質問 |
さち3 2024/08/16(Fri) 20:14
こんにちは。
神経に届いているかいないか微妙な感じの虫歯の治療について、教えてください。
露髄しない程度に虫歯を削り、水酸化カルシウムをおいて、仮の蓋をしてもらう治療を受けました。虫歯は取り切れていないそうです。1週間痛みが出なければ封鎖?して、3ヶ月置いて再石灰化を促進して、露髄しにくくして、3ヶ月後にもう一度虫歯部分を削るそうです。
質問
1.虫歯を残している状態なのですが、虫歯は進行しないのでしょうか。水酸化カルシウムには殺菌作用があるらしいですが、その作用が届く範囲はごく限られている気がします。今なら神経を残せる状態なのに3ヶ月で虫歯が進んで神経に届いてしまうことはないのでしょうか。
2.あまり聞いたことのない治療方法なのですが、一般的な治療方法でしょうか。似た治療方法でMTAを使う治療法もあるとは聞くのですが、どちらにしてもあまり一般的に行われていないような気もしています。
3.麻酔を使わずに虫歯を削ったのですが(痛くなったらそこは削るのをやめる)麻酔をしないことに何かメリットがあるのでしょうか。神経と遠いところなら麻酔は不要とは聞きますが今回はそう言うケースではないように思われるので、、
どうぞよろしくお願いいたします。 |
回答1 |
Dr.ふなちゃん 2024/08/17(Sat) 08:28
|
船橋歯科医院(岡山市北区)の船橋です。
|
こんにちは。
深い虫歯治療で神経を残す事は案外難しいです。
深いと象牙質まで細菌が感染しているのですが、象牙質には象牙細管があり歯髄側まで繋がっていますから治療で圧をかけたり刺激を与えすぎると細菌が歯髄に到達して歯髄炎を生じやすくなりますから一気に虫歯除去しない低刺激な2段階虫歯治療は推奨されています。
〉1
水酸化カルシウムはアルカリ性薬剤ですからタンパクを溶解し細菌を殺します。アルカリ性薬剤には色々なタイプがありますがMTAセメントもその一つです。硬化時に膨張するか?硬化後硬いか?脆いか?薬効が持続的か?浸透性は?再石灰化事に必要なミネラルの供給源になるか?等でそれぞれの薬剤には差があります。
保険診療では水酸化カルシウムが使われます。
〉2
保険診療で可能な主流の方法です。水酸化カルシウムは虫歯は取り切らず置き、MTAセメントは虫歯を取り切って露髄面に置くという使い方をすることが多いと思います。どちらもくっつかない為です(レジンに混ぜてある薬剤タイプもありますが)
一般的には深い虫歯は抜髄に進む事が多いでしょうね。再アプローチまで上手く歯髄炎が生じない確約はできませんし、再アプローチ時に痛まないからと来院されない人もいたりして治療が一旦終わりのようになる為治療理解度が低い患者さんにはわかりにくいかもしれません。
〉3
健康な深い部分の象牙質には知覚神経の終末が入り込んでいますから削ると痛いのですが、虫歯でやられている部分は知覚がありません。麻酔をするとより上位で知覚を止めますから、痛みという判断材料を放棄して削ってしまうので治療が荒くなります。また、麻酔により歯髄からの圧が弱まり細菌を象牙細管を通じて歯髄に引き込むと考えられる為、丁寧な虫歯除去治療時には麻酔無しが推奨されています。ただ、個人的な意見ですが知覚神経の終末が入り込んでいる部位はかなり歯髄近接部ですし、治療により細菌が歯髄に引き込まれるぐらいの治療安全域の余力がなくなっているぐらい深い虫歯の治療予後は期待するほどはよくないです。治療後も栄養バランスが悪い食事内容を継続していたり人工的に作られた過度に甘いものを食べていたらいずれ歯髄炎になり歯髄壊死になってしまうかもしれません。
深くなった虫歯治療を歯髄を残して治療することはかなり難しいと感じます。
|
返信1 |
さち3 2024/08/17(Sat) 11:37
ふなちゃん先生
お忙しい中、とても丁寧なご回答、ありがとうございます。
水酸化カルシウムの治療で神経を残すことができるようになる可能性は高くないんですね。。
何度も質問して申し訳ないのですが、また教えていただけませんでしょうか。
1.今、虫歯を取りきったら、神経に達していない状態なのに、3ヶ月で神経に達してしまう可能性はありますでしょうか。
一般的な治療(虫歯は取ってしまって、露髄するなら抜髄)であれば神経を残せたのに、となるのは避けられるなら避けたいです。。
2."一般的には深い虫歯は抜髄に進む事が多いでしょうね。再アプローチまで上手く歯髄炎が生じない確約はできませんし、再アプローチは面倒ですからね"
