歯冠にクラックのある左上6番のクラウンの素材選択について
相談者:
ペーパー司会さん (30歳:女性)
投稿日時:2016-03-31 23:56:54
こんばんは。
はじめて相談させていただきます。
左上6番の歯冠(遠心口蓋側)に縦に走るクラックを指摘され、クラウンをかぶせることを勧められております。
この歯の病歴を申し上げますと、
・2011年ごろ、粒ガムやローストガーリックの破片、粒胡椒をかんだ時に激しい咬合痛を感じ、近医を受診したが異常は発見されず、臼歯部に口蓋隆起が数個あるため、ブラキシズムによってエナメル質が菲薄になっているのではないかと言われ、夜間用のマウスピースを装着開始
・その後も砂粒くらいの細かいものを噛むと一過性の激しい咬合痛が時々現れていた
・今年2月、熱いものを口に含むと違和感を感じるようになったため、今のクリニックを受診
顕微鏡を使った診査で、上記クラックとその周辺のエナメル質形成不全を指摘される
レントゲンとCTではクラックに関しては所見説明なし、歯髄腔の狭窄を指摘される
・現在は熱いものに対する違和感は消失(自然消失)
・粒状のものは左側で噛まないようにしているため、咬合痛もなし
・夜間のマウスピースは継続中(2014年に作り直したもの)
いま診ていただいているクリニックで使用できる素材は、保険適用で金銀パラジウム合金、または保険外でジルコニアクラウン(25万)、の2択であると説明されました。
最初は保険内で金パラのクラウンを・・・と考えていたのですが、私は歯科医師免許を持っているため
「このクリニックを受診した歯科医師は、誰一人として保険適用のクラウンは入れていない。
印象の精度も違うし、他にもいろいろな金パラの欠点を知っていると思うけど、本当に金パラでよいのですか?」
と言われ、現在治療方針決定を保留中です。
(歯科医師免許は持っているのですが、歯科医師として働いた経験はなく、まったく別の仕事をしたのち現在専業主婦なので、知識は学生レベルです。)
私が最初に金パラのクラウンを…と考えた根拠は
・ジルコニアよりも咬合力に耐えられそう
・いつかクラックが歯根や歯髄のほうへ進展してしまい抜歯となったときにも、(費用の観点で)諦めがつく
・金属アレルギーがある(元素不明)が、右上6番に15年前に入れた金パラのインレーがあるため、もう一本増えたところで今とQOLがさほど変わらなさそう
の3点です。
知識不足でジルコニアクラウンの詳細をその場で質問できなかった(オールジルコニアか、陶材を乗せたタイプか、保証期間は?など)ので、こちらはなるべく早く確認するつもりです。
正直なところ、主人の収入から25万出してもらって入れたクラウンが、数年で支台歯の破折などが起きて抜歯になったら申し訳ないな…という気持ちが強いです。
今のクリニックは今まで見たことのある中でもっとも信頼のおける治療をしていると感じているのですが、予後に関しては典型症例ではないので経験がなく、なんとも言えない、と言われました。
そこで、情報の少ない状態でお伺いするのはおこがましいと承知の上なのですが、ご意見をいただきたいと思います。
先生方がご自身で上記のような状況にある場合、やはり金パラのクラウンは選択されませんか?
