歯根破折。抜歯せずに義歯あるいは骨再生治療など出来ないか

相談者: デンタル相談者さん (51歳:男性)
投稿日時:2016-06-19 18:31:01
こんにちわ。
右下6番の歯です。
歯根のみ残っておりましたので、その上に金属柱を立ててかぶせて使用できるように処置していただいておりました。
7年以上、問題なくすごしておりましたが、先日、根に嚢胞ができたことから、かぶせものを外してもらったところ、歯根に割れ、亀裂が認められました。
周りの骨も少し溶けているような影がみられるそうです。

今後の治療法として、「抜歯して義歯にする」または、「抜歯して歯をつなぎ合わせて再植する」を薦められました。

根は薄く弱っていますが、できれば抜きたくありません。
抜歯をすると骨が吸収される、再植の成功率は数%程度で、結局抜くことになるというのが理由です。

そこで質問ですが、

1.抜歯せずに根管治療や骨再生治療を行うことはできますか。
2.割れた根を歯茎で覆って、その上から部分入れ歯を使うとどうなりますか。

親不知などで、抜きにくい歯根をあえて残す治療があると聞き、質問させていただきました。

よろしくお願いします。


回答 回答1
  • 回答者
回答日時:2016-06-19 18:38:35
>1.抜歯せずに根管治療や骨再生治療を行うことはできますか。

教科書的には割れている歯は抜歯になります。

確かにVRF接着修復などで歯を残す試みをされる先生はいらっしゃいますが、臨床報告をされているのは「世界に数名」しかいらっしゃいません。


>2.割れた根を歯茎で覆って、その上から部分入れ歯を使うとどうなりますか。

おそらく、割れた歯は異物排除で体外に排出されるか、最悪では顎骨骨髄炎を起こすと思います。


親不知などで、抜きにくい歯根をあえて残す治療がある

感染を起こしていない歯根であれば、あえて残す方法もありだと思いますが、デンタル相談者さんの根はすでに感染を起こしているものと思われますので、適応にはならないと考えます。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: デンタル相談者さん
返信日時:2016-06-19 19:34:09
櫻井先生

ご回答ありがとうございます。

「割れた歯は異物排除される」とのことですが、接着修復して、感染治療すれば排除されないのでしょうか。
つまり、再植のような処理をするという意味です。

最初説明が足りず恐縮ですが、再植の成功率が低い理由は、治療対象の歯の位置とのことです。
前歯であれば、成功率は高いそうなのですが・・・


また、再植した歯はその後の手入れなどは難しいのでしょうか。

よろしくお願いいたします。
回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2016-06-19 21:19:55
>接着修復して、感染治療すれば排除されないのでしょうか。

理論上はそうかもしれませんね。

ただ、「割れた歯を接着修復して感染除去し、元に戻す」というような学術論文は見たことがありません。

回答1でも書かせていただいた通り接着修復は「世界で数名しか行っていない治療法」です。

逆にデンタル相談者 さんが被験者となって症例報告のケースとなっていただけると歯科医学の発展にもつながるので、ぜひ、接着修復を行っている歯科医を探し出してトライしていただきたく思います。
(僕も興味はあります)


再植した歯はその後の手入れなどは難しいのでしょうか。

一般的な意図的再植の場合はそんなには難しくならないと思います。

接着修復による再植に関してはデータがないのでわかりません。

回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2016-06-20 09:47:55
先ほど、似たようなご相談に対して回答いたしましたので、コピー&ペーストで申し訳ございませんが、以下に書かせていただきます。



デンタル相談者 さんの治療目標はどこに置かれているのでしょうか?

1 しっかり噛めて健康な状態にしたい
2 しっかり噛めなくてもいいからとにかく抜歯だけは避けたい

どちらでしょう?

もし、2を希望されるのであれば抜歯以外の方法も考えられると思います。
(多くの犠牲を払えば抜歯は回避できるかもしれません)

しかし、通常、我々歯科医師(や多くの患者さん)は1を治療目標として考えます。


歯は、特に奥歯はご自身の体重と同じくらいの力が加わる部位です。

割れた花瓶を接着剤で固定し、そ〜っと置物として置いておくのであればそれなりの期間は持つかもしれません。

しかし、歯はそうはいきません。
残せたとして「絶対に使わない」という事が可能でしょうか?
また、できるだけ使わないように意識してお食事をすることが「健康的」なのでしょうか?

