抜髄した歯は、やはり破折しやすいのでしょうか?

相談者: 雅史さん (46歳:男性)
投稿日時:2011-09-21 22:16:02
参考:過去のご相談
歯根が歯折したらすぐに痛くなりますか?
他多数



何回となく質問にあがっているテーマかと思いますが、歯チャン回答者陣のご見解としては、

抜髄した歯も、生活歯も、破折のしやすさは変わらない」

だったと認識しています。
(私が質問させて頂いた時も
同様の趣旨の回答を頂いたと記憶しています)


先日とある歯医者さんのHPを読んでいると、抜髄した歯は生活歯より、破折しやすいとの見解が書いてあり、ペーパのリファレンスもあったため信頼性も高いのかと思い興味深く読んでました。


量が膨大だったため抜粋して書きます。

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@Are endodontically treated teeth more brittle? J Endod. 1992 Jul;18(7):332-5.Sedgley CM, Messer HH.
によれば、生活歯と根管治療歯との間では、穴あけ剪断強さ・硬さ・破折に必要な負荷に有意差はなかった。この結果は、歯内療法が原因で歯は脆くならない事を示唆している。
つまり『歯は、神経を取ったからといって脆くはならない』


AMoisture content of vital vs endodontically treated teeth. Papa J, Cain C, Messer HH. Endod Dent Traumatol. 1994 Apr;10(2):91-3.

によれば、生活歯と神経を取った歯の含水率には有意差はないとしている。
枯れ木になりますって誰が言ったんだろう?!

⇒「抜髄した歯も、生活歯も、破折のしやすさは変わらない」のかな?

しかし


BOn cantilever loading of vital and non-vital teeth. An experimental clinical study. Randow K, Glantz PO. Acta Odontol Scand. 1986 Oct;44(5):271-7.

によれば根管治療した歯は生活歯に比べて痛みを感じる負荷のレベルは2倍以上であった。
この結果は、生活歯と神経を取った歯では歯根膜(歯にかかる圧を感じる繊維)に何らかの器質的な変化があることを示している。

つまり『神経を取った歯に関しては、咬みすぎることがあるので、負荷がかかりやすくそれが割れることにつながる可能性がある』



CResistance to fracture of restored endodontically treated teeth. M. Trope et al EDT 1985

によれば、ポスト形成をしただけで、元の歯牙よりも半分以上も破折抵抗性が落ちている。
つまり、神経を取ると歯が脆くなるといわれていたが、実はそうではなく、根管治療後にピーソーリーマーなどの回転切削器具などでポストホールを形成していたことが問題だったのである。

⇒抜髄 及び それに伴うポスト形成措置 により「抜髄した歯は生活歯より、破折しやすい」?

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先生方の、ご意見お伺いしたく。
[過去のご相談]


回答 回答1
  • 回答者
飯田歯科(堺市南区)の飯田です。
回答日時:2011-09-22 03:02:54
素人の方とは思えない研究熱心さには頭が下がります。
それぞれの文献に対しての意見は割愛させて頂きまして・・


これまでの24年の臨床経験を元にお話をさせて頂いてもよろしいでしょうか?

抜髄した歯は生活歯より、破折しやすいとの見解は・・
明らかに正しいですよ。

私の感覚では10倍以上違います。
ある程度の経験のある歯科医師ならばきっと同じ感覚だと思います。


これで、解答になりましたでしょうか?
研究熱心な方のようですので、もっとはっきりしたエビデンスが必要でしょうか?


参考にして頂けましたら幸いです。

結局は、細かいことを気にして頂くよりも定期健診をして神経を取らなければいけない状態になる前に、虫歯を治療した方が将来的に有意義な人生を送れると私は思っております。
こちらを特に参考にして頂けましたら幸いでございます。

回答 回答2
  • 回答者
回答日時:2011-09-22 03:48:18
歯質自体の強度はほとんど変わらない」

けれども、

削られて薄くなったり、中に硬いポストコアが入ったり、かみ合わせが変わったりしているので、

「折れやすくはなっている」

というのが正解ではないでしょうか?