支台歯の予後を恐れて間に合わせの素材を使うよりも、印象精度や材料物性を優先して考えるべきなのでしょうか。
何か知識不足や認識の間違いがありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。
宜しくお願い申し上げます。
はじめて相談させていただきます。
左上6番の歯冠(遠心口蓋側)に縦に走るクラックを指摘され、クラウンをかぶせることを勧められております。
この歯の病歴を申し上げますと、
・2011年ごろ、粒ガムやローストガーリックの破片、粒胡椒をかんだ時に激しい咬合痛を感じ、近医を受診したが異常は発見されず、臼歯部に口蓋隆起が数個あるため、ブラキシズムによってエナメル質が菲薄になっているのではないかと言われ、夜間用のマウスピースを装着開始
・その後も砂粒くらいの細かいものを噛むと一過性の激しい咬合痛が時々現れていた
・今年2月、熱いものを口に含むと違和感を感じるようになったため、今のクリニックを受診
顕微鏡を使った診査で、上記クラックとその周辺のエナメル質形成不全を指摘される
レントゲンとCTではクラックに関しては所見説明なし、歯髄腔の狭窄を指摘される
・現在は熱いものに対する違和感は消失(自然消失)
・粒状のものは左側で噛まないようにしているため、咬合痛もなし
・夜間のマウスピースは継続中(2014年に作り直したもの)
いま診ていただいているクリニックで使用できる素材は、保険適用で金銀パラジウム合金、または保険外でジルコニアクラウン(25万)、の2択であると説明されました。
最初は保険内で金パラのクラウンを・・・と考えていたのですが、私は歯科医師免許を持っているため
「このクリニックを受診した歯科医師は、誰一人として保険適用のクラウンは入れていない。
印象の精度も違うし、他にもいろいろな金パラの欠点を知っていると思うけど、本当に金パラでよいのですか?」
と言われ、現在治療方針決定を保留中です。
(歯科医師免許は持っているのですが、歯科医師として働いた経験はなく、まったく別の仕事をしたのち現在専業主婦なので、知識は学生レベルです。)
私が最初に金パラのクラウンを…と考えた根拠は
・ジルコニアよりも咬合力に耐えられそう
・いつかクラックが歯根や歯髄のほうへ進展してしまい抜歯となったときにも、(費用の観点で)諦めがつく
・金属アレルギーがある(元素不明)が、右上6番に15年前に入れた金パラのインレーがあるため、もう一本増えたところで今とQOLがさほど変わらなさそう
の3点です。
知識不足でジルコニアクラウンの詳細をその場で質問できなかった(オールジルコニアか、陶材を乗せたタイプか、保証期間は?など)ので、こちらはなるべく早く確認するつもりです。
正直なところ、主人の収入から25万出してもらって入れたクラウンが、数年で支台歯の破折などが起きて抜歯になったら申し訳ないな…という気持ちが強いです。
今のクリニックは今まで見たことのある中でもっとも信頼のおける治療をしていると感じているのですが、予後に関しては典型症例ではないので経験がなく、なんとも言えない、と言われました。
そこで、情報の少ない状態でお伺いするのはおこがましいと承知の上なのですが、ご意見をいただきたいと思います。
先生方がご自身で上記のような状況にある場合、やはり金パラのクラウンは選択されませんか?
支台歯の予後を恐れて間に合わせの素材を使うよりも、印象精度や材料物性を優先して考えるべきなのでしょうか。
何か知識不足や認識の間違いがありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。
宜しくお願い申し上げます。
回答1
山田歯科医院(兵庫県姫路市)の山田です。
回答日時:2016-04-01 11:20:17
こんにちは。
左上6番の歯冠(遠心口蓋側)に縦に走るクラックが見つかり自覚症状もあった訳ですね、現在温痛が消失し咬合痛?もないとのことですが、個人的には現在歯髄の状態がどうなっているかの評価が必要だと思います。
健全ならクラックを接着して被せればそれでいと思います、もし歯髄壊死なら抜髄する必要があります、したがって歯髄の生死によって治療は全く変わってくると思います。
>臼歯部に口蓋隆起が数個あるため、ブラキシズムによってエナメル質が菲薄になっているのではないかと言われ、夜間用のマウスピースを装着開始
個人的にはこれはないと思います。
>レントゲンとCTではクラックに関しては所見説明なし、
レントゲンやCTでこのようなクラックを見つけることは不可能だと思います。
>・現在は熱いものに対する違和感は消失(自然消失)
個人的な経験ですがクラックが原因での症状は自然消失することはないと思います、症状がなくなったのであれば歯髄の電気診断とゴム咬みによる咬合痛を調べ歯髄がバイタルか否かを診断します。
