先生の処置が恐らく正しかったと思うようにはなりましたが)。
その後知人から腕が良い先生、技工士がいるという歯医者を紹介してもらい、ここで相談する前にその先生に会ったのですが、悪い人ではなさそうなので、彼のお世話になるつもりです。
が、仮に知人の紹介がなかったら、首都圏に住んでいるので、お二人のどちらかの世話になっていたと思います^^

これから成功率が30%と言われている根管治療等があり、大変ですが、可能な限り差し歯で生きていく努力をしてみます。

本当にありがとうございました。



タイトル [写真あり] 前歯を破折。フェルールが得られない状態での今後について
質問者 まえヴぁさん
地域 非公開
年齢 23歳
性別 男性
職業 非公開
カテゴリ 歯が割れた・折れた・欠けた
支台築造その他
クラウン(差し歯・被せ)その他
補綴関連
その他(写真あり)
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
  • 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。

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