歯質自体の強度が変わるわけではないので、「枯れ木のようになる」という表現は正確ではないと思いますが、「折れやすくなっている」というイメージを伝えるのにはわかりやすい表現なのかな?と思います。


いずれにしても、神経を取ると折れやすくなる以外に、細菌感染の問題なども出てきますので、

神経を取らざるをえない状況になる前に「一生神経を取らずに済ますためにどうすれば良いのか?」を考えるのが本当は一番大切なことなんだと思います。



でも実際は、ほとんどの方は悪くなってからしか真剣になれないという非常に大きな問題がありますし・・・

(トラブルが起きていない時には、なかなか本気になれないんですよね^^;)


雅史さんはこの問題、何か解決する方法はあると思いますか?

回答 回答3
  • 回答者
回答日時:2011-09-22 07:40:39
おはようございます。

引用文献ほぼ一緒ですね↓

参考→神経のない歯は神経のある歯よりも脆い?(4番インレー素材の悩み)

とんちみたいな話ですが・・

歯質」は文献の通り、脆くはならないです。
枯れ木の様にはなりません。


ですが「破折」は多いですよ。
割れる歯のほとんど無髄歯なのは飯田先生もおっしゃる通りですね。
田尾先生のご指摘通り、歯質自体は脆くはなくても、薄い、だとか力のかかり方に無理があるとかすると実際には割れてしまいます。

ですから割れるのは歯髄を抜いたかどうかよりも、歯質の残存量やその後の処置方法の方が影響が大きいというのが実際のところかと思います。


例えば上記リンク先で話題になった様に、同じ無髄歯でも抜髄後単独でレジンで詰めるだけの処置にしておいたとしたら、かつて歯髄のあった空洞は色付きのボンドで埋めている様なものですし、噛み合わせの面にくるレジンも歯質よりもどちらかと言うと軟らかいので、レジンがすり減ったりかけたりはするかも知れませんが歯根が割れる事はまずないと考えられます。

ですが同じ無髄歯単独処置でも、歯と接着しないメタルコア+メタルポストを歯髄腔に刺して、歯よりも硬いメタル or セラミックの冠が被されば歯根破折のリスクは高まることが想像出来ます。

(因みに天然歯質は患者さんが想像しているよりも遥かに、年々すり減っていくものですから、冠が歯質よりも硬いだけでも相当なリスクとなります)



上記の条件の違いだと実際の差はわずかだと思われますが、長期予後を見た研究では、神経のある歯を支台にしたブリッジと無髄歯を支台としたブリッジでは10%程度(うろ覚えですが・・)は差が開いていいたと思います。
もちろん有髄歯の方が良い結果です。



ということで、無髄歯は枯れ木の様にはなりませんが、結果としてよく割れているのは間違いのない事実です。

回答 回答4
  • 回答者
回答日時:2011-09-22 08:38:50
ご相談ありがとうございます。

破折で歯を失うリスクは、正確に言えば根の破折です。
歯冠が割れても補修できますが、根から割れたら保存が難しくなるからです。

今までの議論は、目で見た歯冠部と抜随後の根管内部の削り方とか、内部に入れる人工物とかについてですが、根についての議論ではありませんでした。


つまり歯は上から割れるという理論だと思います。
果たしてそうでしょうか?

割れる前にヒビが入り、それが広がるから割れるとすると、どこになぜヒビができるのかという、ヒビのの入り方を調べると事情がわかるはずです。



今までとは違う着目点として、それでは根についてはどうかといいますと、

抜随あるいは根管治療、あるいは再根管治療をした場合に、細いファイルという器具を入れますが、根尖にやっと届くかどうかという細い番号のファイルを入れただけで、根の先にはヒビが入ることがわかってきました。

従来は根充の時の圧力で根管にヒビが入ると思われていましたが、それは間違いだと最新の研究で判明しました。
ファイルを入れるからヒビが入っていたのです。


ヒビが入る場所は、根の上の部分つまり歯冠に近いところ、根尖つまり根の先、中間部つまり根の真ん中あたり、の3カ所です。
つまりどこからでも起きることがわかってきました。