象牙質のクラック http://yamadashika.jugem.jp/?cid=137
破折歯の接着再植法 http://yamadashika.jugem.jp/?eid=3322
歯髄腔に至るクラック http://yamadashika.jugem.jp/?eid=3074
診断に間違いがなく処置が適正に行われていれば素材はあまり関係はないと思います、診断が間違っていればいくら高いお金を出してもいずれ壊さなくてはならない事態になってくるように思います。
自分の歯であればゴールドを選択します。
参考になさってください。
左上6番の歯冠(遠心口蓋側)に縦に走るクラックが見つかり自覚症状もあった訳ですね、現在温痛が消失し咬合痛?もないとのことですが、個人的には現在歯髄の状態がどうなっているかの評価が必要だと思います。
健全ならクラックを接着して被せればそれでいと思います、もし歯髄壊死なら抜髄する必要があります、したがって歯髄の生死によって治療は全く変わってくると思います。
>臼歯部に口蓋隆起が数個あるため、ブラキシズムによってエナメル質が菲薄になっているのではないかと言われ、夜間用のマウスピースを装着開始
個人的にはこれはないと思います。
>レントゲンとCTではクラックに関しては所見説明なし、
レントゲンやCTでこのようなクラックを見つけることは不可能だと思います。
>・現在は熱いものに対する違和感は消失(自然消失)
個人的な経験ですがクラックが原因での症状は自然消失することはないと思います、症状がなくなったのであれば歯髄の電気診断とゴム咬みによる咬合痛を調べ歯髄がバイタルか否かを診断します。
象牙質のクラック http://yamadashika.jugem.jp/?cid=137
破折歯の接着再植法 http://yamadashika.jugem.jp/?eid=3322
歯髄腔に至るクラック http://yamadashika.jugem.jp/?eid=3074
診断に間違いがなく処置が適正に行われていれば素材はあまり関係はないと思います、診断が間違っていればいくら高いお金を出してもいずれ壊さなくてはならない事態になってくるように思います。
自分の歯であればゴールドを選択します。
参考になさってください。
相談者からの返信
相談者:
ペーパー司会さん
返信日時:2016-04-01 11:53:01
回答2
相談者からの返信
相談者:
ペーパー司会さん
返信日時:2016-04-01 20:40:12
中山先生
御回答ありがとうございます。
>元々はどのような修復をされていたのでしょうか?
これまでの修復についてですが、この左上6番の症状に対してはいままで一切行われておりません。
ただ、修復とまでは言えませんが、最初(2011年)にかかったクリニックで、症状の出ていそうな部位にボンディング剤を流してもらったところ、1ヶ月間ほど粒状のものを噛んでも咬合痛の症状が消失したことはありました。
(ボンディング剤がはがれてしまってからはまた元の通りでしたが)
>クラックの入っている歯牙の場合、コンポジットレジンによるオーバーレイがもっとも予知性が高いという話もあります。
新たな知見をありがとうございます。
オーバーレイという言葉は、学生時代に咬合挙上の手法で聞いた気がしますが…
先生の意図なさるオーバーレイというのは、クラック部分に対してCRを充填するという意味でしょうか?
それとも、CRアンレーで被覆するという意味でしょうか?
知識不足で恐縮なのですが、お教えいただけますと幸いです。
ちなみに、現在のクリニックに「なるべく健全歯質を削らない方法として、クラック部分をスーパーボンドなどで接着する方法はどうですか?」と聞いたところ、おそらく咬合力に接着界面が耐えられなく、そう遠くない将来に再破折に至るだろうという見解でした。
その先生は生活歯の歯冠破折にはクラウン(印象精度の観点からできれば金パラよりもジルコニア)一択という考えのようです。
御回答ありがとうございます。
>元々はどのような修復をされていたのでしょうか?
これまでの修復についてですが、この左上6番の症状に対してはいままで一切行われておりません。
ただ、修復とまでは言えませんが、最初(2011年)にかかったクリニックで、症状の出ていそうな部位にボンディング剤を流してもらったところ、1ヶ月間ほど粒状のものを噛んでも咬合痛の症状が消失したことはありました。
(ボンディング剤がはがれてしまってからはまた元の通りでしたが)
>クラックの入っている歯牙の場合、コンポジットレジンによるオーバーレイがもっとも予知性が高いという話もあります。
新たな知見をありがとうございます。
オーバーレイという言葉は、学生時代に咬合挙上の手法で聞いた気がしますが…
先生の意図なさるオーバーレイというのは、クラック部分に対してCRを充填するという意味でしょうか?
それとも、CRアンレーで被覆するという意味でしょうか?