というのは、3ヶ月後に虫歯を削ったらやっぱり神経に達してしまっていて、神経は取ることになることが多い、ということでしょうか(再アプローチとは3ヶ月後の治療のことでしょうか)。
3.ふなちゃん先生のところでは行われていない治療なのかなと思われたのですが、うまく行く確率が高くないから、やってない、ということでしょうか。
何度も申し訳ありません。
どうぞよろしくお願いいたします。
|
回答2 |
井野泰伸 2024/08/17(Sat) 13:05
たぶんですが、「AIPC」だと推測できます。
https://www.hozon.or.jp/member/statement/file/aipc_guideline.pdf
保険適応もされている標準治療なので、心配しなくていいと思いますよ。
私もたまにやりますが、MTAの直接覆髄より予後が良いと思います。
歯髄保存の方法は色々なものがありますが、「AIPC」をチョイスする辺りはかなり保存治療に精通した先生なんじゃないかな!?と思います。
あまり心配せず先生の指示に従ってください。
ただ、覆髄の予後は分からないことが多いので、もし症状が出るようなら早目に先生に診てもらってください。
おだいじに
|
返信2 |
さち3 2024/08/17(Sat) 18:27
井野先生
お忙しい中、とてもご親切な回答、ありがとうございます。
私の受けた治療は、お示しいただいたサイトの資料の通りでした。
AIPCという、標準的な治療であり、井野先生もされることがある処置なんですね。安心しました。
MTAより予後も良さそうとのこと、励みになります。
ありがとうございます。
心配しすぎす、かかっている先生の指示にしたがっていきます。
お忙しい中、本当にありがとうございます。
|
回答3 |
柴田 (評価4.0) 2024/08/18(Sun) 08:08
>AIPCという、標準的な治療
いえいえ全く標準的ではありませんね。間接覆髄法や直接覆髄法に比べてかなり保険請求される割合が少ないと思います。
公的な発表によれば何年か前の5月に日本中で請求された数はわずか1700件ほどだったと思います。
>MTAより予後も良さそうとのこと
井野先生は2つの治療法を比較されていると思います。
一つはAIPCでもう一つはMTAを使った直接覆髄法だと思います。井野先生のHPをしっかり確認していませんし回答中に使用薬剤が書いてないと思います。
でも個人的には一押しの治療法ですね。
|
回答4 |
Dr.ふなちゃん 2024/08/18(Sun) 10:51
|
船橋歯科医院(岡山市北区)の船橋です。
|
虫歯治療はすっかり綺麗に虫歯を取り切る派と、あえて取り切らず薬剤と生体の防御反応を使って2度に分けて取り切る派と、できる範囲で取り切りあとは埋めてしまう派に分かれると思います。
保険請求上の問題もあるでしょうから、期間が来たら再治療しますと言われているならばきちんと約束を守って再治療を受けてください。保険ではあまり算定数が上がらない理由になってしまっているのかもしれませんね。
深い虫歯の歯髄温存治療は上手く行く時ばかりではない為ずっと以前から様々なやり方をそれぞれの歯科医が発表し臨床で試みられて来ています。ある歯科医が上手くできると言っても他の歯科医には上手くいかなかったりするのは、虫歯除去時に加える圧のバラつきと、シーリング能力の差によるのかもしれません。
私も長い臨床の期間、幾つかのやり方を自院にて提供して来ましたが、今はEr-Yagレーザーで殺菌と象牙細管の閉鎖を無圧でする事で歯髄温存がかなりの確率で可能になっています。虫歯除去時に圧をかけると歯髄側の細胞の配列に亀裂が生じてそこから歯髄感染しますから予後に影響したのだろうと考えています。
こんな風にそれぞれの保険医でも患者さんの歯髄温存の為に色々考えたり投資して手を尽くしているのが現実だと思います。数値には出てこなくてもそんなものだと思います。
|
返信3 |
さち3 2024/08/18(Sun) 10:53
柴田先生
お忙しい中、ご親切に私の理解不十分な点について教えていただき、ありがとうございます。
理解が追いついておらず、お忙しい中、本当に申し訳ないのですが、可能でしたら、もう少し教えていただけませんでしょうか。
1.AIPCは、あまり行われていないのですね。
柴田先生のご感触では、なぜ、あまり行われていないとお感じでしょうか。歴史が浅いから?成功率があまり高くないから?保険診療にしては面倒だから?(私に行われたのがAIPCであるならば、前回の治療時、安くてびっくりして、少し申し訳ない気持ちになったので、、)
ご感想程度で良いので、教えていただけませんでしょうか。
2.
