[写真あり] 歯髄壊死でレントゲンに影。経過観察の可能性を示す研究記事

相談者: y.yさん (47歳:女性)
投稿日時:2017-08-10 20:01:53
先日、定期検診で偶然とったレントゲンで、右上1番の歯根の周りに黒い影がうつっているのが発見されました。

歯茎を外から触ると根のあたりの場所に(赤い?)感染のふくらみがあり(痛みはない)、パルパーでは反応がないことから、歯髄壊死していると診断されました。

この歯は、トラウマとなる事故にあった記憶はないですが虫歯詰め物はあります。
症状の歴史は以下のようであり、おそらく何年も前から歯髄壊死していたのかなと思います。


(17年前)
食事や歯磨きで痛むことがあった、鼻の横を押すと痛む、寝ているときに歯がじんじんとして2晩ほど夜中に起きることがあった、熱い食べ物でじーんと5分ほど痛みが続くことが5回ほどあった、触るとその歯だけが敏感である、横になるとちょっと痛む、お風呂にはいると違和感を感じる。

(15年前)
症状はまだ少しあるがかなりおさまっていた。
レントゲンには影は写っていなかった。

(7年前)
すでに症状がなくなっており、パノラマレントゲンでは影はみあたらなかった。

(現在)
症状はない。
半年に数回、食事後に右上1番と2番(根管治療済)の間がかけちがってしまったような奇妙な感覚を覚えることがあるが、すぐに治る。
この半年はそれもない。



この場合どうなるのか調べてみたところ、似たようなケースの根尖性歯周炎の研究を見つけました。
(The accidental detection of apical periodontitis, 2011年、オランダ

(要約)
根管治療をしていない無症状の歯に、偶然に根尖歯周炎をレントゲンで見つけたときに根管治療をするべきかしないべきか。
(する理由)
- 将来の炎症出現によって痛み等の症状があらわれる可能性
- 根尖性歯周炎が大きくなる可能性
- 体全体の抵抗力に悪影響を与える可能性
(しない理由)
-感染は何年もすでにあったが症状がなかったということは、免疫システムが局所的に均衡を保てている状態である
-根管治療をすることによって歯が弱くなる
-根管治療をしても感染を全部取りきれるわけではない
-根管治療の成功率は100%ではない


私の場合も、今まで何年も無症状で来ているのだからこのまま何もしないで体の免疫システムにまかせるというのは選択肢のひとつとして現実的なのでしょうか?根管治療は難しいと聞いておりますので、勝算があるのなら経過観察していきたいという気持ちがあります。

またその場合、経過観察の方法は具体的にどのようになると考えられますか?(レントゲンを何年毎に撮るなど)


結局は素人なので、実際の治療の現場のプロである先生方のご経験からアドバイスいただけましたら非常にありがたいです。
なにとぞよろしくお願いいたします。


回答 回答1
  • 回答者
回答日時:2017-08-10 20:21:18
パルパーだけではなくてEPTもされる事をお勧めします。

赤い感染の膨らみが何かによって処置方針は変わる可能性があると思います。

無症状と書いてありますが↑は症状かもしれません。
根尖相当部の圧痛はなし、垂直打診痛なし、水平打診痛なし、歯周ポケット深くないという事でよろしいですか?


レントゲンで根管は追求できますか?歯根膜はどこまで追求できますか?

根管がはっきりしなくなると根管治療の難易度が上がる事があると思います。


少なくとも半年に一度はレントゲンを撮るべきだと思います。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: y.yさん
返信日時:2017-08-12 18:53:19
柴田先生、ご回答ありがとうございます。


感染の膨らみはすでに症状かもしれないと聞いて驚きました。
改めて指を入れて触ってみると、歯ぐきよりももっと上の方(歯ぐきが終わったラインより上と鼻の間のくぼみとでもいいましょうか) の肉の下の根が太くなっているのが外から触るとわかるという感じです。

多分先生のおっしゃる根尖相当部にあたるのかと思いますが、押しても痛みはありません。
あとは、下から叩くテストでちょっと隣の歯よりは敏感かなとは思いました。
痛みというほどではありません。
水平には叩いていません。
歯周ポケットは深くないです。

レントゲンでの根管と歯根膜の追求は、残念ながら素人なのでわかりませんでした。


あと、言い忘れておりましたが、数年前からその歯の先の方が隣に比べてちょっと黄色くなっているのに気づいて、どうしてなのだろうと思っていました。
この変色は根管治療をしないともっと進んでしまうのでしょうか?

私もそれ以外のテスト、EPT等をしないでも歯髄壊死とわかるのかと聞いてみましたが、やるまでもなくわかると専門医に言われたので、ここは信じるしかないのかなと思っています。


問題はこれからの治療なのですが、私の場合、根管治療をせずに経過観察というのは先生の臨床経験から言って現実的でしょうか?
例えば、半年後にもう一度レントゲンをとって縮小、もしくは現状と同じサイズだったらそれからも経過観察でいくというのはありなのでしょうか。
それとも、半年待つリスクの方が高いと考えられますか?

