詰め物内部の虫歯菌について

相談者: パピ子さん (35歳:女性)
投稿日時:2022-05-02 23:18:53
はじめまして。

今回、自分の歯にインレー処置をするにあたって気になったことを、先生方にお聞きしたく投稿させていただきました。

自分なりに歯科のホームページなどを見て勉強しているのですが、わからなかったので…。

自費診療をされるクリニックでは、セラミックインレーをセットする際にもラバーダムをつけてくれる先生がおります。
唾液からの虫歯菌感染を防ぐためかと理解しています。

虫歯とは虫歯菌が糖をエサに酸を出すことで歯が溶けるということですが、仮に削った歯の内面に虫歯菌が残ったり唾液から付着したとして、上からインレーを被せられた場合、その虫歯菌にエサとなる糖は届くのでしょうか?
エサがなければ菌がいたとしても活動できないのではないでしょうか。

場違いな質問でしたら申し訳ありませんが、不思議に思ったもので(もちろん内部に菌なんていないに越したことありません)、先生方にご教示いただければと思います。


回答 回答1
  • 回答者
船橋歯科医院(岡山市北区)の船橋です。
回答日時:2022-05-04 17:35:01
こんにちは。

ホームページにはいろいろな情報がありますが、どちらかといえば歯科医が直接書くのではなく、業者が依頼されて代筆していることが多いでしょうから、歯科医自身が書いているブログのほうが良いかもしれませんね。

ただ、歯科医のブログは公的というよりも日記や備忘録に近いものが多いですから、偏った情報が多いかもしれないという点は気をつけてみてください。

自費診療をされるクリニックでは、セラミックインレーをセットする際にもラバーダムをつけてくれる先生がおります。
唾液からの虫歯菌感染を防ぐためかと理解しています。

ラバーダムをしていなくても、形成窩洞をペロペロ舐めない限り、唾液に汚染されることはまずないでしょうね。
ですから一般的に簡易防湿とバキュームでよいとされていることが多いでしょう。

口を開けていて、随時バキュームで外気排出されお口の中がパサパサで超乾燥している状態であれば、飛沫さえ飛んでいかないでしょう。
空気の強制的な流れを作り排出していますからね。

ただ、呼気からの湿気が防げない可能性が高いのでは?と、念には念を入れて診療に集中できるようにリスク管理しているのがラバーダムという事だと思います。

ラバーダムをしていると術野が孤立しますから、明示されやすく歯科医が治療に集中しやすいのです。
更に様々な薬液とか使いますから、そういうものから粘膜面を防御できるというのもよいですね。
安心感があります。

通常、セラミックインレーのセットには樹脂系のセメントを使用しますから、前処理として歯面には35%リン酸エッチングが施されたりしますからね。

また湿度を極端に嫌うタイプの接着システムを使っているという場合も、湿度がない術野を作っておくことが大切になるので、ラバダムの使用は推奨されています。

きちんとしたラバダムを施術の確実性を妨げずに行うには、かなり技術が高い必要が生じます。
なかなか保険診療の標準タイムでは、難しく行っていてもなんちゃってラバダムになりやすいように想像します。
何でも技術的な事となると奥が深いですからね。

ですから、メーカーもラバダムが使用できない場合は、簡易防湿をしっかり行うようにと記載しています。

形成面をペロペロ舐めないでねというのと、うがいはセットが終わるまでできませんからねというのが原則になるでしょう。
そして口の中乾燥しちゃいますが、しっかり防湿させてもらいますねってことはどの歯科医もやっていると思いますよ。

>仮に削った歯の内面に虫歯菌が残ったり唾液から付着したとして、上からインレーを被せられた場合その虫歯菌にエサとなる糖は届くのでしょうか?

虫歯菌はたいていの場合、ゼロにはなっていないのではないかと思います。
インレーにするという事は象牙質まで進んだ虫歯でしょうし、更にセラミックインレーならばより深く必要量形成しないと予後悪くなりますから、しっかり削って象牙質深くまで進んだ窩洞でしょう。

象牙質には象牙細管という細かい管が歯髄まで通じて走行しているのですが、麻酔や外力や浸透圧の変化によって虫歯で破壊された象牙細管内の歯髄側まで通じている長い腔の圧が変化して、細菌を引き込むという現象が生じることが知られています。
ですからどうやっても虫歯菌ゼロにならないと考えています。

ただ、形成面に削りカスが残存していたり(デブリとかカンナ屑みたいなものですね)有機質の膜とかが貼り付いているとその後のシーリング処理の阻害になりますから、形成面は可及的に清潔にしておくことが望まれます。
そこで適切な前処理をすることになっていますよ。

取り残された細菌に餌を与えるかどうか?は、その緊密なシーリングが破壊されるかどうか?によると思います。

つまり接合部ですね。

大抵どういうものでも、異種素材の接合部は構造体の弱点になります。

オーバーロードがあるとすぐにダメになりますから、咬合調整が肝とされていますし、形成限界を何処に設定するかが大変とされていますし、修復材料な厚みが大切とされています。

