左下7番、クラウン補綴後に食片圧入を繰り返し仮止めが外れる

相談者: たみおさん (43歳:男性)
投稿日時:2015-05-26 20:46:59
左下7番C3の診断のもと、根幹治療後、クラウン(全部被覆冠)補綴していただいたのですが、処置後から肉片やホウレンソウ、漬物の繊維が挟まり爪楊枝で取ろうとして仮止めが外れて再診、作り直し仮止めするも再処置直後から上記同様の食片圧入がまた出現、爪楊枝で取ろうとして仮止めが外れて再診、また作り直し。

これを繰り返して今度は3回目の処置予定です。

初診時から約半年かかって未だ治癒せず、再診料と処置料をその都度支払っています。


@このような一連の診療が果たして妥当なのか(治療期間が少し長いなあーと思うのです、素人なのですみません。)


A別件なのですが感染対策について

どうも滅菌手袋ではないゴム手袋を装着して処置中ライトの取手を触って焦点を当てた後、そのまま口腔内に手を入れているようですが、ライトの取手はその都度滅菌交換しているのでしょうか。

一処置一手袋で交換したとしても取手を変えずに触れると、例えば前処置患者がC型肝炎なら感染リスクを否定できず、非常に恐ろしい思いを・・・
(取手を見ると、前患者の血液が付着しているような・・・)

B観血手術の際、病巣周辺に綿を詰めただけで処置されましたが、口中の細菌はあるわけで、汚染手術になると思うのですが、術後感染のリスク、合併症の感染性心内膜炎等のリスクはどの程度ありますでしょうか。

予防的抗菌薬投与については、歯科領域ではどのようなお考えで対応されているのでしょうか。

以上3点につきまして宜しくご教示願います。


回答 回答1
  • 回答者
回答日時:2015-05-26 22:46:33
たみお さん、こんにちは。

>どうも滅菌手袋ではないゴム手袋を装着して

通常の歯科診療では、滅菌されたグローブは用いません。


>ライトの取手はその都度滅菌交換しているのでしょうか。

お掛かりの歯科医院に直接お尋ねになってみましょう。

ただ、取っ手は、一般的に、滅菌も、毎度の交換も出来ませんから、フィルムを貼ったり、都度交換したりして対応することが殆どかと思います。

もちろん、観血手術の場合は、通常の診療体制と異なりますから、滅菌したグローブやフィルムに変わります。

1人の専門家がこの回答を支持しています  
回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2015-05-27 08:23:24
ご相談ありがとうございます。

>@このような一連の診療が果たして妥当なのか

内容が妥当であったかどうかはここでは分かりませんが、結果はよろしくないと思われます。
その原因はいくつかの条件について精度の問題であるとはっきりしているからです。


>A別件なのですが感染対策について

大事です。


>どうも滅菌手袋ではないゴム手袋を装着して

通常の歯科医治療では滅菌手袋は決して使いません。
一般の外科でも同じで手術室では滅菌手袋ですが、一般外来では違います。


>処置中ライトの取手を触って焦点を当てた後、そのまま口腔内に手を入れているようですが、ライトの取手はその都度滅菌交換しているのでしょうか。

通常は滅菌交換しません。
患者さんごとに毎回消毒します。

しかし、口腔内に手を入れたゴム手で触ることは適切ではありません。
またキャリアとはっきりしている患者さんの場合は、治療前からバリアテープを取手以外にも触るところは全部カバーして、終了後廃棄処分します。


>一処置一手袋で交換したとしても取手を変えずに触れると、例えば前処置患者がC型肝炎なら感染リスクを否定できず、非常に恐ろしい思いを・・・

リスクはあり得ることですし、消毒は必ずする必要があり実行しています。
しかし、WHOの勧告でも歯科の場合の感染リスクはとても小さいとしていますし、歯科での感染は通常無かったと言われていますから、ガイドラインに従っている限り、おびえる必要はありません。