先にあげた研究記事のほかにも、こちらの歯チャンネル歯科大辞典根尖病巣根尖病変根尖性歯周炎の説明欄に以下のように出ているので、実際は経過観察もよくあることなのかと思う一方、歯髄壊死の場合はできるだけ早く根管治療をしなければならないという意見が大多数のようで、混乱しています。

歯科大辞典より抜粋)
"また、根尖病巣が見られたからといって必ず治療が必要だと言うわけではなく、縮小傾向にあるようなものの場合には、そのまま経過観察をすることもあります。

ですから、「レントゲンで根尖病変が見られた ⇒ 即治療」というわけではなく、しばらく経過観察を行って、進行しているのか?縮小傾向にあるのか?を見分ける場合もあります。"


何卒、よろしくお願いいたします。
回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2017-08-13 10:38:34
専門医にかかられているのであればこのようなサイトを見ない方が幸せかもしれませんね。

回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2017-08-13 17:05:59
y.yさん、こんにちは


個人的な意見として、生きた歯髄抜髄根尖病変のない歯髄壊死根尖病変のある歯髄壊死>根尖病変のある根管治療済みの歯の再治療

と、いう順に成功率が下がってきますので、歯髄壊死しているのなら、早めに治療された方が良いと思います


問題は本当に歯髄壊死しているかということだと思います。
これに関しては、誰が行ったとしても、100%正しい診断を下すことはできません。
唯一正しい診断を下せるのは削ってみる以外にありません(それでも100%にはなりませんが)。


現在おかかりの先生が信用できるなら、治療をお任せした方が良いと思いますが、信用できないというのなら、転院された方が良いでしょう。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: y.yさん
返信日時:2017-08-16 22:36:34
柴田先生、小牧先生、ご回答ありがとうございました。

まずは歯髄壊死の正否ですね。
そこのところはあまりにもパルパーの結果が明確だったので納得していますが、削ってみる最後の最後まで注意してみようと思います。

壊死していた場合、根管治療せずに経過観察というのはやはりかなりレア(というかリスキー?)な治療方法のようですね。
回答 回答4
  • 回答者
回答日時:2017-08-17 10:54:02
パルパーも100%性格という訳ではありませんが。

経過観察してもよくなる見込みはないと思います。
よくて現状維持でしょう。

回答 回答5
  • 回答者
回答日時:2017-08-17 22:05:52
y.y さん こんばんは   すみません長文です。


y.yさんが引用された文献は実はアムステルダムの Wesselink 先生がお書きになられたものですが、オランダ語ですよね。
もしも全文をお読みになられたのでしたら、素晴らしい!

私は要約の部分しか読んでいませんが、この要約部分であれば英語になっていますので、
どなたでも検索されればアクセスできます。


しかしながら、この研究は(研究ではなく意見なのです=エビデンスは低い)1つの考え方を示されただけではないかと思います。

何度か Wesselink 先生にはお会いしたり、デスカッションしたりしたことがありますので、若干誤解されている部分を解いた方が良いかなと思い、2点書かせていただいています。


まず、1点目、こういう文献が出てきた背景には CBCT の乱用という問題があり、それに警鐘を鳴らしたという意味があります。

すなわち通常のレントゲン(デンタル)では映らないような根の先の黒い影をCBCTという装置で撮影したら、映ることが多く、根管治療の専門医が仕事を増やすためにCBCTをどんどん撮影しているわけです。

もちろん国際放射線防護委員会は、余程でないとCBCTは撮る必要はないもので、デンタルで良いわけですが、現実的には日本だって、撮影すれば保険点数が高いため、バンバン撮影しても文句は言われない状況です。
(特に日本は非常に多くの歯科医院に CTがあります。世界の2/3のCTがあると言われて久しいです)

ところが、じゃあ、そういう小さな病変を治療して本当に治っていっているのか?というと、そうではないわけです。


そこで、CBCTで見つかるようなそういう小さな病気も治療する必要があるのか?ということに対しての問題提起が1つなのです。
そして、ひいては通常のレントゲンでも小さく映っているようなものに対しても、どうなの?という問題があるわけです。



2点目、実は Wesselink 先生の言う “accidental detection” というのは、もちろん y.yさんのような未治療の場合も含めるのだろうと思いますが、すでに根管治療が行われている歯が偶然レントゲンを撮影したら黒く写ったような無症状で経過をしているようなケースのことを最初は言っていて、

それを治療するかどうかは、否定的な考えの術者の場合は、一般的には治療しても良くならないことも多く、費用もかかるし、歯も弱くなる、ということで治療しないことを勧めるし、例えば、じゃあ98歳の人の無症状の根尖部の黒い影をどうするのか!みたいな。

逆に肯定的な術者の場合は、放置すると症状が出たり、大きくなったり、体調が崩れると問題となったり、ということで治療を勧める。
だから、術者と良く相談して決定しましょう、ということですよね。


要約には、未治療の根管とは書かれていませんが、原文を読まれましたか?おそらく未治療の感染した根管に対して、”経過観察をする”というようなことを言う先生ではありませんが、実はヨーロッパの歯内療法学会のガイドラインでは、 y.yさんのようなケースは
”絶対に治療”の歯とされているのです(小牧先生のお答えのように)。

