歯周病。PG菌(ジンジバリス菌)についての正しい知識

相談者: M119さん (46歳:男性)
投稿日時:2025-07-03 20:05:04
最近、テレビで歯周病の番組を見ていると、ジンジバリス菌という名前をよく聞くようになりましたが、歯周病菌の中でも特に悪い菌ということですので教えて下さい。

インターネットで調べていると、

「重度の歯周病の人や、歯周病の進んだ人からよく見つかる菌」

と書かれているのをよく見ますが、

「PG菌は常在菌で誰の口の中にでもいる」



「常在菌なので歯周病でない健康な人の口の中にも僅かに存在する」

と言っている歯医者さんもいらっしゃいました。

これはどれが正しいのでしょうか?
そんなに特別な菌でもないということですか?

また、「PG菌に感染するには長い期間(最低10数年)の接触が必要」
というのも見ましたが、唾液や菌の量でなく、なぜ期間なんでしょうか?

あと、飛沫感染はしないということでよろしいでしょうか?

どうか正しい知識を教えて下さい。
よろしくお願いいたします。


回答 回答1
  • 回答者
船橋歯科医院(岡山市北区)の船橋です。
回答日時:2025-07-04 10:50:47
こんにちは。

正しい知識かどうかは研究や論文は日々発表されているのでそれら全てをチェックできないためわかりませんが、一般的な認識として回答しますね。

PG菌(Pg菌)は、ポルフィロモリス・ジンジバリスという歯周病菌の一種で、歯周病の進行に深く関係する非常に病原性の高い菌です。

嫌気性菌に分類されていて、酸素の少ない環境が好きなのです。

ある種の細菌が繁殖するためには繁殖に望ましい環境があることが必要ですが、この細菌は、お口の中の歯周ポケットのような常に栄養豊富で暖かくて湿っていて酸素が来ないような至適環境がないと繁殖しません。

ですからよく歯磨きができていて(歯の上に栄養が塗りついていない状態が保てていて)歯周ポケットの数字が良くて、歯周ポケット内に毛先が毎回入ってくるような上手な歯磨き法が身についていれば繁殖するような環境は揃っていないということになります。


PG菌がどこからどうやってお口に入ってきて住み着くのか?ですが、多くが水平感染と考えられていると思います。

(というか歯科が警鐘を鳴らしている)つまりは、夫婦間やパートナー間でキスなどを介して繁殖条件を整えていて大量に繁殖している人の唾液は怖いということになると思います。

お口が臭くて(嫌気性菌繁殖の場は臭い)歯周病の管理ができていない人は最低でも嗽や歯磨きをしたり、口腔メンテナンスに通った後初めてキスをするというくらいのエチケットは大切でしょう。
パートナー間でうつし合いすることになりますからね。


Pg菌の厄介なところは、嫌気性菌なので歯ブラシの毛先が届かない場所で繁殖するということと、ジンジパインという蛋白分解酵素を産生して組織を破壊することと、存在そのものが(細胞外膜自体が)LPSという内毒素に該当し炎症を誘発することと、線毛を持っていて歯周組織に付着するということ、また毛細血管の透過性を高めるなどで炎症で破壊した毛細血管から体内に侵入して遠隔臓器の病巣でも繁殖が発見されているということで全身疾患の原因菌になるなど、今認識されていることだけでも大変厄介な細菌という認識になっています。


例えば、動脈硬化症、アルツハイマー型認知症、誤嚥性肺炎、リウマチ性関節炎、早産・低体重児出産などがよく知られている病気で他にもどんどん研究が進んでこの菌と全身疾患との関連性が報告されてきています。


お口の中には毎日毎日飲み物、食べ物、そして手や身体のどこかを舐めるなどでも様々な細菌が入ってきていますが、免疫系の働きや唾液の働きによってほぼ無害化して日々健康で過ごすことが可能になっていると思いますが、PG菌のような悪い細菌を棲みつかせることがないように歯科でのチェックとメンテナンスが非常に大切という認識があり、歯周病にかかって初期治療やその後の治療で一旦落ち着いても3ヶ月に1度はメンテナンス治療が重要という認識になっています。


PG菌に感染するには最低数十年という説はどうなのかな?とは思いますが、以下に貼ったものは5年以上前のものですがとても平易な言葉でわかりやすく記載されていますからイメージを持ちやすいのではないかと思います。

キャッチーな表現がネット上では色々してあると思いますが、きちんと研究費が配分されて研究を積まれている大学の教授がとてもわかりやすく教えてくださっています。

参考
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/79/5/79_600/_pdf/-char/en

回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2025-07-05 09:41:38
基本的な話をしますと、体内と体外は条件が全く違います。
ちなみに口腔内は体外です。

体内は建物の中、口腔内は中庭みたいなもので建物の中(=体内)ではありません。

あと細菌がいるかどうかの確認ですが、それなりの数(=数万とか数十万)は存在しないと検出できません。
ですので、数百とかでひっそりと暮らしている場合は見つけられません。