>(取手を見ると、前患者の血液が付着しているような・・・)

そんなことは許されませんから、直接お確かめになると良いと思います。
取り越し苦労は損するだけです。


>B 観血手術の際、病巣周辺に綿を詰めただけで処置されましたが、口中の細菌はあるわけで、汚染手術になると思うのですが、

通常の歯科治療では術前消毒をすれば充分です。


>術後感染のリスク、合併症の感染性心内膜炎等のリスクはどの程度ありますでしょうか。

どのような観血手術でも菌血症から脳炎などを含め感染リスクは必ずあります。
歯科治療自体が外科処置ですから、観血手術に限らず全て感染対策が講じてあります。
実際には通常の対策をしてあれば大丈夫と言われています。


>予防的抗菌薬投与については、歯科領域ではどのようなお考えで対応されているのでしょうか。

全身性疾患を疑われる患者さんの場合は、その疾患のご担当医と連携しながら前投薬から術後投薬まで全て指示に従っています。

しかし、健全と診断された患者さん全てに対して予防的抗菌約の投与が適切かどうかは関連医科との考察が必要なことです。
ただでさえ耐性菌が急増し、新たな抗菌薬の開発が望めない現状で、かつ副作用も考慮すれば健全者への投薬は慎重になるべきと考えます。

歯科領域に置いても、日常臨床では感染対策を日夜進めております。
その根拠はWHOのスタンダード・プリコーションに準拠しております。
それは公開されておりますから簡単にご入手でき、熟読されればご安心できると思います。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: たみおさん
返信日時:2015-05-27 09:06:03
小林 誠 先生

掛かりつけの歯科医院に直接尋ねる勇気はないので、ここで質問させていただきました。

ご回答ありがとうございました。


観血手術の場合、手術用ライトの取手については、執刀医が触れる際は、必ず滅菌したものを使用し一手術ごとに滅菌交換するようにしており、また、取り外しができないものについては、術衣を着ない不潔(誤解のなきよう)外回りの看護師がライトを調節するのが当たり前と思っていましたので、少し違和感を感じました。
相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: たみおさん
返信日時:2015-05-27 10:25:42
さがら先生

ご丁寧で詳細なご回答誠にありがとうございました。
できれば先生のところで是非お願いしたいくらいです。


先生一つだけ意見させてください。(誤解があってはいけないので)

≪一般の外科でも同じで手術室では滅菌手袋ですが、外来では違います。≫

とのことですが、外科に限らず医者は外来においても切開縫合手技などを必要とする小手術あるいは外科処置時には、常に清潔野を確保し、滅菌手袋を必ず装着しますので宜しくご配慮願います。

この際、失礼を承知で色々伺いたいのですが、

@口腔内の≪通常の術前消毒≫とは具体的にどのようにされるのでしょうか。

A根幹治療時ガスバーナーみたいなもので器具の尖端だけ炙って滅菌されていたのですが、歯科領域の標準予防策から観て妥当なのでしょうか。

先生の医院であれば安心してかかれるのですが・・・・
やっぱり少し不安なのと、直接お尋ねする勇気もやはりありませんのですみません。
この先も食片圧入と戦い続けていくしかないのでしょうか・・・

他の先生方の感染対策方法についても、具体的にもっと教えて頂ければ
非常にありがたいです。
回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2015-05-29 11:27:33
ご返信ありがとうございます。

>先生一つだけ意見させてください。(誤解があってはいけないので)

ご意見ありがとうございます。
勉強になります。

回答しました通り観血処置については了解しております。

私は子供の時の風邪とか成人後の眼科や皮膚科くらいしかほとんど病院にかかったことがないのと浅学で理解できていませんでした。
実は今まで、病院の観血処置ではない一般処置や無床診療所における診察・検査や処置では素手で行われていることしか見た事がありませんでした。