結論から言えば、根管に器具を入れただけで根にはヒビが入りそれが広がれば割れてしまうということです。
つまり神経のない歯は割れやすい、という事実は裏付けられております。

神経をとらずにすむ虫歯の治療をすること、そのためには20年30年と使えて繰り返し削らない治療も目指すこと、ひいては、健康な歯に虫歯を作らないこと、これが一生歯を残すためには唯一の最善策といえます。

それは可能です。
くり返し、虫歯になるとか、痛くなるとか、治療した物がすぐとれるとか、それが普通のように思われていますが、異常なことなのです。

相談者からの返信 相談者からの返信
相談者: 雅史さん
返信日時:2011-09-22 18:52:34
飯田先生、田尾先生、渡辺先生、さがら先生

ご回答頂きありがとうございました。


【飯田先生】
>私の感覚では10倍以上違います

10倍も違うものですか。
そうですね、抜髄しないと根管治療歯根の壁を薄くしていくこともないですものね。


>定期健診をして神経を取らなければいけない状態になる前に、虫歯を治療した方が将来的に有意義な人生を送れると私は思っております。

私は今30年以上前につめた詰め物の下の2次カリエスを治療頂いています。
ここ20年、毎年会社の健康診断で見てもらっているのですが、
一度も指摘されたことがない箇所です(自分で4倍拡大ファイバースコープで歯をみて初めて、詰め物に穴があいているのを発見した次第です)

2次カリエスの場合 定期健診でも発見されにくいと思うのですが、どうしたものでしょうか? 
よかったら、ご見解お聞かせ願えれば幸いです。




【田尾先生】
>「一生神経を取らずに済ますためにどうすれば良いのか?」を考える・・・
>雅史さんはこの問題、何か解決する方法はあると思いますか?

抜髄してから、根管が化膿したり、破折したりするまで5〜10年ぐらい間空きますので抜髄の怖さが分からないですよね。
また保険診療で虫歯を治してきましたが覆髄法(水酸化カルシウムレジンコーティング)を、今の主治医の先生で初めて処置して頂きました。

・学校教育の場で、虫歯を放置していくと最後はどうなるかまでと、掛かる費用を教育する

・覆髄法がやりやすいような健康保険制度を変える(何やら現法では、覆髄法の後に抜髄すると覆髄法の点数分だけ減点されるとか)

私には上記のようなことしか思いつきませんが、ネット時代の今日
こども向け(母親向け?)歯チャンネル のようなものがあってもよいかもしれませんね。




【渡辺先生】
>参考→神経のない歯は神経のある歯よりも脆い?(4番インレー素材の悩み)

読ませて頂きました。
Bを除いて同じペーパがリファーされてますね。

私が読んだHPでも、渡辺先生の結論と同じく、歯質を多く残し、レンジコアでビルドアップするのが一番破折が少ないのか?との結論でした。

虫歯って軽く考えてしまいがちですが、予後の良い治療をしようと思えば多くの時間がかかるのもしかたがないと、今回お勉強させて頂き実感しました。




【さがら先生】
最近の研究動向をご紹介頂きありがとうございました。

>結論から言えば、根管に器具を入れただけで根にはヒビが入りそれが広がれば割れてしまうということです。
>つまり神経のない歯は割れやすい、という事実は裏付けられております。

うう〜ん こうなってくると抜髄にならない早期の内に治療するのが勝負みたいですね。 
若い方々のように無治療歯に虫歯ができる場合は、虫歯が外から見えますが、私のような年代の、外から見えない2次カリエスを早期発見しようとしたら、どうしたらいいのでしょうか?



タイトル 抜髄した歯は、やはり破折しやすいのでしょうか?
質問者 雅史さん
地域 非公開
年齢 46歳
性別 男性
職業 非公開
カテゴリ 歯根破折
回答者




  • 上記書き込みの内容は、回答当時のものです。
  • 歯科医療は日々発展しますので、回答者の考え方が変わることもあります。
  • 保険改正により、保険制度や保険点数が変わっていることもありますのでご注意ください。

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