知識不足で恐縮なのですが、お教えいただけますと幸いです。
ちなみに、現在のクリニックに「なるべく健全歯質を削らない方法として、クラック部分をスーパーボンドなどで接着する方法はどうですか?」と聞いたところ、おそらく咬合力に接着界面が耐えられなく、そう遠くない将来に再破折に至るだろうという見解でした。
その先生は生活歯の歯冠破折にはクラウン(印象精度の観点からできれば金パラよりもジルコニア)一択という考えのようです。
回答3
国際ビル歯科(千代田区丸ノ内)のさがらです。
回答日時:2016-04-02 13:08:49
ご相談ありがとうございます。
>先生方がご自身で上記のような状況にある場合、やはり金パラのクラウンは選択されませんか?
私は使いません。
どうせなら総合的なベストを目指すからです。
まず大事なことを説明しましょう。
保険の金パラは、材料としてとても優れた合金です。
導入にあたっては、世界標準となっているADA規格タイプV金合金に最も近い性能に設計されているからです。
ただし、コストを落とすために性能は落ちていますし、使われている成分に健康上の問題があると言われ、世界ではまったく使われていません。
つまり、歯にはとても安くて、まぁ性能も良いが、身体には心配だということです。
>金パラのインレーがあるため、もう一本増えたところで今とQOLがさほど変わらなさそう
アレルギーは抗原抗体反応です。
感作後の抗原への反応は危険なことを勉強しているはずです。
>・ジルコニアよりも咬合力に耐えられそう
確かにとても硬い材料ですが、歯を守る目的の治療に際して、クラウンの素材として咬合力に耐えるかどうかだけで決めることは極めて単純すぎます。
素材ではなく、プロセスや結果への補綴学的な検証が必要です。
ジルコニウム単体よりも酸化しているからジルコニアの安全性はとても高いと思われますが、もともと金属ですから身体への影響は未知です。
補綴学的にはジルコニアという素材は、ほとんど研究が進んでいないままに使われていて、歯を守るために使うのであればリスクがかなり高い材料と言われています。
>支台歯の予後を恐れて間に合わせの素材を使うよりも、印象精度や材料物性を優先して考えるべきなのでしょうか。
プロセスをすべて考えるべきです。
6番のクラウンをとても良く噛めるようにすることは、一つ一つが高いハードルとなる複雑な工程を順番に越えて行ってやっと達成できます。
たとえば、印象精度と素材は分けても考えられますから、保険の印象精度をわざわざ落としているのであれば、医療としてみれば素材以前にそこですでにアウトです。
日本の保険制度は世界一であり、金パラはとても優れた金属ですから、治療プロセスに差別するとメリットがとても減ります。
ほんらい精度管理を徹底してもエラーは出てしまうほど、補綴に求められる精度は厳密で繊細です。
院内に、徹底した精度とわざわざ妥協した精度と二股に分けているならば、さらに精度管理はふつう大変になるはずです。
また、楽なことに慣れると難しい方法は間違いやすくなる気がします。
逆に妥協した技術から、徹底した精度にあげている発展途上であるならば、どれだけ徹底できているか気になります。
なお、亀裂や破折が起きる原因を検査で突き止めて治療するという科学的な方法もありえます。
原因として咬合性外傷により起こることも少なくありません。
すなわち原因への対策としても、クラウン修復をするのであれば、原因となった咬合性外傷を解消する全体の咬合や6番の咬合面形態でなければなりません。
>オールジルコニアか、陶材を乗せたタイプか
特に6番の咬合面は複雑であり、予後を決定的に左右する重要な形態となります。
その複雑な形態を陶材で再現することは神業に近いことです。
またオールジルコニアで再現できたとして、もし小さな誤差が出た時の修正方法は全く研究がされていません。
したがって、小さな誤差を口腔内で削って調整するとリスクがとても高まります。
その対策として、無調整クラウンの技術でその素材を使えば活かす道もあるのかもしれませんが、とくに6番には手間ヒマかかりとても難しい治療となるでしょう。
それが25万円でできればとても安く、私は超お買い得と思います。
>顕微鏡を使った診査で、上記クラックとその周辺のエナメル質形成不全を指摘される
レントゲンとCTではクラックに関しては所見説明なし、歯髄腔の狭窄を指摘される
どうやら歯髄の健全性の確認が必要のようです。
この場合、デンタル・レントゲン、正確な模型、写真の基本的検査は必要不可欠で、追加検査として歯髄検査や顕微鏡他は有効かもしれません。
そのうえで、CTで何がわかるのかは、検査前に確認しましょう。
>先生の意図なさるオーバーレイというのは、クラック部分に対してCRを充填するという意味でしょうか?