歯は臓器ですから簡単に抜歯することが良いことだとは思いません。
ですから我々歯科医は歯を残す努力を最大限に考えます。

しかし「(全身的、精神的な)健康を害してまで残しておくこと」に意義があるとも思えません。




また、接着修復に関して、僕が積極的に推奨しない理由としては

 保険適応ではなく、自由診療となる
 しっかりしたデータがなく、予後が不透明である
 上記したように「しっかり噛める状態」にはならない

となります。

それに対してインプラントは自由診療ではありますが、

 世界中の歯科医が行っている治療法である
 10年予後、20年予後のデータがしっかり出ている
 「しっかり噛める状態」にできる

からです。


そのあたりを担当の先生としっかり考えられ、治療法を選択される事をお勧めいたします。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: デンタル相談者さん
返信日時:2016-06-20 10:37:54
櫻井先生

非常に丁寧で親身なご回答、大変感謝いたします。


先生のご指摘のとおり、私の治療目標は2.です。

理由は、
1)歯根がなくなることで骨の吸収など近隣の丈夫な歯への影響を避けたい。
2)めざましい医学歯学の進歩への期待から、将来の再生医療のため、臓器である歯根を少しでも長く温存したい。

このため、できれば再植後の歯根は負担軽減のため歯茎に埋没させ、その上から部分入れ歯でも構わないと考えております。
(このようなことは可能でしょうか?)

また、インプラントは、アレルギー体質であることから、考慮しておりませんでした。

どうぞよろしくお願いいたします。
回答 回答4
  • 回答者
回答日時:2016-06-20 14:08:49
>私の治療目標は2.です。

という事であれば接着修復にトライされても構わないと思いますよ。


再植後の歯根は負担軽減のため歯茎に埋没させ、その上から部分入れ歯でも構わないと考えております。
>(このようなことは可能でしょうか?)

ほとんどの歯科医にとって未知の世界だと思います。

僕もどうなるのか、可能かどうかすら予測できません。
(回答2で書かせていただいた通り、興味はありますが)

回答 回答5
  • 回答者
歯科医師の松山です。
回答日時:2016-06-20 19:19:22
接着・再植は周囲の歯槽骨をも失う結果になります。

私は、生物学的・医学的背景を理解しているつもりですので、奨めはしませんし、もちろん自身でもしたことはありません。

ただし他の歯科医院で行ったというのは、何人か診たことはあります。
歯槽骨を失い、インプラントもしにくくなります。

インプラントを希望であれば造骨はします。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: デンタル相談者さん
返信日時:2016-06-20 22:09:57
櫻井先生

ご回答ありがとうございました。
素人考えで、「こんなことができれば」との思い入れで書かせていただいた内容にも丁寧にご対応くださり、ありがとうございます。


松山先生

接着や再植のリスクについてご回答ありがとうございました。
「周囲の歯槽骨を失う結果になる」とのご指摘ですが、なぜそうなるのでしょうか。
抜歯後の骨の吸収と比較してどの程度のリスクなのでしょうか。


お二方のご回答を同時に拝読いたしましたので、恐縮ながら連名でのご返信となりますこと、ご容赦願います。
どうぞよろしくお願いいたします。
回答 回答6
  • 回答者
回答日時:2016-06-21 09:41:11
>「周囲の歯槽骨を失う結果になる」とのご指摘ですが、なぜそうなるのでしょうか。

僕が回答1でも書かせていただいた事(異物排除、顎骨炎)に合わせ、「急性炎症」のリスクも考えられます。

生体の防御反応として、炎症が起きた場合、より深部への感染の波及を防ぐため、自ら骨が吸収する反応が起こります。
(急性の歯周病の状態を想像していただければお分かりになると思います)


抜歯後の骨の吸収と比較してどの程度のリスクなのでしょうか。

自然の骨吸収は「年に0.2mm程度」と言われています(個人差がありますが)。

対して異物排除や急性炎症のスイッチが入ってしまった場合には「数か月で数ミリ進む可能性がある」と考えられます。
(これも急性の歯周病の病態を考えていただければご理解いただけると思います)

