口腔内(白板症)の生検について

相談者: タロウくんですさん (33歳:男性)
投稿日時:2019-05-21 21:12:02
白板症の生検について。

今一、よく分からないのですが、生検と切除の手術は別物なのでしょうか?

例えば、白板症だと診断されて場合、切り取り、組織検査に出しますよね?

そうなった場合、患部を切り取りとって、それで切除の手術にはならないのでしょうか?

それとも、また切除手術は別の事なのでしょうか?

あまり仕事を休むことが出来ないので、もし生検の時に全部患部を切除してくれたら嬉しいのですが、そんな都合よくいかないですよね。


回答 回答1
  • 回答者
長崎大学大学院包括的腫瘍学講座の中本です。
回答日時:2019-05-21 22:59:16
タロウくんです さん、こんにちは。

>生検と切除の手術は別物なのでしょうか?

>もし生検の時に全部患部を切除してくれたら嬉しいのですが、

これは、病変の状態(サイズや肉眼所見など)を考慮して判断されます。

たとえば、サイズが小さくて明らかに良性と考えられる病変の場合、初めから病変全部を切除して、切除した材料を用いて病理組織検査を行います。これを(全)切除生検といいます。

一方で、サイズが大きかったり、悪性の可能性が否定できない場合などは、病変の一部のみを試験的に採取して病理組織検査を行います。これを(部分)切開生検といいます。

切開生検の場合、検査結果に応じて、あらためて切除の治療が必要となる場合が多いです。

タロウくんですさんの病変の状況が分からないため、切除生検となるか切開生検となるかは分かりませんが、生検をされる場合は、どのような生検となるか、また生検以降の対応について、担当の先生とよくご相談されてください。

お大事になされてください。

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相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: タロウくんですさん
返信日時:2019-05-22 12:29:54
回答、ありがとうございます。

本日、無事に大学病院ではないのですが、国立のがんセンターを受診することが出来ました。

診察、触診、などをして貰い、白板症かどうかは生検をやはりしないと分からないとの事で、全部患部を切除して貰い、結果は一週間から14日後には出るそうです。

そこで、本日一つ聞き忘れてしまった事があって。

もしよろしければ教えて欲しいのですが、前の病院で、細胞診の結果がクラス2との事でしたが、細胞診でクラス2の場合でも、白板症じゃない事もあるのでしょうか?

それとも、生検でなくては確実な結果は出ないのでしょうか?

今日受診した先生は、生検なら確実、とおっしゃってましたが、細胞診だけではクラス2でも白板症でない事もあるのか、そこを聞けなかったのが心残りでした。(患者さんも多くて、あまり沢山質問するのも悪いかなと気が引けました)


細胞診ではクラス2。

そこはあまり白板症の決定診断にはならないのでしょうか?
回答 回答2
  • 回答者
長崎大学大学院包括的腫瘍学講座の中本です。
回答日時:2019-05-22 15:11:40
タロウくんです さん、あらためまして。

まずは、今後の方針が定まったようで良かったですね。

>細胞診でクラス2の場合でも、白板症じゃない事もあるのでしょうか?

>それとも、生検でなくては確実な結果は出ないのでしょうか?

>細胞診ではクラス2。

>そこはあまり白板症の決定診断にはならないのでしょうか?

端的に答えると、タロウくんさんのケースで生検を実施するのは、生検の方がより確実だから、という目的と、どうせ切除するのであれば生検を兼ねて、という目的があるからではないかと、個人的には考えます。

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これ以上の内容は、やや専門的になるため、参考程度にしてください(通常は患者さんに説明する内容ではありません)。

実は、専門的には「白板症」という病名は、結構幅広い概念でして、「見た目が白い病変」で「他の明らかな病気とは異なる」ものは、まとめて「白板症」という診断名(正確には臨床診断名)がつきます。

そして、「白板症」という名称がついた病変を、更に顕微鏡で調べると、

1.単に粘膜が白くなっているだけの状態(専門的には「過角化症」と表現されます)……今の段階で直ちに問題となる状態ではない

2.良性と悪性の境界領域にあるような状態(専門的には「上皮性異形成」と表現されます)……放っておくと癌化する可能性があるため切除が必要

3.既に悪性となっている状態(専門的には「扁平上皮癌」と表現されます)……直ちに治療が必要

とに分類されます。

よく、メディアやインターネット上のサイトで、「白板症は前癌病変であり、放っておくと悪性化する」と報じられたり書かれていたりするのは、上記2(上皮性異形成)に該当する白板症のことです。