浅学な私にはオーバーレイがよく分かりませんが、クラック部分を接着することは少なくとも短期的には有効かもしれないと思います。
>CRアンレーで被覆するという意味でしょうか?
CRとは保存修復材料です。
咬合面の修復は補綴ですから、口腔内でCRをアドオンするあるいは削って咬合調整する方法では咬合面の補綴修復はほとんどできないと言われています。
CRアンレーを咬合検査・印象・咬合器装着・製作・口腔内セットすれば補綴的効果が期待されます。
ただし精度や物性からみて暫定的あるいは基本的暫間処置のような修復とみなされます。
>ブラキシズムによってエナメル質が菲薄になっているのではないかと言われ、夜間用のマウスピースを装着開始
現在ではこの方法は疑問とされ、アメリカではリスクの承諾書が必要と言われている方法となりました。
今まで私は大臼歯のクラックに対して補綴修復を処置したことは良くあります。
一例は、生活歯ですが30年近く経って残念ながら歯根破折に至ってしまいました。
この原因は未熟な私が咬合性外傷を治せなかったからと考えています。
そのため今、一から勉強しなおしています。
どうやら難しい治療のようです。
ご担当の先生によく相談しましょう。
>先生方がご自身で上記のような状況にある場合、やはり金パラのクラウンは選択されませんか?
私は使いません。
どうせなら総合的なベストを目指すからです。
まず大事なことを説明しましょう。
保険の金パラは、材料としてとても優れた合金です。
導入にあたっては、世界標準となっているADA規格タイプV金合金に最も近い性能に設計されているからです。
ただし、コストを落とすために性能は落ちていますし、使われている成分に健康上の問題があると言われ、世界ではまったく使われていません。
つまり、歯にはとても安くて、まぁ性能も良いが、身体には心配だということです。
>金パラのインレーがあるため、もう一本増えたところで今とQOLがさほど変わらなさそう
アレルギーは抗原抗体反応です。
感作後の抗原への反応は危険なことを勉強しているはずです。
>・ジルコニアよりも咬合力に耐えられそう
確かにとても硬い材料ですが、歯を守る目的の治療に際して、クラウンの素材として咬合力に耐えるかどうかだけで決めることは極めて単純すぎます。
素材ではなく、プロセスや結果への補綴学的な検証が必要です。
ジルコニウム単体よりも酸化しているからジルコニアの安全性はとても高いと思われますが、もともと金属ですから身体への影響は未知です。
補綴学的にはジルコニアという素材は、ほとんど研究が進んでいないままに使われていて、歯を守るために使うのであればリスクがかなり高い材料と言われています。
>支台歯の予後を恐れて間に合わせの素材を使うよりも、印象精度や材料物性を優先して考えるべきなのでしょうか。
プロセスをすべて考えるべきです。
6番のクラウンをとても良く噛めるようにすることは、一つ一つが高いハードルとなる複雑な工程を順番に越えて行ってやっと達成できます。
たとえば、印象精度と素材は分けても考えられますから、保険の印象精度をわざわざ落としているのであれば、医療としてみれば素材以前にそこですでにアウトです。
日本の保険制度は世界一であり、金パラはとても優れた金属ですから、治療プロセスに差別するとメリットがとても減ります。
ほんらい精度管理を徹底してもエラーは出てしまうほど、補綴に求められる精度は厳密で繊細です。
院内に、徹底した精度とわざわざ妥協した精度と二股に分けているならば、さらに精度管理はふつう大変になるはずです。
また、楽なことに慣れると難しい方法は間違いやすくなる気がします。
逆に妥協した技術から、徹底した精度にあげている発展途上であるならば、どれだけ徹底できているか気になります。
なお、亀裂や破折が起きる原因を検査で突き止めて治療するという科学的な方法もありえます。
原因として咬合性外傷により起こることも少なくありません。
すなわち原因への対策としても、クラウン修復をするのであれば、原因となった咬合性外傷を解消する全体の咬合や6番の咬合面形態でなければなりません。
>オールジルコニアか、陶材を乗せたタイプか
特に6番の咬合面は複雑であり、予後を決定的に左右する重要な形態となります。
その複雑な形態を陶材で再現することは神業に近いことです。