"井野先生は2つの治療法を比較されていると思います。
一つはAIPCでもう一つはMTAを使った直接覆髄法だと思います。井野先生のHPをしっかり確認していませんし回答中に使用薬剤が書いてないと思います"
について、せっかく教えていただいているのに、申し訳ないことに、理解が追いついておりません。。
井野先生のご説明はAIPCと、MTAでの直接覆髄法だけど
私が受けたのはAIPCではないかもしれないから、その場合は、"MTAより予後も良さそう"、という私の理解はまちがってるよ、と、教えていただいたということでしょうか。
お忙しい中、親切にご回答していただいているのに、次々と質問してしまい、本当に申し訳ございません。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
|
回答5 |
井野泰伸 2024/08/18(Sun) 12:58
標準治療 検索してもらえば書いてありますが、メジャー、マイナー治療ではなくて、
https://kotobank.jp/word/ 標準治療
「大規模な臨床試験に基づいて効果の証明された、その時々の最も成績のよい治療法。」
>回答中に使用薬剤が書いてないと思います
使用薬剤の差でなく、神経が露出して薬剤を塗布する直接覆髄より多少の虫歯を残して神経を出さない間接覆髄の方が神経保存は有利ですし長期予後も安定しています。
極端な話し虫歯を残しても封鎖さえきちんと出来ていれば歯髄はしばらく保存できます。
歯髄付近の虫歯を残しきちんと封鎖する方法をシールドレストレーションと言います。
http://eedental.jp/ee_diary/2021/11/post-2320.html
自分の子供にもシールドレストレーションで歯髄保存治療してます。
個人的には歯髄保存は薬剤より術者の戦略が大きく物言う治療だと思います。
http://eedental.jp/ee_diary/2022/01/post-2349.html
読む限りですが担当の先生はあなたの為を思って治療してくれていると思いますよ。
ネットで変な先入観を持つより今は担当の先生の指示に従った方がいいと思います。
おだいじに
|
返信4 |
さち3 2024/08/18(Sun) 17:40
ふなちゃん先生
何度も丁寧にお返事いただき、本当にありがとうございます。
虫歯治療の方針は歯科によって違うこと、深い虫歯の神経を残すのは大変だけど、歯科医の先生たちの経験や研究、探究によって導き出した、ベストの治療をしてくださっていると言うことと理解しました。
ありがとうございます。
かかりつけの先生が、経験から、これが良いと判断してくださった治療方法なので、心配しすぎず、指示に従っ行きたいと思います。
お忙しい中、何度も、本当にありがとうございました。
|
返信5 |
さち3 2024/08/18(Sun) 18:02
井野先生
お忙しい中、何度もご回答いただき、本当にありがとうございます。
"標準治療"と"標準的な治療"は大きく違うとのこと、よく調べもせず勝手な解釈をしていたこと、教えていただきありがとうございます。
標準治療の定義を読んで、信頼できる治療方法とわかり、とても安心しました。
間接覆髄、直接覆髄の違いをご指摘いただいたとのこと、丁寧にご説明いただき、ありがとうございます。
そして、間接覆髄のほうが長期予後が良いとのこと、安心できました。
井野先生のお子様にも間接覆髄で治療をされているとのこと、一層安心しました。
かかりつけの先生が、神経を残そうと頑張って下さっているので、信頼してついて行こうと思います。
本当に何度も、お忙しい中、丁寧で暖かいご回答、ありがとうございます。
|
回答6 |
柴田 (評価4.0) 2024/08/18(Sun) 18:43
返信3への回答
Q1 AIPC=保険の歯髄温存療法の保険点数は200点で充填物の除去20〜48点とう蝕処置18点を算定できると思います。歯科医院側の収入としては総額で2760〜2380円になると思います。
保険のルールとしては次のような記載があると思います。
(4) 歯髄温存療法とは、臨床的に健康な歯髄又は可逆性歯髄炎であって、感染象牙質を全て除去すれば、露髄を招き抜髄に至る可能性のある深在性のう蝕を対象とし、感染象牙質を残し、そこに水酸化カルシウム製剤などを貼付し、感染部の治癒を図り、3月以上の期間を要するものをいう。本区分は、当該処置を行った最初の日から起算して3月以上の期間内に2回程度の薬剤の貼付を行うことを含め、当該処置に係る一連の行為を包括的に評価し、当該処置を行った最初の日に算定する。
これを日本語にすると「最初に200点を算定して残りの二回はただですよ」となるかと思います。
つまり一回の処置に15分から30分かかるとすると45分から90分の歯科医院側の収入が上記の金額になるのでほぼほぼ赤字になると思います。
手間と時間と回数がかかって収入はすごく少ないので多くの歯科医がやりたがらないのだと思います。
実際に2023年5月に日本中で保険請求された回数は1900回程度だと思います。
今年6月の保険改正で少し増点にはなりましたがそれでもまだ安すぎますね。
ただ日本歯科保存学会と日本歯内療法学会の合同編纂の「歯髄保護の診療ガイドライン」2024によれば「強い推奨エビデンスの確実性 中」となっていると思います。
井野先生の回答中の
>読む限りですが担当の先生はあなたの為を思って治療してくれていると思いますよ。
には強く同意します。
|
返信6 |
さち3 2024/08/18(Sun) 20:33
柴田先生
お忙しい中、何度もご回答いただき、ありがとうございます。
AIPCが、信頼性があるのに、いかに割に合わない治療か、とても良くわかりました。こんな治療を提案してくださったかかりつけの先生の、ありがたさを痛感しました。
かかりつけの先生を信頼してついていこうと思います。
何度も丁寧に教えていただき、本当にありがとうございます。
|