>この際、失礼を承知で色々伺いたいのですが、

なんなりとご相談ください。
相互理解が重要と考えております。


>@口腔内の≪通常の術前消毒≫とは具体的にどのようにされるのでしょうか。

ざっくりと個人的な観点で回答いたします。

まず口腔内の環境を考えてみます。
口腔内はエナメル質を含む外胚葉由来の組織で完全に一分の隙もなく囲まれ守られています。
消毒や治療や予防もその基礎の上で対処しております。

その防御の破れ目が生命にも関わるほど危険ですが、それがエナメル質を穿つ虫歯であり、治療と称してエナメル質を大きく削り人工物を入れて防御に穴を開けたままにする状況です。

もしその詳細を看過すれば全身性重篤疾患を招くことはすでに100年くらい前から最近にわたってもあまた証明されているところです。
口は災いの元と伝承されている、ある意味納得できます。

口腔内粘膜は一旦防御が破られても健康であれば自然反射的に塞ごうとします。
生命に関わるから同然の防御反応です。
粘膜疾患が外傷や歯周病であり、硬組織疾患の虫歯との大きな違いでもあります。

エナメル質の硬組織は自然治癒力が無いため特殊な封鎖処置が必要となります。
そこが我々の齲蝕と歯周病に対して、口腔と切り離せない心身をも総合的に含めた取り組みであるべきと考えています。

私個人的には、証明されたように脳梗塞・心筋梗塞・すい臓がん・腎臓がん・糖尿病・リウマチ・認知症・寝たきり・結膜炎・副鼻腔炎等々、全身性重篤疾患の予防部門が歯科という位置づけで臨床しております。

そんな大事件を起こしてしまってからよりも、ふだんから楽しく明るく元気で思い通りに暮らせるような、一生の健康長寿の願いをお手伝いできることが歯科の役割と信じています。

又同じ粘膜の貫通を起こす状態にインプラントがあります。
粘膜が自然治癒しないよう、つまり鉄壁の守りが塞がらないようにいわばゴムの代わりにインプラントでドレナージしたままに似ています。
すなわちインプラント治療は、より慎重な治療計画とアフターケアが欠かせません。

少し横道にそれましたが、したがって、口腔内は外界であり、皮膚や腸内と同じです。
歯科処置は外科処置ですから、例えば皮膚の外傷の消毒を参考にすれば理解し易くなりますが、基本は水洗・洗浄などの汚染の希釈です。

口腔内は通常streptcocciなどのマイクロフローラにより守られていますから、健康であれば汚染や病原菌感染は無く、特に薬剤なども必要ではありません。
逆に強い薬剤は健康な粘膜や、あるいは象牙質以下の間葉系細胞へのダメージという懸念が出てきます。

術前消毒とは、病原性の感染等が疑われる場合に効果的と考えます。
それは常在菌が異常に繁殖し、それにより病原性に成熟したり、通常は防御されているグラム陰性菌の付着や生育を助長している場合は、除菌処置が術前消毒に当たると考えます。

それは予防医療によって行われます。
その結果、健常と思われる環境になれば、それほど人工的な対応は必要ないかもしれません。

ちなみに皮膚についてもstaphilococciが守っているから、注射の術前消毒でさえアルコール清拭は不要だというお話も仄聞したことがあります。
そもそも我々も使う酒精綿に関しても同様ですが、病院の酒精綿が作り置きされていて有効濃度が維持されているはずがないにもかかわらず使用されていることが消毒なのだろうかとは思っています。


>A根幹治療時ガスバーナーみたいなもので器具の尖端だけ炙って滅菌されていたのですが、歯科領域の標準予防策から観て妥当なのでしょうか。

火炎滅菌は全ての微生物を除去できるため一般的に有効です。

実際には、一部の歯科医院で昔、根管治療で行われていた状況は綿栓を一瞬あぶる行為をそう通称しているものと思われます。
いまでもガラスビーズなどを使った乾熱消毒器がまだ販売されていますが。