またオールジルコニアで再現できたとして、もし小さな誤差が出た時の修正方法は全く研究がされていません。
したがって、小さな誤差を口腔内で削って調整するとリスクがとても高まります。
その対策として、無調整クラウンの技術でその素材を使えば活かす道もあるのかもしれませんが、とくに6番には手間ヒマかかりとても難しい治療となるでしょう。
それが25万円でできればとても安く、私は超お買い得と思います。
>顕微鏡を使った診査で、上記クラックとその周辺のエナメル質形成不全を指摘される
レントゲンとCTではクラックに関しては所見説明なし、歯髄腔の狭窄を指摘される
どうやら歯髄の健全性の確認が必要のようです。
この場合、デンタル・レントゲン、正確な模型、写真の基本的検査は必要不可欠で、追加検査として歯髄検査や顕微鏡他は有効かもしれません。
そのうえで、CTで何がわかるのかは、検査前に確認しましょう。
>先生の意図なさるオーバーレイというのは、クラック部分に対してCRを充填するという意味でしょうか?
浅学な私にはオーバーレイがよく分かりませんが、クラック部分を接着することは少なくとも短期的には有効かもしれないと思います。
>CRアンレーで被覆するという意味でしょうか?
CRとは保存修復材料です。
咬合面の修復は補綴ですから、口腔内でCRをアドオンするあるいは削って咬合調整する方法では咬合面の補綴修復はほとんどできないと言われています。
CRアンレーを咬合検査・印象・咬合器装着・製作・口腔内セットすれば補綴的効果が期待されます。
ただし精度や物性からみて暫定的あるいは基本的暫間処置のような修復とみなされます。
>ブラキシズムによってエナメル質が菲薄になっているのではないかと言われ、夜間用のマウスピースを装着開始
現在ではこの方法は疑問とされ、アメリカではリスクの承諾書が必要と言われている方法となりました。
今まで私は大臼歯のクラックに対して補綴修復を処置したことは良くあります。
一例は、生活歯ですが30年近く経って残念ながら歯根破折に至ってしまいました。
この原因は未熟な私が咬合性外傷を治せなかったからと考えています。
そのため今、一から勉強しなおしています。
どうやら難しい治療のようです。
ご担当の先生によく相談しましょう。
相談者からの返信
相談者:
ペーパー司会さん
返信日時:2016-04-02 16:51:21
さがら先生
御回答ありがとうございます。
>補綴学的にはジルコニアという素材は、ほとんど研究が進んでいないままに使われていて、歯を守るために使うのであればリスクがかなり高い材料と言われています。
今回の件があってから自分なりに調べたのですが、私もこの点がとても気になりはじめました。
長期的な予後(全身的影響も含め)のデータがまだない材料なのですね。
金パラかジルコニアの2択というクリニックでは、納得したうえでの治療はあまり望めないような気がしてきました…。
>院内に、徹底した精度とわざわざ妥協した精度と二股に分けているならば、さらに精度管理はふつう大変になるはずです。
>また、楽なことに慣れると難しい方法は間違いやすくなる気がします。
> 逆に妥協した技術から、徹底した精度にあげている発展途上であるならば、どれだけ徹底できているか気になります。
今のクリニックでは、自費専門のみ担当の先生と保険治療のみ担当の先生とを完全に分けているようです。衛生士さんについては共通かもしれません。
昨日電話で治療の詳細について追加質問したところ、保険内ではアルジネート印象で歯肉圧排もしないと断言されたので、印象採得の腕が相当素晴らしいと仮定しても、保険内での印象精度はあまり高くなさそうだと感じました。
そして、ジルコニアを勧める理由は金パラの物性の体への影響を考慮してではなく、あくまで印象精度の観点からとのことでした。
>なお、亀裂や破折が起きる原因を検査で突き止めて治療するという科学的な方法もありえます。
> 原因として咬合性外傷により起こることも少なくありません。
>すなわち原因への対策としても、クラウン修復をするのであれば、原因となった咬合性外傷を解消する全体の咬合や6番の咬合面形態でなければなりません。
6番の補綴のことばかりに拘泥していた自分の考えの浅さを恥じております。確かに、原因を突き止めたうえで、それを解決する方法の一つとして補綴がある、というふうに考えなくてはならないですね。