しかし、それに対して、全て治療する必要が絶対にあるわけでもないし、難しい歯もあるし(柴田先生が心配されている根管の見つからないケースもあるし)、良く相談しましょう、ということですよね。


y.yさんの根管は未治療の感染根管なので、治療が難しくない可能性が高く、適切に治療を受けられると、勝算がある!のですでに治療済みの根管治療よりも成果はでますよ。
それにしても、y.yさんの熱心さには脱帽致します。



ちなみに、Wesselink 先生(僕がスウェーデンにいた頃は教授でしたが)2014年に同じ内容の文献を出版されており(それも単なる意見と症例報告です)、たまたま2−3週間前に他の歯科医に紹介していました。
こちらは英語で出版しておりますので、それを参考にお答えしております。


宮下 裕志 (東京国際歯科六本木)

1人の専門家がこの回答を支持しています  
相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: y.yさん
返信日時:2017-08-19 20:25:37
ご回答いただき、誠にありがとうございました。

小牧先生、
再度のご回答、ありがとうございます。
臨床経験からのアドバイス、非常に参考になります。



宮下先生、
文献をご存知で、Wesselink先生に直接ご面識のある専門家の方のご意見をうかがえるとは思っていなかったので、びっくりしまた感激いたしました!歯チャンネルの懐の広さを感じます。


私は全文をオランダ語で読みましたが、文字通りに理解することしかできませんのでWesselink先生がこれを書かれた背景などは知るよしもなく、CBCT乱用に対する警鐘の意味もあったのかと納得いたしました。

たしかに、よく読んでみると研究ではなく意見のようですね。
文献の中で52歳男性の患者さんの例が挙げられているのですが、そのケースも最終的には根管治療をしたようですし、治療をしないとどうなるかという研究ではないようです。


ただ、オランダ語の原文の方では、未治療の感染した根管に対して根管治療をせずに経過観察もありかという内容のようで、上述の52歳男性も未治療だったケースです。

未治療か治療済みかという論点は特に明確にされていないということかもしれませんが、ちょっと混乱しています。

こちらの点につきまして先生はどう思われますか?
もしご意見うかがえましたら幸いです。
回答 回答6
  • 回答者
回答日時:2017-08-20 12:58:50
y.y さん

こんにちは
感想ありがとうございます。
やはりオランダ語でですか!素晴らしい。
しかも無料ではなかったはずですよね。


>オランダ語の原文の方では、未治療の感染した根管に対して根管治療をせずに経過観察もありかという内容のようで、上述の52歳男性も未治療だったケースです。

おそらく英語版と同じ内容だと思いますが、図をアップしました。


>未治療か治療済みかという論点は特に明確にされていないということかもしれませんが、ちょっと混乱しています。
>こちらの点につきまして先生はどう思われますか?
>もしご意見うかがえましたら幸いです。

未治療の場合でも、偶然みつかった場合では、その過程で次第に根管が細くなっていくことがあります。
そうすると、後々治療すべき時期が来た際に、とんでもなく大変な治療になってしまうこともあります。

治療済みの場合でも、すでに治療がされているにも拘らず問題が発生している原因を探すことが必要となり、治療者にとってはどちらでも簡単ではない場合があるのです。

したがって、根の先に問題が「ある」というだけではなく、「他の状況」も考慮し治療するかどうかを決めていきましょう、という意味です。


簡単に言うと、効果が見込まれるのであれば治療をリスクの方が高いと考えられるのであれば治療しない、も1つのオプションという稀なケースもあるということです。

通常は「明らかに症状があるようなケース」は治療をしますけど、ね。


宮下 裕志 (東京国際歯科六本木)

画像1画像1

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: y.yさん
返信日時:2017-08-21 06:19:01
宮下先生、ご回答ありがとうございます。

オランダ語の方に載っているのと同じレントゲン写真のようです。
同じ内容なんですね。


なるほど。
未治療の感染した根管を経過観察するというのは、根管治療することによるリスクの方が高い場合のみに適用される非常に稀なケースということですね。
効果が期待できるようなら速やかに根管治療した方がいいと。


私の場合は、歯髄壊死レントゲンに影があってもまだ根管治療が難しいわけではなさそうですし、このまま経過観察してもよくて現状維持であるならば、根管が細くなったりして治療が難しくなるリスクが出て来る前に早く治療した方がよさそうだと思いました。

最初にこの文献を読んだときは、私のようなケースでも症状がないのだから経過観察できるかも!と素人の浅はかさで期待してしまいましたが、宮下先生に解説していただけて、非常にラッキーでした。

本当にありがとうございました!



タイトル [写真あり] 歯髄壊死でレントゲンに影。経過観察の可能性を示す研究記事
質問者 y.yさん
地域 非公開
年齢 47歳
性別 女性
職業 非公開
カテゴリ 根管治療の治療法
その他(写真あり)
根の病気(根尖病変・根尖病巣)
回答者




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