このように、一口に「白板症」といわれる病変も、顕微鏡で調べなければ1〜3のどの状態になっているか分からないため、ここで、「細胞診」や「生検」といった検査が必要となります。

次に、細胞診と生検では「見えてくるもの」が異なる、といった違いがあります。

細胞診は文字通り「細胞レベルのチェック」をしかできないのに対して、生検は「組織レベルのチェック」まで行うことができます。

※「組織」とは、「細胞」が集合して形成されるパーツと考えてください。

細胞診では、細胞レベルのチェックしかできないため、上記3(扁平上皮癌)のある程度の判定は可能ですが(これを悪性腫瘍の「スクリーニング検査」といいます)、上記1(過角化症)や上記2(上皮性異形成)の区別はできません。

タロウくんさんの場合、ご質問の内容を拝見する限りにの個人的感想としては、

>細胞診ではクラス2

ということで、上記3(扁平上皮癌)の可能性は非常に低いものと思われます。

ただし、上記1(過角化症)か上記2(上皮性異形成)かは細胞診では分からないため、念のため生検まで行うと判断されたのではないかと、個人的には考えます。

以上、ご参考になれば幸いです。

お大事になされてください。

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【追記:検索エンジン等から本ページに辿り着いた医学生・歯学生へ】

>細胞診ではクラス2

細胞診におけるクラス分類とは、従来、Papanicolaou分類(パパニコロウ分類)が用いられてきました。

この分類では、

ClassT 異型または異常細胞は認めない。
ClassU 異型細胞は認めるが,悪性所見はない。
ClassV 細胞学的に悪性を疑うが,確定的ではない。
ClassW 細胞学的に強く悪性を疑う。
ClassX 細胞学的に悪性が確定的である。

という分類表記を行っていました。

一方、2015年より、口腔細胞診のガイドラインによる悪性度分類では、Bethesda分類(ベゼスダ分類)が用いられています。

この分類では、

NILM(正常および反応性あるいは上皮内病変や悪性腫瘍性変化がない)
LSIL(低度異型上皮内腫瘍性病変あるいは上皮異形成相当)
HSIL(高度異型上皮内腫瘍性病変あるいは上皮異形成相当)
SCC(扁平上皮癌)

という分類表記になっています。

Bethesda分類の特徴は、上皮性異形成を、更に「低度」「高度」に分類している点と、場合によってはSCC(扁平上皮癌)と明言している点(本来、細胞診レベルで扁平上皮癌と言い切ってしまってはいけないと思うのですが……)にあります。

2019年現在、細胞診はまだPapanicolaou分類を行っている医療機関が多いですが、今後、Bethesda分類に切り替わっていくものと思われます。

これから医師・歯科医師になる皆様は、是非、細胞診のBethesda分類を知って頂ければと思います。

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相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: タロウくんですさん
返信日時:2019-05-22 16:34:56
とても分かりやすい回答ありがとうございます!

なるほど専門的な事過ぎて、おそらくここまでは時間がなくて、本日診て下さった先生も説明は難しかったかもしれませんね 汗。

なので、中本先生からいろいろ教えて頂き、「そうだったのか。ぼくじゃ分からなかった筈だ」と、1人でただただ頷きながら読ませて頂きました。

詳しく分かりやすい説明、本当にありがとうございました。

今は、歯茎を切開したので痛みと出血が酷いですが、徐々に落ち着いてくるとのお話でしたので、安静にしてます。

あと2週間後に予約を入れましたので、それまでドキドキですが、正しい結果が知れるので、心を落ち着けて待ちたいと思います。

本当にありがとうございました。



タイトル 口腔内(白板症)の生検について
質問者 タロウくんですさん
地域 非公開
年齢 33歳
性別 男性
職業 非公開
カテゴリ 舌、粘膜、唇の病気・異常その他
口腔外科関連
専門的な質問その他
白板症
回答者




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