実は今のクリニックを受診してから、基本的な診査が十分なされないままに方針が決まり、補綴の材料選択の段階に至った印象が否めませんでした。
無論、クラックや摩耗の原因をつきとめ、解決しうるための診査はなされていないように感じます。
先生のお考えをうかがい、自分の中でなにかもやもやして引っかかっていたものが、少しずつはっきりしてまいりました。
今のクリニックでより詳細咬合や歯髄の診査をお願いしたり、またはジルコニア以外の材料の選択肢があって、かつクラックの原因をきちんと追究してから補綴処置などを考えてくださる別のクリニックを(といっても巡り合うのはそう簡単ではないでしょうが…)受診することも考えます。
この度は多大なお時間を割いてご回答いただき、誠にありがとうございました。
御回答ありがとうございます。
>補綴学的にはジルコニアという素材は、ほとんど研究が進んでいないままに使われていて、歯を守るために使うのであればリスクがかなり高い材料と言われています。
今回の件があってから自分なりに調べたのですが、私もこの点がとても気になりはじめました。
長期的な予後(全身的影響も含め)のデータがまだない材料なのですね。
金パラかジルコニアの2択というクリニックでは、納得したうえでの治療はあまり望めないような気がしてきました…。
>院内に、徹底した精度とわざわざ妥協した精度と二股に分けているならば、さらに精度管理はふつう大変になるはずです。
>また、楽なことに慣れると難しい方法は間違いやすくなる気がします。
> 逆に妥協した技術から、徹底した精度にあげている発展途上であるならば、どれだけ徹底できているか気になります。
今のクリニックでは、自費専門のみ担当の先生と保険治療のみ担当の先生とを完全に分けているようです。衛生士さんについては共通かもしれません。
昨日電話で治療の詳細について追加質問したところ、保険内ではアルジネート印象で歯肉圧排もしないと断言されたので、印象採得の腕が相当素晴らしいと仮定しても、保険内での印象精度はあまり高くなさそうだと感じました。
そして、ジルコニアを勧める理由は金パラの物性の体への影響を考慮してではなく、あくまで印象精度の観点からとのことでした。
>なお、亀裂や破折が起きる原因を検査で突き止めて治療するという科学的な方法もありえます。
> 原因として咬合性外傷により起こることも少なくありません。
>すなわち原因への対策としても、クラウン修復をするのであれば、原因となった咬合性外傷を解消する全体の咬合や6番の咬合面形態でなければなりません。
6番の補綴のことばかりに拘泥していた自分の考えの浅さを恥じております。確かに、原因を突き止めたうえで、それを解決する方法の一つとして補綴がある、というふうに考えなくてはならないですね。
実は今のクリニックを受診してから、基本的な診査が十分なされないままに方針が決まり、補綴の材料選択の段階に至った印象が否めませんでした。
無論、クラックや摩耗の原因をつきとめ、解決しうるための診査はなされていないように感じます。
先生のお考えをうかがい、自分の中でなにかもやもやして引っかかっていたものが、少しずつはっきりしてまいりました。
今のクリニックでより詳細咬合や歯髄の診査をお願いしたり、またはジルコニア以外の材料の選択肢があって、かつクラックの原因をきちんと追究してから補綴処置などを考えてくださる別のクリニックを(といっても巡り合うのはそう簡単ではないでしょうが…)受診することも考えます。
この度は多大なお時間を割いてご回答いただき、誠にありがとうございました。
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質問者 | ペーパー司会さん |
地域 | 非公開 |
年齢 | 30歳 |
性別 | 女性 |
職業 | 非公開 |
カテゴリ |
歯のヒビ(ひび割れ) お勧めのクラウン(被せ物・差し歯) |
回答者 |
- 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
- 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
- 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。