体内だと、白血球が巡回しているので、白血球に認識されないような仕組み(エイズウイルスのような)をもっていないと駆除されます。

これが体外だと、警備員の巡回は行われないため、他の細菌と折り合いがつけばひっそりと生き続け、自分にとって最適な環境に変わると増えるのかもしれませんし、頻繁に侵入しては出ていくことを続け、住み続けられる環境が整った場合に定着し一気に増殖するのかもしれません。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: M119さん
返信日時:2025-07-06 22:25:32
船橋先生、森川先生 ご回答ありがとうございます。

Pg菌の感染経路や、どの程度の接触・頻度で感染するのかについては今現在はっきりしたことは分かっていないということでしょうか。
人によって口腔内の状態も様々でしょうし。

とはいえ経路は他人からの唾液による感染が有力なんでしょうが、
キスや回し食い、回し飲みのような直接的な接触は当然気をつけるとして、会話や咳、くしゃみ等による飛沫感染にも気をつけないといけないんでしょうか?

ネットでは「虫歯菌やPg菌は飛沫感染するようなものではない」と言っている歯医者さんがいらっしゃいましたが。

また、外から悪い菌が入って来た場合、口の中がきれいな人や、歯茎の健康な人は口腔内に既にいる菌達が排除してくれるみたいですが、口の中が汚かったり、既に歯周病になっている場合は定着しやすいんでしょうか?


あまりきれいな話ではありませんが、以前、地元のラーメン店が客が残したスープを捨てずに使い回していたということがありました。

考えると怖いですが、大勢の人の唾液(菌)が入っているラーメンということですよね・・・。
そういうところから感染することもありそうですよね。

あと、細菌検査で見つからなかったとしても、口腔内のどこかに僅かに存在しているかもしれないということですよね。
回答 回答3
  • 回答者
船橋歯科医院(岡山市北区)の船橋です。
回答日時:2025-07-07 10:52:19
感染経路、接触頻度に関しては貼りました文献にも記載されていますから是非ご一読ください。
とても分かりやすい平易な文章にしてあると思います。

口の中が汚かったり、既に歯周病になっていると定着しやすいでしょう。
嫌気性菌ですから歯周ポケットが深いとか、酸素が届きにくい(汚れが溜まっている)条件が好きですからね。

地元のラーメン屋さんの使い回し行為は論外ですが、そういう衛生管理意識が低い場所では他も同様で食器の洗い方がずさんだとか色々問題がある可能性も高いかもしれませんね。


たまたま当たったネット情報でわからない場合は、今は何か検索ワードを入力されますとAIがネット上の情報を集約してうまく回答をまとめてくれる時代になっていますから、例えば、Pg菌、高温など入れてみるとおまとめされて回答が簡単に出てきますが、おかしな部分がまだまだあるためそれを修正したら以下になります。



「Pg菌(ジンジバリス菌)は、歯周病の原因菌の一つで、高温に弱く、煮沸消毒や熱湯消毒で死滅します。ただし、お口の中から完全に除菌することは難しく、日常的なオーラルケアが重要です。

詳細:
Pg菌と高温:
Pg菌(ジンジバリス菌)は、高温に弱く、煮沸消毒(100℃で5〜10分)や熱湯消毒(100℃で20分)で死滅します。

完全除菌の難しさ:
一度感染したPg菌をお口の中から完全に除菌することは難しく、日常的なオーラルケアが重要です。

感染経路:
Pg菌は、主に唾液を介して感染します。箸の共有、キス、回し飲み、同じ鍋をつつくなどの行為で感染する可能性があります。

Pg菌とむし歯菌:
むし歯菌(ミュータンス菌)は酸素を好む好気性菌ですが、Pg菌は酸素を嫌う嫌気性菌です。

その他:
歯周病菌は、思春期以降に唾液感染で定着することが多いとされています。

まとめ: Pg菌は高温に弱く、煮沸消毒や熱湯消毒で死滅しますが、お口の中からの完全な除菌は難しく、日常的なオーラルケアが重要です。」



Pg菌のみを増幅して検査する機器が歯科向けに販売されていたりします。
ただし、検出目的であれば検体の採取部位はいかにもいそうな場所にする必要はあるでしょう。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: M119さん
返信日時:2025-07-07 23:09:02
船橋先生ありがとうございます。

私はスマホでこの掲示板を利用しているのですが、貼っていただいたページに何度アクセスしようとしてもページを表示できませんでした。
ダウンロードはしようとするのですが・・・。

AIの回答は最初は便利かなと思っていたんですが、こちらの検索の仕方次第で回答がころころ変わるんですよね・・・。

文章がおかしな部分もありますし、あまり信用しない方がいいのかなと思ってました。
回答 回答4
  • 回答者
回答日時:2025-07-08 16:59:51
感染経路なんですが、例えばAIDSなどは、性行為や注射の使いまわしなどの特定の経路以外では感染しないと考えられますので、一緒におしゃべりしたり、握手したり、鍋をつつきあったりしても大丈夫だと考えられます。