力学的な問題が破壊に繋がる為、妙に歯を当てないようにしてねというのはよくお願いされることだと思います。

例えば、歯ぎしりが酷いとか食いしばりが酷いならばマウスピースを夜間だけはつけて寝てくださいねというようなものです。

またこのサイトではTCHには気をつけてくださいねと皆が言っています。

シーリング破壊が早く起こると、2次虫歯や不快事項につながるからですね。

また一部の歯科医の中には、象牙細管内に歯髄側からの免疫細胞の遊走などが確認されていますから、象牙細管内液にリンゲル液が入っていると考えているのか、食生活も大切ですよとお伝えする場合もあると思います。

私が学生時代の頃は象牙細管内にどういう液体が流れているのか?それに血糖が含まれるのか?の答えがありませんでしたが、今はわかっているのかもしれません。
論文をあたってみてもわからなかったですが、基本が抜けていて馬鹿にされる疑問なのかもしれません。


どうなっているんだろう?とご自身の頭で考えてみることはとても大切なことですよね。

餌を与えないように、歯をむやみに当てなくて済むようになれば修復物は長持ちしますね。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: パピ子さん
返信日時:2022-05-04 22:29:35
船橋先生
とても丁寧な回答をありがとうございました。

虫歯菌ゼロにはならないということ驚きました。

セラミック虫歯になりにくいといっても、やはり口腔内の虫歯菌を少なくする努力が必要だと改めて感じました。
回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2022-05-05 12:08:45
菌による汚染を考えれば、インレーなどの間接法よりレジンなどのレジンなどの直接法(即日修復)の方に軍配は上がると思います。
 
ラバーダムをしてSetすることは最上級の配慮だと思いますが、印象からインレー製作までの仮蓋期間は削った面は唾液、細菌にもれなく汚染されています。

セラミック虫歯になりにくい

材料の差で虫歯になりやすい、なりにくいは言えませんね。
 
強いて言えば、セラミック表面は材料の中でも汚れが付着しにくいですが、人工物表面というより人工物と自分の歯の境界が、どれだけきちんと磨けているかの方が予後に大きな影響を与えます。

セラミックインレーなどは修復法のなかでは比較的削除量が多いので、直接法のレジンに比べ3倍ぐらいは健康な部分が無くなります。
ケースによっては術後凍みるなどの状況から歯髄炎を起こし、虫歯はきちんと取っても抜髄神経を取る)に至ることもあります。
 

後、どんな治療を受けても虫歯の菌は多かれ少なかれ歯には残ります。
 
逆に虫歯をわざと残し神経を保存する「シールドレストレーション」という方法もあり、何に主眼を置くかで治療法は異なってきますね。
  
歯科治療はホント奥が深いと思います。
 

おだいじに。

回答 回答3
  • 回答者
船橋歯科医院(岡山市北区)の船橋です。
回答日時:2022-05-05 17:19:39
>菌による汚染を考えれば、インレーなどの間接法よりレジンなどのレジンなどの直接法(即日修復)の方に軍配は上がると思います。

保険診療でも、象牙質レジンコーティングというものに保険点数が近年付きました。

これを行う事で、象牙質内面に外部からの細菌を引き込まないようになどでの保護と、形成面からの外部刺激の遮蔽と後の接着システムの向上が見込まれるという事になっていますね。

https://www.adhesive-dent.com/news/file/info_20191224.pdf

つまり形成後すぐに樹脂で、象牙質に樹脂をくっつけて覆ってしまうのです。

その後の処理としては、そのまま樹脂を積層していくのが直接法という事でダイレクトボンドやレジン充填という修復治療になりますが、こちらはどうしても強度は不足しますから(摩耗していくので)咬合維持という観点から、より物性の高いもので欠損部、あるいは形成窩洞を覆って物理的強度を保障しておくことで、長期の機能回復に努めることに繋がるとされています。

ですから、必要であればCAD/CAMインレー以上の物性での間接法で修復治療が行なわれます。

仮封をしっかりしておくのではなく、すぐにより物性の高い素材で修復治療をしたほうが良いと考えれば、CERECなどのインハウス修復が選択されると思います(自費治療です)。

象牙質と樹脂の接着はどの程度どのように経過していくのか?については、まだ不確かな部分もありますが、保険に象牙質コーティングが収蔵されたのはよかったと思っています。

更により良い治療法だと考えて様々な治療を追加する歯科医もいます。

このように、できればより良い治療を皆歯科医はしたいのだと思いますが、労力、技術力、人件費、材料費等様々な制約がありますからその中でその歯科医院が可能で治療成績の良い治療を提供していると思います。

あとは、使い方ですね。

どうしても修復治療ですから、界面から剥離や破壊が生じますから歯を不要に当てないで済めば一番よいように思います。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: パピ子さん
返信日時:2022-05-10 00:30:27
井野先生、船橋先生
ご丁寧に説明していただきありがとうございました。

おっしゃるとおり、奥が深いなと思いました。
噛み合わせの重要性についても理解しました。



タイトル 詰め物内部の虫歯菌について
質問者 パピ子さん
地域 非公開
年齢 35歳
性別 女性
職業 非公開
カテゴリ う蝕関連
二次カリエス(2次的な虫歯)
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
  • 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。

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