回答 回答7
  • 回答者
歯科医師の松山です。
回答日時:2016-06-21 09:52:14
接着面には必ず、接着剤が歯根面に存在します。
これが(歯槽内・骨内)で生体外異物として認識され、その部の骨は接着面に沿って吸収します。

割れてから時間が経過すると、それだけで周囲の骨が吸収することが殆どです。

抜歯して抜歯窩保護、のちの骨造成をする方が骨の温存は図れます。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: デンタル相談者さん
返信日時:2016-06-21 12:37:10
櫻井先生
松山先生
(再度のご連名での返信、失礼いたします。)

ご回答ありがとうございました。

骨の異物排除反応、感染のリスク、そして抜歯との比較について、丁寧にわかりやすくご説明いただき感謝申し上げます。

ふと、思ったのですが、インプラントでも、異物排除や感染のリスクはあるのでしょうか?
骨に生体外異物が入るという点では同じことの様に思われます。
また、接着材の使用面積とインプラント挿入面積を比べると異物の占有面積はインプラントの方が広いように思われます。
どう違うのでしょうか。

また、インプラント利用者がされているアフターケアを接着再植患者が行うと異物排除や感染リスクも軽減されるとお考えになりますか?


私は現在3か月毎に歯周病健診歯垢取りをしていただいておりますが、骨に異物を入れた場合、こうしたケアだけで十分だと思われますか?


どうぞよろしくお願いいたします。
回答 回答8
  • 回答者
回答日時:2016-06-21 14:40:10
インプラントでも、異物排除や感染のリスクはあるのでしょうか?
>骨に生体外異物が入るという点では同じことの様に思われます。

インプラントに使われるチタン(チタン合金)には生体親和性があり、生体は異物として認識しません。

参考:生体材料
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E4%BD%93%E6%9D%90%E6%96%99


ただし、インプラントは感染に対しては弱く、ひとたび感染がおこると天然歯に比べ炎症は急激に進みます。

これが「インプラントはその後のケアが重要」と言われている所以です。



>接着材の使用面積とインプラント挿入面積を比べるとインプラント利用者がされているアフターケアを接着再植患者が行うと異物排除や感染リスクも軽減されるとお考えになりますか?

そもそもチタン表面には異物反応が起こりませんから、面積やケアを比較することは無意味ですね。


>私は現在3か月毎に歯周病健診歯垢取りをしていただいておりますが、骨に異物を入れた場合、こうしたケアだけで十分だと思われますか?

どうなんでしょうね?

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: デンタル相談者さん
返信日時:2016-06-22 00:21:39
櫻井先生

早々のご回答ありがとうございました。

ご解説を足掛かりに、自分でもネットで調べてみました。
インプラントは、意中になかったので全く知らず、的外れな質問になり、お手数をおかけいたしました。

チタンの骨結合や周囲炎という説明を見つけました。

先生方のご説明を伺い、自分の歯との向き合い方が見えてきたように思います。

どんな治療にも一長一短があり、結果には個人差がある中で、先生方は、患者の健康と時間とリスクを考えて、最前と思われる選択ができるようアドバイスくださっているのだと痛感いたしました。

櫻井先生には、この質問当初から丁寧にご回答いただき本当に感謝しております。
知識・技術はもちろん仁術にも長けた先生でいらっしゃるとご推察申し上げます。

松山先生には接着面から生じる骨へのリスクをご指摘いただき、歯以外の視点を得ることができました。

担当医の先生ともこれらの点をよく話し合い、着地点を決めていきたいと思います。 
重ねて御礼を申し上げ、先生方の益々のご活躍をご祈念いたします。
このたびは、お世話になりました。



タイトル 歯根破折。抜歯せずに義歯あるいは骨再生治療など出来ないか
質問者 デンタル相談者さん
地域 非公開
年齢 51歳
性別 男性
職業 非公開
カテゴリ 歯のひび割れ、破折で抜く予定
歯が抜けた・抜く予定 その他
インプラントその他
歯根破折
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
  • 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。

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