同様に、虫歯菌歯周病菌唾液がある一定量口腔内に入った場合のみ感染が成立する(飛沫感染では絶対に感染は成立しない)のであれば、感染を予防するのは比較的容易ですし、そうなのであればそのルールを守っている限り、どんな食生活をしようが歯磨きをやろうがやるまいが虫歯にも歯周病にもならないということになります。

でもそんなこと言ってる歯科医師いませんよね。

結局のところ、人間と生活すれば他人の口腔内の細菌が入ってくることは完全には防げませんので、常に入ってきている(=常在菌)と考えて対策をとるべきかと思います。

1人の専門家がこの回答を支持しています  
相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: M119さん
返信日時:2025-07-09 22:22:17
森川先生ありがとうございます。

たしかにそういうことを言っている歯医者さんはいらっしゃいませんが、ジンジバリス菌 飛沫感染 で検索するとすぐに出てきますが、

ミュータンス菌やジンジバリス菌は空気感染や飛沫感染するものではありません」

と書いてある歯医者さんのHPはありました。

最初にそれを見た時

「飛沫感染しないんだ。良かった」

と思い、ほっとしたのを覚えています。


Pg菌は空気を嫌って歯周ポケットの奥にいるので、もしかしたら唾液中にはあまり(感染するほどは)含まれないのかな?などと勝手に考えたりしてました・・・。

大抵の場合、すぐに正反対の意見が見つかって何が正しいのか分からなくなり、一喜一憂するのを繰り返してきましたが・・・。
長い間悩みながら調べているうちに、今ではちょっとしたノイローゼのような状態です。

というのも、私は既に歯周病になっており、最初は歯医者にも行き、歯磨きもがんばっていたのですが、がんばるあまりだんだんと時間が長くかかるようになり、疲れはてて、ついには続けることができなくなってしまいました。

当然口の中は汚くなっていき、歯周病や虫歯だらけですので、家族に感染させはしないか、悪い影響が出はしないかと恐れるあまり
みんなのそばにいくこともできなくなり、自分の部屋に引きこもる毎日が何年も続いている状態です。

「飛沫感染や空気中の飛沫からは感染しない」と安心したかったのだと思います。


Pg菌は18g歳以降に感染するとよく書かれていますが、他の病原性の低い歯周病菌は小学生頃から感染するみたいですし、ミュータンス菌やPg菌がいなくても、他の細菌によって虫歯や歯周病になるみたいです(←この考え方で間違っていませんでしょうか?)。

森川先生の仰るように、Pg菌も既に口の中に入ってきている(口腔内に存在している)自分だけでなく、家族も既に持っている。と考えていたほうがよいということでしょうか。
回答 回答5
  • 回答者
船橋歯科医院(岡山市北区)の船橋です。
回答日時:2025-07-10 10:46:40
歯周病に一旦なって重症化してしまうと日頃の歯磨きがとても大変になりますよね。

とはいえ、それがとても大切ですから、歯科医院での定期的な徹底したクリーニングと毎日のお手入れを併用して悪化させないように治療を継続していただく必要があると思います。

歯磨き時間はとても長く必要だと思いますが、ご自身での徹底した管理が無理ならば1ヶ月ごとに歯科医院でクリーニングしてもらうことも可能になっていると思いますから、通院しやすい歯科医院で30分から1時間枠くらいとってもらってしっかり磨いたり歯石を除去したりしてくれる歯科医院を見つけられると良いと思います。

15分枠の予約程度では管理は無理ではないかと思います。とても丁寧に治療とクリーニングしてもらえる歯科医院に出会えれば良いと思います。

ご家族に重度の歯周病の方がおられますと他の方も同じようになりやすいと感じます。

貼りました文章は誰にとっても非常に分かりやすく世界の先端を研究している大学の先生が非常に平易な例え話をたくさん織り込んで学生と歯科衛生士向けに講義したものですから、公共施設のPCからなどでも良いのでご一読頂ければなるほどと納得いただけるのではないかと思います。

年齢により定着しないなども書かれています。ただ、パートナーの方へは移し移されやすく、実際に重症化し合っておられるケースを拝見することが多々ありますから十分注意してお互いにケア(最低限のエチケット)を心がけていただくのが良いと思います。

とはいえ、パートナーの片方のみが重度歯周病で片方は全く健全というケースも多々ありますから、要はお手入れ次第ということになるでしょう。




タイトル 歯周病。PG菌(ジンジバリス菌)についての正しい知識
質問者 M119さん
地域 非公開
年齢 46歳
性別 男性
職業 非公開
カテゴリ 歯周病その他
歯周病関連
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
  • 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。

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