火炎滅菌に耐えられる金属性器具について数秒間火炎を当てることが有効と言われていますから、綿栓についての効果はご想像にお任せます。

ちなみに根管内のマイクロフローラは口腔内とは又違い複雑なようで完全に解明されていません。

根管治療は、前投薬にも術前消毒にも関連することですが、抗菌薬等を使う場合に抗菌スペクルや感受性試験を考慮しなくていいのか、既知の微生物だけに効果のある薬剤で良いのかまで考えると、効果と副作用の割合がとても気になります。

口腔内のマイクロフローラや歯周病・根管内の病原菌についても最新のメガゲノム解析によると今までの概念が全く通用しないかもしれないと言われているくらいです。
私個人的には予防最優先なので、健全細胞へのリスク管理を優先しています。


>この先も食片圧入と戦い続けていくしかないのでしょうか・・・

解決方法はあります。
具体的にはミクロとマクロの両面を見る必要があります。

個人差もありうまくいくかどうかの保証は全くできません。
治療回数や期間も大きくなる可能性も否定できません。

ミクロではクラウンの隣との歯に関わる部分の解剖と接触力との管理、噛み合わせ面にある歯の凸凹の凸の位置と、その凸と上の歯との接触様態、それに噛み潰した食物の流れる溝、の細かい解剖の管理です。

マクロとは7番だけではなく全体の噛み合わせです。
分かり易くは上の奥歯歯並びに微妙な異常がないかの診査、そして分かりづらいことですが一番重要なこととして、食べる時に主に機能している歯が正常かどうかの検査が必要です。

一般的に7番は全体の顎の位置を管理したり、6番が正常に働く補助をしていますが、6番に主な機能が働いていない場合は5番にも出ますが特に7番に異常が出るため、その場合は6番の治療が必要になるからです。

私自身もまだ未熟で発展途上でもあり充分ご理解いただけないこともあろうとは思います。
これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

回答 回答4
  • 回答者
歯科医師の松山です。
回答日時:2015-05-29 18:27:49
食片圧入ですが、6番と7番の間で少し開いてしまうことではないでしょうか。
私も苦労したことがあります。
さがら先生が書かれていますが一言でいうと、非常に難しいことではあります。

原因を列挙すると、67番の骨植が悪く緩んでいる。
クラウンの接触面が同志が十分に届いていない。
修復物の咬合面近くの接触が緩く、開いているために、食片の圧入が起こる。。
この部に対合の歯の咬頭が入り込む咬合になっている。

また咬合面の咬頭対窩の(あるいは咬頭斜面)接触により水平分力が働き、開くことがある。
奥の7番が傾いているのにそのまま、修復物を入れると咬合力により戻ってしまう、すなわち接触が緩くなる。
クラウン等の修復物が入ると、咬合することにより7番が遠心に(奥に)傾く。
などです。

このためには、先立って十分な咬合高径を有した仮歯(仮詰め)を入れて置くということと、少し接触がきつめの修復物を作成して入れるなどです。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: たみおさん
返信日時:2015-05-31 19:34:55
小林先生

>もちろん、観血手術の場合は、通常の診療体制と異なりますから、滅菌したグローブやフィルムに変わります。

後から拝読しました。
納得しました。


さがら先生

毎度の詳細なご説明ありがとうございました。


松山 哲朗 先生

分かりやすいご説明本当にありがとうございました。
なかなか実際診療中の先生に、このような丁寧な説明をして頂くのは、憚るものがありまして、本当感謝しております。
ありがとうございました。
不安が取れました。



タイトル 左下7番、クラウン補綴後に食片圧入を繰り返し仮止めが外れる
質問者 たみおさん
地域 兵庫
年齢 43歳
性別 男性
職業 専門職(医師・弁護士・会計士)
カテゴリ クラウン(差し歯・被せ)のトラブル
歯医者への不信感
その他(歯科治療関連)
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
  • 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。

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